延べ51校の新設大学などに定員割れや教員不足 文科省が改善要請-斎藤剛史-
日本には2013(平成25)年5月現在で、782校の大学(大学院大学を含む)、359校の短大があります。そのうち評価が特に定まっていない新設大学などについては、どう学校を判断するのか迷うことも少なくないでしょう。文部科学省の新設大学・学部などを対象にした調査によると、延べ51校の大学・短大で大幅な定員割れや、教育課程と教員配置などに大きな問題があることがわかりました。
文科省は、規制緩和の一環として大学や学部などの新設認可などを弾力化した代わりに、設置計画が卒業生の出る完成年度まできちんと実行されているかどうかを調べる「設置計画履行状況等調査」(アフターケア)を毎年実施しています。2013(平成25)年度のアフターケアの結果によると、完成年度以降もアフターケアの調査対象となった大学も含めて77大学の新設学部・学科(95件)に、充足率が7割未満の定員割れ、あるいは教育環境に問題が出るほどの定員超過があると指摘されました。定員割れを指摘された学部・学科は人文・社会系が多い一方、定員超過は医療・看護系が多いようです。さらに118校の大学・短大の学部・学科(155件)で、学校が定めた定年年齢を過ぎた教員が多数いるなど教員年齢構成に問題があることなども指摘されました。
定員割れなどは、設置計画段階での学生募集計画の見通しの甘さが大きな原因だと思われます。また教員年齢構成の問題は、設置計画の段階で集めた教員に年齢の高い教員が多かったことによるもので、文科省による審査などの際に大学設置基準で定められた教員定数を満たすため、一時しのぎ的に教員を集めたことが原因のようです。文科省は、新設学部・学科などに対して「全体としては、科目開設や教員配置など設置計画が着実に履行(されている)」と評価していますが、大学新設や学部・学科の新設の際の計画が不十分だった大学が一部にあることは間違いないでしょう。
これらのうち、教員不足で教育課程が計画どおり実施されていない、図書館など施設・設備の整備が計画どおり進んでいない、定員割れが長期化しているなど、特に大きな問題があると思われる36大学・短大、15大学院の延べ51校の学部・学科(56件)に対して、改善計画の提出を求めました。指摘された事項を見ると、「当初の理念や計画を実現できる体制や教育研究の継続性に疑義がある」「推薦入試について、入学者が募集人員を大幅に上回っている」「入学者選抜機能が働いているとは考えられないため、アドミッションポリシーに沿って適切な入試を行うこと」など厳しい意見がつけられています。
もちろん、新設大学、新設学部・学科の多くは問題なく運営されています。しかし、少子化の進行により大学経営がますます厳しくなる中で、大学や学部・学科を見る目が子どもや保護者にこれまで以上に求められてくるでしょう。