子どもにもできる国際ボランティア~フェアトレード入門~【前編】

国際協力のひとつとして、寄付やチャリティーではなく、お買い物を通じて貧困層の経済的な自立を支援するフェアトレードが注目されています。
フェアトレードとは、発展途上国で作られた原料や製品を適正な価格で取引することで、生産者の生活の向上や貧困からの脱却を手助けする貿易のしくみのこと。
ご家庭で手軽に始められるフェアトレードについて、東京経済大学の渡辺龍也先生に教えてもらいました。



モノやお金の寄付から、貿易での取引で生産者の自立を後押しする

フェアトレードは、国際協力のひとつの方法として始まりました。
かつては国際協力というと、貧困地域で教育の受けられない子どものために学校を建てたり、その里親になったり、医療施設のない地域に病院を作ったり、木を植えたり、そのために必要なモノやお金を寄付することが中心でした。

ただ、こういった寄付やチャリティーは、どうしても「依存」を生んでしまうもの。「かわいそうだから」という気持ちだけでは、途上国の人々が善意に甘えてしまい、経済的にも社会的にも自立できなくなってしまうのです。
そこで注目を集めるようになったのが、依存を生む援助ではなく、人間らしい生活が送れるよう適正な価格で長期的に取引を行うフェアトレードです。日本でフェアトレードに特化した団体が生まれたのは、1986(昭和61)年のこと。その後、大小さまざまな団体がフェアトレードに関わってきましたが、市民団体にできることには限界がありました。

90年代に入ると、企業が利益の追求だけではなく、社会的に貢献しようとする活動の一環として、フェアトレード製品の取り扱いを始めるようになりました。こうして、日本全国に展開するスーパーやコンビニにもフェアトレード製品が並ぶようになり、市場も大きく拡大しました。



実は興味津々!? フェアトレードへの関心が高い子どもたち


渡辺先生のゼミが大学近くのカフェで販売してもらっているフェアトレードのチョコレート

日本でのフェアトレードの課題は、欧米に比べてまだ知名度や関心が低いことです。
ただ、それも変わりつつあります。私自身も、ゼミの学生と一緒に小学校などへフェアトレードの出張授業に行くことがあって、初めは「興味を持ってくれるだろうか、わかってくれるだろうか」と不安な気持ちがありました。ところが、いざ授業を始めると、子どもたちは熱心に授業に耳を傾けてくれます。核心をついた質問が出てきて、こちらが驚かされることも少なくありません。
また、中学生になると、レポートの課題でフェアトレードを取り上げる生徒もいます。ある中学校の1年生から、話を聞かせてほしいという電話があった時は本当に驚きました。書き上げたレポートも立派なものでした。高校での学習や取り組みは日本各地に広がっています。
こうした経験からわかったのは、子どもたちの柔軟な感性と意識の高さです。私たち親の世代は、自分なりの価値観や世界観ができあがっているので、新しいことには疑いの目を向けがちです。ところが、子どもは、途上国で同じくらいの年の子どもが学校に行けずに働かされていたり、働く人や環境が金もうけのために犠牲になっていたりすることを知ると、素直に「おかしい」と感じ、何とかできないのという気持ちを抱くようです。そうした素直な気持ちが、子どもから親の世代に、そして社会全体に伝わっていってくれればと思っています。


プロフィール


渡辺龍也

東京経済大学教授。NHK記者、在マレーシア国際機関職員、国際協力NGOセンター調査研究主幹、日本国際ボランティアセンター・ラオス事務所長を経て2000(平成12)年より現職。著書に『「南」からの国際協力』(岩波書店)、『フェアトレード学』(新評論)などがある。

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