高校1年生の学習習慣が3年間影響 進学校にも変化が……?

3学期制の学校では2学期も中盤、2学期制の学校では後期が始まったばかり。勉強にどうはずみをつけるか、工夫のしどころでしょうし、とりわけ受験を控えた中学校や高校の3年生にとっては、成績をアップさせるべく勉強時間を増やしたいところです。しかし高校では、1年生の時の学習習慣がのちのちまで大きく響いていくことが、大学入試センターの追跡調査でわかりました。そして、それが伝統的な進学校の在り方にも、大きく影響してきそうです。

この調査については、以前も紹介したことがあります。2012(平成24)年度から首都圏で、公立の進学中堅校6校と、その地域で一番手校とされる進学校4校に入学した生徒を、継続的に調べているものです。当時調査対象となった生徒は、今春高校を卒業しました。そこで、9月に東京で行われた日本教育社会学会で、大学入試センターの濱中淳子准教授らが研究成果の一端を発表しました。
進学校の生徒のほうが中堅校よりも多く勉強している、ということは想定どおりの結果だといえるでしょう。ただし生徒個人で見れば、1年生の3学期と3年生の1学期の勉強時間の変化に、中堅校・進学校別の大きな差はありません。つまり、自分で勉強する習慣がついている生徒は、どこの高校に進学しようと、1年生から3年生まで勉強時間を維持できているということです。

濱中准教授らは、高校前半までに普段から一定程度学習するような行動を、「シーズ」(種)と呼んでいます。入学時から種を育てていれば、在学中に発芽して、卒業時に花開く……といったイメージです。2年生になって受験が迫った時、追い込みをかけられるのは、1年生からシーズを育てていた生徒です。そうでない生徒は、「受験前に勉強するよ」といっても、なかなか学習に向かえないことが、調査からも裏付けられたわけです。

「進学校」と一口にいっても、違いがあります。調査対象校には、典型的な3タイプが含まれていました。

・生徒の多くが受験勉強を塾や予備校でする「外注型」
・学校側が宿題や提出物を厳しくして受験まで導く「学校管理型」
・友人同士の刺激が学習の礎になる「共同型」

学年が進むにしたがって勉強時間が増えていくのは3タイプとも変わらないのですが、共同型では2年生の1学期までほかの2タイプより学習時間が少なく、2学期になってようやく外注型の高校に追いつきます。最も学習時間が多いのは、学校管理型でした。

共同型に分類された高校は、勉強も生徒側の自主性に任せる、伝統的な進学校です。浪人も含めれば週刊誌のランキングをにぎわせるほどの進学実績を上げているものの、現役の段階では外注型や学校管理型に大きく水をあけられています。「現役進学時代」には、そんな伝統的な進学校の在り方にも変化が迫られるのでは、というのが、濱中准教授らの見立てです。

このように勉強時間に注目すると、いろいろなことが見えてきます。生徒や保護者もその重要性をよくよく認識しておかないと、進学校だろうと中堅校だろうと、大学受験の時に泣きを見ることになりかねません。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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