私大の初年度納付金は平均131万円に
文部科学省の調査によると、2014(平成26)年度の私立大学入学者の初年度納付金は平均131万1,644円となり、前年度より0.1%減少したことがわかりました。ほぼ前年度並みといえますが、授業料だけを見ると3年連続の増加となっています。このため4年間のトータルで見た場合、学生の負担は逆に増加していることになります。
- ※文部科学省 「私立大学等の平成26年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」
- http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/1365662.htm
私立大学に入学した学生が支払った初年度納付金の内訳は、全体平均で授業料が86万4,384円(前年度比0.5%増)、入学金が26万1,089円(同1.3%減)、施設設備費が18万6,171円(同0.9%減)となり、合計で131万1,644円(同0.1%減)となっています。初年度納付金の平均額は前年度131万2,590円で前年比0.3%減でしたから、2014(平成26)年度は2年連続の減少となります。
ただし内容をよく見ると、前年度よりも減少しているのは入学金と施設設備費です。入学金は3年連続の減少、施設設備費も2年連続の減少となっており、これが初年度納付金の全体額を引き下げている原因です。
一方、授業料を見ると、2012(平成24)年度が85万9,367円、13(同25)年度が86万266円、14(同26)年度が86万4,384円と3年連続でアップしています。これは少子化による18歳人口減少のなかで学生を確保するため、初年度納付金を低く抑える代わりに、2年次以降も支払う授業料を値上げした私立大学が多いためと見られます。つまり私立大学の教育費負担は、入学時の初年度はやや軽くなっているものの、4年間全体で考えた場合、逆に重くなっているといえそうです。
初年度納付金を学部の系統別に見ると、法学部や文学部など「文科系学部」は平均114万6,819円(授業料74万6,123円、入学金24万2,579円、施設設備費15万8,118円)で前年度より0.2%減、工学部など「理科系学部」は平均150万1233円(授業料104万8,763円、入学金26万2,436円、施設設備費19万34円)で前年度比0.4%増、医学部など「医歯系学部」は460万6,887円(授業料273万7,037円、入学金103万8,128円、施設設備費83万1,722円)で前年度より1.2%減、体育・芸術や看護など「その他学部」は平均145万8,548円(授業料95万1,119円、入学金27万233円、施設設備費23万7,196円)で前年度より0.2%減となっています。「文科系学部」や「医歯系学部」「その他学部」が前年度よりも減少しているなかで、「理科系学部」のみが前年度よりもアップしています。このままでは教育費負担における文系・理系の格差がさらに拡大することも予想されそうです。
この他、経済協力開発機構(OECD)の調査によると、日本は学校教育に対する公財政支出の割合が比較可能な加盟国などの中で最下位のグループであり、特に高等教育に対する割合が低いことが大きな問題となっています。これは日本の大学教育などが家庭などの私費負担で支えられていることを意味しています。また私立大学は大学生全体の約7割を抱えており、私立大学の授業料アップは家庭の教育費負担をさらに押し上げることにつながります。
家庭の教育費負担をこれ以上増やさないようにするためにも、返還の必要のない給付型奨学金の創設、私立大学への補助金の増額などの施策が早急に望まれるところです。