勉強する意味、答えられますか?保護者の回答から考える、子どもに伝えたいことと注意点

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「どうして勉強しなきゃいけないの?」とお子さまから質問されたことはありませんか? 答えに困ったり、答えてはみたものの、正しく伝えられたのか悩んだりすることもあるでしょう。

「勉強する意味」は、子どもにどう伝えればよいのでしょうか。全国の保護者のかたから寄せられた声(※1)を、解説や注意点と共にご紹介します。

この記事のポイント

「勉強する意味って何?」全国の保護者たちの回答を紹介

勉強する意味に、もちろん正解はありません。どのような意味を感じるかは、人それぞれです。
ここでは、小・中学生の保護者のかたが実際にお子さまに伝えた「勉強する意味」を、20年近くの小学校教員経験を持つベネッセ教育総合研究所・庄子寛之主任研究員と共に見ていきます。

将来の選択肢を広げるため

・自分が将来やりたいことを見つけるにあたって、選択肢を増やすため。自分が何に興味を持つかを探す手段として勉強をする。(中3生の保護者)

・いつか将来の夢ができた時、可能性を狭めてしまわないために今の勉強が大事。(小4生の保護者)

・勉強をカードゲームやRPGにたとえたりします。「いろいろな技のカードやスキルを持っていたほうが、勝てる場面が多かったり、選べるジョブが増えたりするよ」など。(小4生の保護者)

庄子

「将来の選択肢を広げる」というのは、実は私自身も、子どものころ母に言われて腑(ふ)に落ちた説明でした! 選択肢があるということは、それだけ自分の思う人生を歩んでいきやすいということ。未来の自分のためになるのです。勉強は保護者や先生のためではなく、自分のためにするものだというスタンスを明確にすることにもつながると思います。

考える力や問題解決力、学び方を身に付けるため

・勉強の内容も大事だが、考える力は一生使う。それを身に付けるための方法が勉強。(小6生の保護者)

・より深く考える力があれば、初めてのこと、困ったことに出合った時も自分の力で立ち向かえるし、どこに助けを求めればいいかもわかる。(中2生の保護者)

・人生において困難が立ちはだかった時、勉強で培った「考える力」や「問題解決能力」は必ず役に立つ。その力を磨くために、今目の前にある問題(勉強)を一つひとつ解決しながら修行している。(中1生の保護者)

庄子

勉強することは、ただ知識を得るだけではなく、考え方や学び方、困難への向き合い方といったスキルを伸ばすことにもつながります。これは、新しい課題に対応する力が育まれるということ。これからの予測不能な時代を生きていくために欠かせない力です。知識は年月と共に忘れていくものですが、学ぶ姿勢やアプローチ法といった行動は、必ず血肉になります。

考え方や学び方を身に付けることの重要性は、保護者の皆さんも実感したことがあるのではないでしょうか。その経験を踏まえて伝えてあげるのもよいかもしれません。

人生を豊かに、楽しくするため

・自分の人生をよりよいものにするため。大人になっても、勉強は続けるものなんだよ、と話しています。私が今勉強していることも、娘に伝えています。(小5生の保護者)

・勉強して何かを知ったり、考えたりすることは、身のまわりや世の中、社会のことを見たり考えたりする時の解像度や角度に幅が出て、楽しいと伝える。(小5生の保護者)

・勉強しなくても生きていくことはできる。でも知識が増えるのは楽しいし、ある日すべてのつながりが見えてくると世界も変わるし、人間関係も変わるよ、と伝えます。(中1生の保護者)

庄子

勉強は人生を豊かにする、楽しくするというとらえ方は非常に大切です。「〜ねばならない」というコミュニケーションばかりになってしまうと、どうしても息苦しくなってしまいますよね。また、勉強は人生を楽しくする手段であることをリアリティーを持って伝えるためにも、保護者自身がポジティブに勉強している姿を見せられるとよいですね!

実生活で役立つため

・勉強しておかないと、将来一人で買い物にも行けなくなるから算数とかは特に大事だし、国語は話すための勉強にもなるよ。(小4生の保護者)

・買い物する時のお金の計算や漢字を読めることで、場所やモノの使い方がわかるなど、普段の生活で使えると説明した。(小4生の保護者)

庄子

勉強と実生活が結び付く場面を教えてあげられると、今学んでいることの意味付けのためになりますね。特に、低学年では効果的でしょう。とはいえ、今学んでいることと実生活を直接的に結び付けて話すのが難しいケースが多々あるのも事実です。学齢や得意・苦手な教科などを踏まえながら、どうコミュニケーションするか考えていけるとよいですね。

できないと不利益があるため

・知らないことが多いと、損をする。(小6生の保護者)

・人にだまされないようにするため。(小6生の保護者)

・社会に出るとその都度迷ったり、もしかしたら悪い人にだまされたりと、思いがけないことに出くわすかもしれない。その時に「知っていたらよかった」って後悔しないためにも、たくさん勉強して経験することは生きる力になるよ、と言います。(中2生の保護者)

