「アクティブ・ラーニング」とは何か 次の学習指導要領で注目-渡辺敦司-

中央教育審議会が検討する学習指導要領の全面改訂で、目玉の一つが「アクティブ・ラーニング」と呼ばれる学習・指導方法の導入であることは、先の記事でも紹介しました。これについて、もう少し詳しく説明しましょう。

アクティブ・ラーニング(外部のPDFにリンク)は、もともと大学の授業で使われている用語であることも先に紹介しました。2012(平成24)年8月の中教審答申(いわゆる大学教育の「質的転換」答申)では「学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る」学修(能動的学修)のことだとしています。具体的には、発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワークなどを挙げています。ちなみに「学習」ではなく「学修」という用語を使っているのは、大学の場合、1時間の授業に対して倍以上の時間の予習・復習を自分ですることが単位取得の原則になっているからです。しかし実際には授業を漫然と受けるだけの場合も少なくないため、学生が自主的に勉強する時間の増加を促す「単位制度の実質化」が大学の大きな課題となっています。アクティブ・ラーニングを導入すれば、討論などをするには予備知識が不可欠ですし、調査等にも文献を読んだり校外でフィールドワークをしたりすることが必要になるため、必然的に自分で勉強しなければならなくなるというわけです。

一方、今回の中教審に対する諮問では、小・中・高校のアクティブ・ラーニングを「課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習」としたうえで、「何を教えるか」という知識の質や量の改善はもちろん「どのように学ぶか」という学びの質や深まりを重視し、知識・技能を定着させるうえでも、学習意欲を高めるうえでも効果的だと意義付けています。
これが小・中・高校では「総合的な学習の時間」(「総合」)に近いことは、先の記事でも指摘しました。「総合」についは現行の指導要領で、それまでの週3時間から週2時間に減らされましたが、これは各教科などの授業に導入した「言語活動」で、それまで「総合」で行っていた教科別の知識・技能を活用する学習活動が行えるため、「総合」では教科などを横断した課題解決的な学習や探究的な活動に絞ろうという考えからでした。一般に誤解されているように「総合」は軽視されたのではなく、逆に重視されているのです。

「総合」については2014(平成26)年11月に開催された国立教育政策研究所の国際シンポジウムで、尾崎春樹前所長が「PISA(経済協力開発機構<OECD>の『生徒の学習到達度調査』)の2012(平成24)年調査で日本の結果が盛り返したのは『脱ゆとり』の成果と言われるが、『総合』はいわゆる『ゆとり教育』の柱だった」と説明。「総合」が、OECDの求める21世紀に必要な学力の育成に合致していることを強調していました。アクティブ・ラーニングの導入は、こうした路線をますます強化するものなのです。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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