子どもにとっての「運動」とは「遊び」 集中力を生み出す外遊びのススメ

子どもには運動をさせたい、そう思う保護者のかたはとても多いと思います。実際、運動をさせることで子どもたちのストレスを解消したり、集中力を高めるといわれています。子どもたちの成長に効果的な運動とは? 大阪青山大学健康科学部子ども教育学科准教授の村田トオル先生にうかがいました。


大人の運動と子どもの運動は違う

 運動がいいとは経験的に知られていても、運動のどこがよくて、子どもの成長にどんな恩恵をもたらせてくれるのでしょうか。さらに、その恩恵が学習面にも反映されるとしたら、保護者としては言うことありませんね。

 

これまでは子どもを対象とした運動・スポーツ活動の効果としては、体力づくりや肥満予防、トップアスリートを目指すためのスポーツスキルの獲得であるといわれてきました。大人の世界では、運動不足など生活習慣の乱れに起因するメタボリックシンドローム(メタボ)対策のために、ウォーキングやジョギング、ひとつ前の駅で降りて歩く、エスカレーター、エレベーターは使わず階段利用するなど、生活の中で取り入れやすい運動が推奨されています。

 

大人向けに推奨されている運動を子どもたちに「体にいいからやりなさい」と言って 「うんわかった。体にいいならやるよ」とすすんで行うでしょうか。いくら手軽でも、大人にとっても、かなりの固い意志を必要とする運動不足解消のための運動を子どもが実践するのは、ほぼ無理難題と言っても過言ではありません。

 

 

子どもにとっては遊びが運動

 では、子どもにとっての運動とはなんでしょうか? 答えは「遊び」です。遊びを言い換えると、「自己決定にもとづく活動」。内発的動機で、子どもが自ら「これしたい!」という意欲あふれる活動なのです。

 

数ある遊びの中でも「体を思い切り使う外遊び」が推奨されています。 外遊びに代表される、自由な運動遊びは、社会性の強化、メンタルヘルスの改善、ストレスからの回復力の増強、創造性・集中力の強化など、子どもに様々な効果をもたらします。

 

自由な運動遊びは、大人からの関与が少なく、内容が創造的な活動。スポーツや体育で行う活動と比べると、内容やルールが曖昧で自然発生的な活動も含まれています。そのため子どもは、運動遊びの中で友人との軋轢(あつれき)を経験することがたびたびあります。大人の関与なしに、それらを回避する術を学ぶ機会にもなっているのです。

 

 

集中力を生み出すためにも有効な運動遊び

 運動遊びは、ストレスへの対処方法や回復力を高めることが知られています。たとえば、悪天候のため休み時間に外遊びができない状態では、学級内で子どもの落ち着きや集中力が低下していたり、子ども間で争いごとが頻発することもあります。
まさにたとえ短い休み時間に行う外遊びでも、ストレス発散の役割を果たしている例といえるでしょう。

 

子どもには食欲や睡眠欲と同じように「本能的活動欲求」があります。じっとせず、理由もなくチョロチョロ動き回っていることもありますが、それこそ、まさに遊んでいる瞬間です。

 

食欲や睡眠は大人から保障されていますが、同じ欲求でも活動に関しては、「じっとしなさい」と止められることが多い傾向にあります。欲求が満たされると、情緒が安定することがわかっています。集中するには、まず心が落ち着くことが前提。その集中力を生み出すために、文部科学省「幼児期運動指針」、公益財団法人日本体育協会「子どもの身体活動ガイドライン(アクティブチャイルド)」では、一日60分程度の運動遊びが推奨されています。

 

 

子どもたちの心身の発達にも有効な運動遊び。思いっきり子どもたちを遊ばせてあげることが、集中力を生み出すことにもつながります。よく遊ぶ子は賢くなるといわれますが、よく遊ぶことが学習にも生かされるのは間違いないといえるのではないでしょうか。

 

 

プロフィール



大阪青山大学子ども教育学部子ども教育学科 教授。健康運動指導士。
幼年期における運動遊びが社会的心理におよぼす効果や親子体操が養育態度に与える効果を研究。子どもの運動指導に関する著書多数。
永年にわたる国民への健康づくりに貢献したとして,2018年厚生労働大臣感謝状を授与される。

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