ここ一番という場面で「集中力」を発揮する方法、「ゾーン状態」って何?【前編】
勉強でもスポーツでも、ここ一番という場面で実力を発揮するためには、「集中力」が欠かせません。しかし、集中力をコントロールするのはとても難しく、「集中しなきゃ!」と思って、すぐに集中できるものではありません。プロのアスリートなどにメンタル面の指導をするメンタルトレーナーの岡本正善さんに集中力を最大限に発揮する方法についてお聞きしました。
大切な場面で集中力を発揮するためには?
「これまでに勉強した内容が自然と頭に湧き上がって、スラスラと問題が解けた」
「まわりの選手の動きがまるでスローモーションのように見えて、すごいプレーができた」。
勉強やスポーツで、まるで自分とは思えないような力を発揮してわれながら驚いたという経験のあるかたもいるでしょう。単に「調子がよかった」と片付けていたかもしれませんが、実はそのとき、あなたは無意識のうちに集中力をフルに発揮していたのです。
私はメンタルトレーナーとして、プロのアスリートなどに集中力を発揮する方法をはじめ、メンタル面の指導をしています。集中力をコントロールする方法を身につけると、「ここ一番!」という場面で自分の力を最大限に発揮できるようになります。もちろん、その方法はスポーツだけではなく、試験やプレゼンテーションといった学習の場面でも大いに役立ちます。勉強やスポーツでは知識や技術を高めることも大切ですが、それを必要な場面で存分に発揮するために集中力をコントロールすることにもぜひ目を向けてほしいと思います。
「集中しなきゃ!」と思うほど集中できない理由
まず集中力とは何かを説明しましょう。みなさんは、「集中しなきゃ!」と思うほど、逆に集中できなくなる体験をしたことがありませんか。例えば、試験が迫って勉強する必要があるのに、隣室のテレビの音ばかり聞こえてきたり、本棚の散らかりがやけに気になって片付けたくなったり。気を取り直して再び「集中!」と思っても、やっぱり気が散って集中できない。ここで大切なことをお話しすると、人は「集中しなきゃ!」と思っても集中できないものなのです。そればかりか、ますます集中できない状態を招いてしまいます。
どうしてなのでしょうか。人の意識には、意識(顕在意識)と潜在意識があります。意識とは「集中しなきゃ!」と思っている自分です。そして意識の水面下には広大な潜在意識が広がっています。意識は小さなボート、潜在意識は大海原をイメージしてください。意識が必死に「集中!」と呼びかけても、潜在意識は簡単には動きません。そのうちに「集中できないと、明日の試験は失敗する。まずいぞ」などとマイナスのメンタルが働き出して心がかき乱され、ますます集中することが難しくなるのです。
「潜在意識」が集中力を発揮するためのカギ
もうおわかりかもしれませんが、集中力を発揮している状態とは、意識と潜在意識が同じ方向に動いていることをいいます。その状態になると実力通りの力を発揮できますが、実は集中力にはその先があります。それは意識しなくても、潜在意識が目標に向かっている状態です。言ってみれば、水面が自動的に動き、ボートを目的地へと連れて行ってくれる状態です。そうなると、逆に潜在意識が意識に働きかけ始め、「この公式を使うといい」「このコースにシュートを打つといい」といったイメージが次々に湧いてきます。それが冒頭で示したように、まるで自分とは思えないほどの力が発揮される状態です。この心理状態は、心理学的に「ゾーン」と呼ばれます。一流のアスリートはゾーン状態に入る術を身につけており、勝負どころで発揮して勝利を手中にすることができるのです。
意識的にゾーン状態に入って最高の集中力を発揮するためには、専門的なトレーニングや経験が必要になります。そこで私のようなメンタルトレーナーが存在するわけです。しかし、トレーニングの中には、みなさんが日々の生活の中に取り入れられるものもあります。勉強やスポーツの中で実践するうちに、徐々に集中力を発揮しやすくなり、毎回ではなくても、ゾーン状態に入れることが増えるでしょう。