タブレットPC、もはや「文房具」の時代に? ‐渡辺敦司‐

読者の方々は当サイトを当然、ご家庭のパソコン(PC)やスマートフォン(スマホ)など情報端末からご覧になっていることでしょう。お子さんの通う学校にもパソコン教室は必ずあるでしょうし、最近では各教室の普通の授業でも使えるよう、ノート型やタブレット型に替えているところも少なくないと思います。もはやタブレットPCは誰もが普通に持つ「文房具」になりつつあるのかもしれない……。そんな動きが最近、起こりつつあります。

佐賀県教育委員会(外部のPDFにリンク)は、今年度の県立高校の新入生から、県教委が指定する学習者用PCを購入してもらうことにしました。デジタル教材も入った指定機器は約8万4,000円しますが、県の補助により負担額は5万円となっています。全校で電子黒板と学習者用PCを連動させた授業が行われるほか、家庭学習にも活用をすすめています。
補助があるとはいえ、一律5万円というのは決して安くはない金額です。実際、導入に当たっては反対も少なくなかったようです。そのため同県教委では、貸付制度(毎月2,000円で25回払い<外部のPDFにリンク>)も用意しました。それでも生活保護世帯などにとっては負担でしょうが、厚生労働省は同県の照会に対し、生活保護費で教科書代などと同様に給付できると回答しています。
それでも同県が学習者用PCの導入に踏み切ったのは、これから教育の質を向上させ、生徒の学力を向上させるには、情報通信技術(ICT)を活用した教育の推進が不可欠だと判断したからです。もちろん学校備え付けでまかなえればよいのですが、家庭に持ち帰らせるとなると生徒全員分を購入しなければならず、相当な財政負担が必要になります。

全県となると大変ですが、自治体によっては貸与に踏み切るところもあります。既に紹介したとおり、同県武雄市は「反転授業」などを進めるため、2015(平成27)年度までに全市立小・中学生に1人1台のタブレットPCを配布することにしています。佐賀県にしても武雄市にしてもICT先進自治体として知られているがゆえの措置ということもできますが、東京都荒川区も今年度、区立小・中学校全校に1人1台のタブレットを導入します。
大学でも今や調べ学習やリポート作成などでPCはなくてはならないものになっていますが、九州大学は2013(平成25)年度の新入生から、個人用PCを必携化しました。2014(平成26)年度からは個人用PCを用いた授業も始まっています。PCに求められる仕様は学部・学科で決まっており、入学前に必要な機器を購入しておくことが求められます。ただし同大学はマイクロソフトやシマンテックなどと契約を結んでいるため、学生はOfficeやウイルス対策のソフトを無料でインストールできます。

これからは学校でも個人でICT機器を持っていくことが当たり前になる時代が来るのかもしれません。その分も織り込んだ教育費負担の軽減策を充実させることが、喫緊の課題だと言えるでしょう。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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