【小論文書き方講座15】抽象的な文章内容が理解しやすくなるポイント
読解がニガテでも大丈夫!抽象的な文章の読解のコツ
抽象的な文章って、どんなに集中して読んでも全くアタマに入ってこない…ということが多く、読み進めるのがとても難しいですよね。もともと文章読解がニガテな人にとっては、なおさらのことだと思います。
小論文では、資料文を読んで自分の考えを述べるという形式の出題がほとんどです。つまり資料文の内容を理解することが、考えを進めるうえでのスタートとなるのです。資料文が抽象的であろうと何であろうと、とにかく資料文の筆者の主張を読みとらなければ発想も浮かびません。
「抽象的」な文章とは、「具体的」とは反対の意味で、個々のものから共通していることを抜き出して、概念が書かれている文章です。
文章が抽象的というのは、その文章全体の「テーマ」も抽象的なことが多いのです。
例えば、「人間とは何か?」「知とは何か?」「自由とは何か?」「生とは? 死とは? その境は何?」など…。決まった答えのない、このような問いに対して、著者もいろいろな角度から、いろいろな表現を使って考えを深めようとします。
今回は、そんな抽象的な文章の内容を理解するコツを紹介します。
抽象的な文章を正確に読みとるための「基本のキ」
抽象的な文章は、著者の定めた(もしくは使っている)定義や枠組みがあります。難しくて読みにくいと、つい、自分の解釈で読みとってしまいがちですが、まずは「正確に読みとること」が大前提です。
読解の基本となるのは、まず文章全体から以下を押さえること!
A「論点」…何について書いているのか?
B「意見」…筆者が一番言いたいことは何か?
C「理由(論拠)」…意見を支える理由や根拠は何か?
D「根本思想」…著者はどういう価値観に基づいてこの文章を書いたか?
まずは上記のうち、A「論点」、B「意見」について、「こんなテーマについて書かれているみたい」「どうやらこの辺が言いたいコトだな!」などとざっくり押さえながら、大まかでいいので文全体をズンズン読み進めてみてください。
そのあとに、C「理由(論拠)」に注目。つまり、筆者の意見(言いたいコト)の理由は何なのか? 初めに「意見」を押さえていれば、筆者の言いたいことがわかるので、どんな根拠で意見を述べているのか?という理由を探しながら読むことができます。
さらに、D「根本思想」ですが、これは筆者の心の底にある価値観の部分。文章によっては読みとりにくい場合もありますが、「なんでこの筆者は、こういうテーマについて、こんな意見を言っているのか?」が読みとれれば、根っこの部分から文章が伝わってきます。
ここまでの「読解の基本」が押さえられたら、文章の読解はできています(どんな資料文でもポイントは同じです)。ここからが抽象的文章を理解するうえでさらに大事なところです。
文全体がざっと読めたら、細部へ進みます。
抽象的な文章や表現に対しては、筆者が例を挙げて具体的に説明していることがよくあります。その具体例を見つけることができたら、抽象的な文章は、一気に理解に近づきます。この具体例は、「どこの部分の説明になっているのかな?」「つまり、一般的に言い直すと、どういうことかな?」と考えながら、自分の中で噛み砕いて理解していきましょう。
もし、筆者が具体例を挙げて説明していなければ、その抽象的な文章や表現に対して「それは具体的にどういうことか?」と、いったん立ち止まって考えてみましょう。
自分の身近な例、テレビ・ニュースで見聞きした例、新書や古典で読んだものの例…など、自分のアタマの中にある、知っている事例に引きつけて、「こういうことだよな」と具体的に考えるのです。自分に引きつけて、似た例を具体的に当てはめて考えることで、文章の理解度はぐっと増してきますよ!
テーマの知識を蓄えておくことが読解克服のカギ
それでも、「どうしても何が書いてあるのかわからない…」という場合は、テーマの知識や慣れが足りない場合が多いのです。
例えば英文だって、テーマ別によく出る単語などがありますよね。最初はなじみのない単語や表現でも、同じようなテーマの英文をいくつか読んでいくうちに、「また同じ言い回しだ!」「この単語、このテーマでは頻出だ!」などと感じられることがあるかと思います。
日本文でもそうです。似たテーマの文章をたくさん読むことによって、テーマを取り巻く知識が増えて、読みやすくなっていきます。
特に、志望学部系統が決まっている人は、頻出のテーマを中心に、新書や新聞記事やコラムなどに目を通し、テーマに関する見聞を広げておきましょう。例えば、人文系志望なら「人間のあり方」「文化」「言語」「知」…、社会系志望なら「法・規範」「自由」「民主主義」…、自然科学系なら「科学」「情報」「自然と人間」…、医学・医療系なら「生命倫理」「生き方」「コミュニケーション」…など。
これらの知識を蓄えておくことが、抽象的な文章を読解するうえで大きな支えとなってきます。ローマは一日にしてならず。「わからない」「苦手」をコツコツとプラスに変えていきましょう。
文/進研ゼミ高校講座 受験情報担当 伊藤
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