小中一貫校は「中期」がカギに 教育活動の工夫必要‐渡辺敦司‐

教育再生実行会議の第5次提言(外部のPDFにリンク)と下村文部科学相の諮問を受けて、各地の自治体が独自に行っている「小中一貫教育」を正式な制度とするための検討が、中央教育審議会の部会で始まっています。実施自治体や学校がヒアリングで行った報告によると、4・3・2制が多い小中一貫教育のカギを握っているのは3年間の「中期」だといいます。

広島県呉市教育委員会は2000(平成12)年度から小中一貫教育の研究を始め、07(同19)年度からは全小中学校区で4(前期)・3(中期)・2(後期)制を実施しています。小・中学校が離れたままの「分離型」と、隣接校舎を渡り橋でつなぐ形態も含めた「一体型」があります。一貫教育を検討した動機も、中期に当たる小学5~中学1年生で自尊感情が急速に低下したり、問題行動が多発したりするなどの課題に対応するためでした。
中期では、小学校と中学校の相互乗り入れ授業や、一部教科担任制を実施して、小学校から中学校へのスムーズな移行を図っているといいます。そうした取り組みを経て、暴力行為やいじめ、不登校といった問題行動が2007(平成19)年度以降みるみる減少したことはもとより、国や県の学力テストでは全問題で平均を上回るなど学力向上にも成果を上げています。
もちろん、ただ4・3・2制を導入しただけで成果が出るものではありません。区切りを生かすため、各学校でさまざまな指導の改善を行う必要があります。2011(平成23)年度から校舎自体を前期・中期・後期の3棟に分けた一体型小中一貫教育を実施している呉中央学園では、中期で一部教科担任制を取り入れているだけでなく、5年生から期末試験を課したり、6年生から宿題時間を意識的に増やしたりするなどして、小学校と中学校の段差を低くしようとしています。中期に上がる際には「2分の1成人式」、後期に上がる際には「立志式」(本来は数えで15歳の元服を祝う行事)を行う一方で、小学校の卒業式や中学校の入学式もしっかり行い、9年間で成長の「段差」を意識させる機会を意図的に設けています。

埼玉県教委が2012(平成24)年度から小中一貫教育の推進に取り組んでいることを受けて2014(平成26)年4月から全中学校区で小中一貫教育をスタートさせた入間市教委でも、基礎・基本の定着期である5~7年(中学1年)生に重点を置いているといいます。また、発達障害のある児童生徒に9年間をとおした連続性のある支援を行うとともに、障害のない子にも幼稚園・保育所や高校とも「なめらかな接続」を図るなどの工夫もしています。
7月の別の部会のヒアリングに招かれた東京都品川区立小中一貫校品川学園では、7年生から児童・生徒会長を選出するなどして中期生に校内でのリーダーシップを発揮させる一方、8~9年生(中学2~3年生)には地域の自治体活動に参加させるといった工夫を行っていると発表していました。

制度化に当たっても、こうした学校独自の工夫を後押しするために先生の数を増やしたりするなどの配慮が、国としても求められるでしょう。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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