庄子

勉強が持つ「守り」の側面を伝えるメッセージで、大切な視点ですね。知識は、社会で生きていくうえで自分の身を守る、防犯的な役割も果たします。「勉強しないと、だまされるよ〜」と不安や恐怖ばかりをあおるのは考えものですが、不利益を被らないように学ぶというのも、学ぶ意味の一つといえると思います。

保護者の経験談を伝える

・私自身が勉強が好きではなかったので、進路を考える時に狭い範囲でしか選べなかったことを後悔していた。それを素直に伝えて「勉強することで選択肢が増え、可能性が広がることがあると思うよ」と普段から話している。あとは本人次第だから考えを押し付けないよう気を付けている。(小4生の保護者)

・「勉強は誰かのためにやるのではなく、自分のためにやるものだよ」と言いました。私(母)が生活で困った時に算数や国語、社会の知識があったことで仲間とコミュニケーションが取れたり困ったことが解決できたりしたので、知識は人生の武器になると説明しました。(小6生の保護者)

庄子

一般論ではなく、《私》を主語にして気持ちを伝えるメッセージは、何よりも子どもに伝わりますね! ただし、武勇伝にならないように、失敗やうまくいかなかったことも踏まえて伝えてあげられるといいですね。「失敗もあったけど、こんないいことがあった、こんな学びがあった」と前向きに語るのがポイントです。

勉強する意味を伝える時、大切にしたいこと

現在はさまざまな技術が発展したことで「この教科ができないと生きていけない」といったケースは、もしかすると少なくなっているのかもしれません。だからこそ、「選択肢が広がる」「人生が豊かになる」といった、知識そのものの役立ちだけにとどまらない意味を伝えることが大切です。

ただし、どんなにいいメッセージでも、すぐに子どもが「わかった!」と納得するわけではありません。

考えの押し付けになっては聞く耳を持たないでしょうし、保護者のかたが言っていることとやっていることにギャップがあると感じれば、反発をすることもあるでしょう。庄子研究員は、二つのスタンスが重要だと話します。

保護者も学び続けている姿を示す

どれだけ言葉を尽くして「勉強の意味」を語ったところで、十分に伝わらないこともあります。有名な「メラビアンの法則」によると、言語情報はわずか7%しか相手に影響を与えないとされています。

そこで大切になるのは、保護者のかたも学ぶ姿勢を見せられているか、ということです。「勉強は自分のためになるよ」と言いつつ、自分は時間ができればスマホばかり……では、説得力がありませんからね。もちろん無理をする必要はありませんが、保護者のかたがポジティブに学びを楽しむ姿を見せることは、実はすごく重要なポイントだと思います。

押し付けず、子どもと対話する

一方で、「必ず勉強しなくてはいけないわけではない」という姿勢を示すことも大切です。どれだけ勉強の意味を伝えても、どれだけ保護者のかたが学ぶ姿勢を見せても、どうしても勉強が苦しいなら、今はやらなくてもいいというのもアリです。そうでないと、保護者のかたの価値観の押し付けになってしまいます。

勉強の意味は伝えるけど、絶対勉強しなければいけないと考えているわけではない。そんなおおらかさも子どもの救いになるものです。「勉強はいったん置いておいて、得意なことをさらにがんばる時間にしよう」など、お子さまと対話を重ねていけるといいですね。

まとめ & 実践 TIPS

記事でご紹介した「勉強の意味」を参考にしつつ、お子さまと一度対話してみてはいかがでしょうか。また、それを伝える保護者のかたが「今日、こんなことを新しく学んだよ」と話したり、お子さまと一緒に勉強や読書をする時間をつくったりするのもよいかもしれませんね。

出典
※1
お子さまの学習に関するアンケート
実施時期:2024年12月7日〜12月10日
対象:「進研ゼミ」を受講する小学生・中学生のお子さまを持つ保護者
有効回答者数:773名

※本記事内で紹介しているご意見は、編集室にて内容の一部を抜粋・編集しております。

プロフィール


庄子寛之

元公立小学校指導教諭。大学院にて臨床心理学について学び、道徳教育や人を動かす心理を専門とする。「先生の先生」として、ベネッセの最新データを使いながら教育委員会や学校向けに研修を行ったり、保護者や一般向けに子育て講演を行ったりしている。研修・講演は500回以上。講師として直接指導した教育関係者は1万5000人に及ぶ。全国の学校が休校していた2020年のコロナ禍に、これからの教育について考えるオンラインイベントを企画し、世界中の教育関係者を2000名以上集め、話題を呼ぶ。子ども教育のプロとして、NHK「おはよう日本」や朝日新聞、毎日新聞などのメディアなどにも取り上げられ、一躍有名になる。また、ラクロスの指導者としての顔も持ち、東京学芸大学女子ラクロス部監督、U-21女子日本代表監督、U-19女子日本代表監督を歴任。「教師」×「指導者」として、一貫して「自分で行動できる子ども・選手」の育成を実践している。著書に『自分で考えて学ぶ子に育つ声かけの正解』(ダイヤモンド社)など多数。

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