次の指導要領、「何を教えるか」から「何ができるようになるか」へ-渡辺敦司-

下村博文文部科学相が11月20日、中央教育審議会に学習指導要領の改訂を諮問しました。2016年度中に答申をまとめ、新しい教科書を発行したうえで、小学校は2020(平成32)年度から、中学校は21(同33)年度から、高校は22(同34)年度の入学生から順次、全面的な実施に入る見通しです。英語教育や高校の新科目など多くの課題がありますが、最大の眼目は、教科の枠を越えて学校教育の重点を「何を教えるか」から「何ができるようになるか」に大きく転換すること、そして、そのために「総合的な学習の時間」のような学習方法を全面的に展開することだと言っても過言ではないでしょう。

諮問理由の中に、「育成すべき資質・能力を子供たちに確実に育む観点から、そのために必要な学習・指導方法や…(中略)…学習評価を充実させていく観点が必要」だという一文があります。これは前に紹介した有識者検討会の「論点整理」を受けたものです。これからの時代に必要な資質・能力を「~ができる」という形で明確にしたうえで、そうした資質・能力を各教科などの学習で育み、学校の教育活動全体をとおして、新しい時代の実社会や実生活の中で役立つ力にまで高めようという考え方です。
そのために「アクティブ・ラーニング」(能動的学習)と呼ばれる学習方法も検討するとしています。もともとは大学の授業で使われている用語ですが、課題の発見・解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習のことで、併せて知識・技能の定着や学習意欲の向上も図ろうというものです。

ただし、こうした考え方は必ずしも小・中・高校では目新しいことではありません。「総合的な学習の時間」、あるいは各教科の授業で行っている「言語活動」の学習形態を更に発展させるものだということもできます。
基礎・基本となる知識を軽視しているわけではありません。しかし、すべてを教え込むだけでは、社会で生きて働く力にはならないという考え方も込められています。アクティブ・ラーニングで学習課題に取り組んでいくうちに、逆にしっかりと知識が定着し、活用も自在に行えるようになるということです。テスト直前になって必死に覚えるといった勉強の仕方は、大学入試改革と相まって、大きな転換を迫られ、「我が国の教育全体の大改革につながる」(下村文科相の諮問理由を代読した丹羽秀樹副大臣)ことでしょう。
では、これからの時代に必要な資質・能力とは何でしょうか。諮問理由では経済協力開発機構(OECD)の「キー・コンピテンシー」(主要能力)や国際バカロレアのカリキュラム、ESD(持続可能な開発のための教育)、復興教育などを例に挙げていますが、これについても、前に紹介した国立教育政策研究所の「21世紀型能力」をベースに、中教審で検討を深めるものと見られます。

今回の改訂はまったく新しいことを始めようというわけではなく、「生きる力」の育成を目指した今の指導要領の趣旨を更に徹底しようという側面もあります。そうなると、改訂を待たずに今の授業にも影響を与える可能性も、大いにあります。5年以上も先の話だといって悠長に構えていられないかもしれません。


プロフィール

渡辺敦司

渡辺敦司

1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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