公立「小中高」一貫教育の意義と課題は‐渡辺敦司‐

東京都教育委員会が、2022(平成34)年度に「都立小中高一貫教育校」を設置することを発表しました。今では公立でも、中高一貫校や小中一貫校は普通の存在になっていますが、12年一貫校も、都道府県立の小学校も、初めてのことです。

もともと小中高一貫校は、猪瀬直樹・前知事が理数系人材の育成のため構想していたものでしたが、猪瀬知事の辞任により、いったんは白紙とされました。それが、国際政治学者でもある舛添要一知事の下で、グローバル人材の育成に特化することになりました。
新しい都立小中高一貫教育校は、都立立川国際中等教育学校(立川市)に付属小学校を設置することで、現在の6年一貫の前に小学校段階の6年を加え、12年一貫の教育を行うとしています。小中一貫教育と中高一貫教育の双方のよさを活用した系統的・継続的な指導と、先取り学習や、児童・生徒が興味・関心を持った学習に打ち込めるようにすることで、「公立学校の新たな教育モデル」を発信するとしています。

確かに歴史的にも、東京都教委の取り組みは、国の先導的モデルを担ってきた側面があります。当面は1校だけの計画ですが、他の道府県にも追随する動きが出てくれば、2016(平成28)年度からスタートする義務教育学校(小中一貫教育校)<外部のPDFにリンク>のように、新たな学校種として制度化される可能性も出てくるかもしれません。
ただ12年一貫の教育には、メリットが期待される一方、課題もあることは、都教委の報告書自体が認めています。主なものは「人間関係の固定化」「学力差の拡大」「中だるみ」です。とりわけ学力に関しては、現在の都立中高一貫教育校でさえ、学力差への対応に苦慮しているという声はよく聞かれます。

報告書によると、小学校入学時には、私立のような学力試験を課さず、幼稚園教育要領や保育所保育指針等に定める教育のねらいや内容を踏まえながら、年齢相応の発達状況等を確認することを選抜の目的にするとしています。抽選は行わず、「国立小学校や私立小学校で現在活用されている様々な手段を参考にして」資質や能力を多様な観点から評価するといいますが、それでも在学中に学力差の開きや興味・関心の違いが出てくることは必至です。そのため、小学校入学者が中学校段階に進学する際には選考を行い、一方で中学校段階から生徒募集を行うとしています。

公立学校で、12年という長い期間の中で、どのように早期から目的意識を持たせ、それを伸ばす教育ができるのか。進路変更への対応も含めて、どういった工夫をしていくのか。また、グローバル人材の育成という点でも、早期教育が有効なのかどうか。予想される課題の解決策も含め、今後の具体的な検討にも注目が必要でしょう。


プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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