課題ある新設大学・学部 文科省が改善要求

グローバル化や情報化などにより急激に社会が変化するなかで、大学も時代の要請に対応するため、さまざまな学部を新設しています。大学志望者やその保護者にとっても、非常に関心があるところでしょう。しかし、一部には課題があるところもあるようです。

文部科学省は、新設から最初の卒業生が出るまでの期間について、大学・学部などでの教育が当初の計画どおりに行われているかどうかを毎年チェックする「設置計画履行状況等調査」(アフターケア)を実施しています。これまでは改善を要する場合は「留意事項」として示されていましたが、2014(平成26)年度調査からは「改善意見」として注文がつけられるようになったほか、重大な問題があったケースには早急に対応を求める意味で「是正意見」がつけられるようになりました。文科省が発表したアフターケアの結果によると、調査対象となった502校のうち、253校に「改善意見」、31校に「是正意見」がつけられています。

「是正意見」を見ると、看護学部や大学院などで定員超過が常態化していることが問題とされたところがあるほか、教員の退職や離職により教員数が必要数を満たしていなかったり、十分な研究業績や実務経験がない教員がいることなどが指摘されています。さらに、「英語I」「基礎数学」など「大学教育水準とは見受けられない授業科目がある」と是正を求められた例もありました。「是正意見」をつけられた中には、これまでも留意事項として再三改善を求められていた大学・学部もあるため、文科省は「一向に対応が見られない、あるいは、対応しようという意識すら感じられない大学もあった」と強く批判し、改善が図られない場合、今後の学部新設などを認めないなどの対応を取る方針です。

一方、「改善意見」では、定員充足率の低さ、いわゆる「定員割れ」が続いている大学・学部などが多いようです。文科省は「ニーズ調査や競合分析を行わず、入学定員を根拠なく設定した」と指摘し、定員の確保に向けた具体的取り組みを求めています。
看護学科をはじめとする医療系学科で「改善意見」がつけられた例も目立ちます。専任教員が計画どおり確保されていない、実習施設との連携に不備があるなど実習体制が当初計画どおりに整備されていないなどが指摘されています。医療系学科は、資格の高さと就職の強さで学生の人気が高く、新設ラッシュが続いています。このため、必要な教員数や実習施設の手配が間に合わないところもあるようです。

ただ、改善意見などがついたから悪い大学・学部ということではありません。あくまで大学をよくしていくというのがアフターケア本来の意味だからです。
新設大学・学部は情報が少ないため、大学志望者も迷うことでしょう。偏差値などの受験情報だけでなく、より多様な大学情報を得るという意味で、アフターケアなどの大学評価に関する資料も大学選びの参考にしてはいかがでしょうか。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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