2016年度には「新テスト」の作問イメージ 文科省が実行プラン‐渡辺敦司‐

高校教育・大学教育・大学入学者選抜の一体的改革(高大接続改革)をめぐる中央教育審議会の答申(外部のPDFにリンク)を受けて、文部科学省が「高大接続改革実行プラン」(外部のPDFにリンク)を策定しました。策定自体は答申で提言されていたものであり、大まかなスケジュールも答申に添付されていたものと大きく変わりませんが、いよいよ同プランの工程表に基づいて、改革が本格的に動き出すことになります。

高校版・全国学力テストとも言うべき「高等学校基礎学力テスト」(仮称)が2019(平成31)年度から、大学入試センター試験に代わる「大学入学希望者学力評価テスト」(同)が20(同32)年度からと、いずれも現在の小学6年生からが対象になるよう導入を目指していることは、答申でも示されていました。これについて実行プランでは、2015(平成27)年度中にも専門家会議の検討結果を取りまとめ、17(同29)年度初頭に「新テストの実施方針」を策定し、同年度中に「基礎学力テスト」の、翌18(同30)年度に「学力評価テスト」のプレテスト(模擬試験)を実施したうえで、本テストの「実施大綱」をそれぞれ18(同30)年度初頭、19(同31)年度初頭に策定します。とりわけ答申は「学力評価テスト」で教科の枠組みに捉われない「合教科・科目型」「総合型」の問題も出題するとしていましたが、実行プランではプレテスト前の2016(平成28)年度中にも「教科型」を含めた作問イメージ(モデル問題)を公表するとしています。これにより、どんな力を問おうとしているのか、その育成のためにどんな授業を行えばよいのかのイメージも浮かんでくることでしょう。

こうした新テストの創設を待たずに、各大学が行う個別選抜の改善を図るべく2015(平成27)年度中に「大学入学者選抜実施要項」(文科省通知、国公私立に共通)を改正する方針であることは、昨年の記事でも紹介しました。これに関連して実行プランでは、同年度中に法令改正を行い、各大学にアドミッション・ポリシー(入学者受け入れ方針)、ディプロマ・ポリシー(学位授与の方針)、カリキュラム・ポリシー(教育課程の編成・実施の方針)の一体的な策定を義務付けるとともに、大学が7年に1度受ける認証評価の評価項目にも「入学者選抜」を明記するとしています。つまり各大学は、社会に送り出す卒業生像や、そのために大学で行う教育の姿も具体的に想定しながら、入学者選抜の方法を工夫しなければいけなくなるわけです。また、多様な選抜を行うには大学側の体制整備も必要ですが、そのための「個別選抜の改革の推進のための財政措置」を2015(平成27)年度中に検討するとしています。裏を返せば何もしない大学は財政措置が受けられないわけですから、各大学も入学者選抜の改革に積極的に取り組まざるを得ないことになります。

高大接続改革は、受験生や高校生だけの問題ではありません。実行プランでは、義務教育(小・中学校)段階の成果を発展させ、知識・技能のみならず思考力・判断力・表現力、主体性・多様性・協働性という「真の学力の育成・評価」に取り組むとしています。これからの大学で必要とされる能力の育成は、小学校段階から既に始まるのです。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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