小中一貫校は新「学校」と「一貫型」の2本立てで-渡辺敦司-

各地の自治体が独自に取り組んでいる「小中一貫教育」について、中央教育審議会が昨年末、答申(外部のPDFにリンク)をまとめました。これを受けて文部科学省は必要な法律改正などを行い、2016(平成28)年度から制度化したい考えです。これまでにも紹介したように、「中等教育学校」(1999<平成11>年度から)に続く新しい学校の種類ができることになります。どのような学校になるのか、答申をまとめてみましょう。

小中一貫教育の制度化に当たっては、2種類の形態を用意することにしました。完全9年一貫で教育に当たる新しい学校種である「小中一貫教育学校」(仮称)と、従来の小学校・中学校という独立した枠組みを維持したまま新設の小中一貫教育学校に準じた形で教育を行う「小中一貫型小学校・中学校」(同)です。中高一貫教育制度に中等教育学校・併設型・連携型の3種類(後者2種類は従来の中学校・高校の枠組みを維持)があるのと同様の考え方です。
小中一貫教育学校は、教育委員会など学校の設置者が地域の実情を踏まえて有効だと判断した場合に設けることができます。公立の場合、これまでどおり住んでいる学区によって入学する学校が決まる「就学指定」の対象になりますし、もちろん入試は行いません。市町村内の全部を小中一貫教育学校にするか、一部にとどめて小学校や中学校と併存させるかは、教委が適切に判断すべきだとしています。
中高一貫教育校との違いは、その主目的が子どもや保護者の「選択」にないということです。中高一貫教育制度は、中学校から入試を経て高校に進学するという従来の制度に加え、6年一貫で学べる機会をつくり、教育を多様化することで、生徒や保護者が選択できるようにすることを目指しました。これに対して、小中一貫教育制度はむしろ小・中学校を一体で運営するメリットに着目し、できる自治体がやりやすいようにすることを目指しました。

とはいえ小中一貫教育の制度化には、本格的な学制改革の端緒としたい政府の意向を受けた教育再生実行会議の提言(外部のPDFにリンク)が強く反映されています。答申で「学校制度が、生徒や学生のニーズや社会の変化に柔軟に対応し得るものとなっているかについては継続的に点検していくことが重要」と指摘しているのも、そうした方針を意識したものです。
ただ、今回の小中一貫教育制度に関しては、小中一貫教育学校からほかの学校への転校を円滑に行えるようにしたり、以前も紹介した教育課程の特例を実施する場合には児童・生徒の過重負担にならないようにしたりするなどの配慮を求めています。学制改革(外部のPDFにリンク)といっても、義務教育、とりわけ小学校段階(初等教育)を複線化している主要国はあまりないように、一定の限界があったようです。

小中一貫教育制度の導入が進むかどうかは、各自治体などの判断が重要になります。地域の実態に合わせて、子どもたちにとってよい制度を採用してほしいものです。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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