算数のプロに伺った「かけ算九九で大切なこと」

「自らきまりを見つけ、そのきまりを活用して新しいことを考えていく」、暗記の先にあるこの力が大切なのです。

算数のプロに伺った「かけ算九九で大切なこと」


わたしの子どもについて、ちょっと恥ずかしい昔話です。長男が小学3年生のころ、クイズを出すような気持ちで「20÷5、45÷5、50÷5の答えは?」と尋ねたとろ、「20÷5」と「45÷5」は「4」「9」とすぐに答えが返ってきたのですが、「50÷5」については「……」。沈黙が続いたあと返ってきた答えが「0」。
「だって、かけ算九九に50はないよ。ないから0だよ」と。九九で求められるものはすぐに答えが出せたけれど、九九の範囲外のものは答えられなかったんですね。

そこで「20÷5=4はどうやって考えたの?」と尋ねたところ、「5×4=20だから」と言ったので、一円玉を用意して、息子に「この一円玉で5×4=20の場面をつくってみて」と言ったところ、場面を作ることができませんでした。

ああ、この子はかけ算の意味がわかっていないのだなと思い、「5×4は5個のまとまりが4つあるってことだよ」って言いながら、5個のまとまりを4つつくり、ここにある一円玉全部の数が20個になることを説明しました。すると「そうか、じゃあ、50÷5は10になるんだね」って答えが返ってきました。さらに「23÷5は?」とまだ習っていないわり算を出題したところ「4あまり3」と正しく答えられたのです。

かけ算学習をとおして、意味やきまりを活用する力が育つのです。

かけ算は、単なる暗記学習ではありません。かけ算九九を単に唱えて覚えるだけでは、かけ算は使えないのです。「5個の4つ分を5×4=20と表す」「5の段の九九は5ずつ増える」など、かけ算の意味やきまりを理解することで、学習は定着します。

数学的、算数的な考え方である「きまりを見つけ、そのきまりを活用して新しいことを考えていく」、つまり、きまりを使って新しいかけ算九九を作っていくということ。自分で工夫してきまりを使うことで自分の力を確認できたり、すばらしさを味わえたりすることにつながっていきます。

本年度から本格実施された新学習指導要領では(2けた)×(1けた)の計算が入っていますが、これは筆算でするものではなく、「12×3=36」のような今まで習った、きまりを使って答えを求められる範囲のものです。「12×3=3×12だから、3×9から3ずつ増やしていく」などときまりを使って考えることができれば、きまりを見つけるよさがわかるのです。このような経験をさせることが、上の学年につながる生きた考えになるのです。

考えるときには、具体的操作がとても大切。おうちのかたには、子どもと一緒に楽しみながら取り組んでほしいです。

子どもはすぐに忘れてしまいがち。だから子どもの様子を知って声かけをしたり、くり返し学習したりしてください。くれぐれもにこやかに(笑)。



プロフィール



東京学芸大学名誉教授。元早稲田大学教授。数学教育学を専門とし、日本数学教育学会名誉会長、新算数教育研究会名誉会長も務める。また、文部科学省教育課程改訂協力者としても活躍。『豊かな算数教育をもとめて』(東洋館出版社)など著書多数。

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