子どもが話したいと思う存在とは?[やる気を引き出すコーチング]
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「石川さんの本を読んで、『やっぱり、子どもの話を聴くって大事だな』と思うのですが、うちの子は家ではぜんぜん話そうとしないんですよ。呼んでも返事すらしない時があって。……まず、そこからですよね」。そんな話をされるのは、だいたい中学生・高校生のお子さんを持つ保護者の方々です。年齢が上がるにつれて、大人になってきたという証拠なのかもしれませんが、やっぱり寂しいですよね。
今日、ご紹介するTさんの事例は、たった2つのことを変えただけで、中学生のお子さんが話してくれるようになったというお話です。
朗らかな表情でいる
コーチング講座に半年間通われたTさん。最終回で、こんな話を皆さんの前でしてくださいました。
「コーチングは、子どもを自分の思いどおりに動かすための魔法のテクニックか何かだと最初は思っていて、なんとか子どもを変えたいという気持ちで、ここに参加しました。でも、今は、変える必要があったのは、『子ども』ではなくて、『自分』だったんだなと思います。講座中、いろんなかたと話すなかで、『Tさんってこうして話してみると、とても面白い人ですね。最初ちょっと話しかけにくいなって思っていました』って言われたんです。軽くショックでしたね。それで、『どうしてそう思ったんですか?』って聴いてみたんです。そうしたら、『ああ、なんか悩んでるのかな、顔が怖いなって』。今では笑える話ですけれど、その日、家に帰って鏡を見たら、たしかに怖かった。コミュニケーションって言葉だけじゃなくて、言葉以外の表情や声のトーンがとても大事って話、ありましたよね。余裕がなくて、いつも『キィー!!』ってなっていたんだと思います。『そこかも!』って思って、とりあえず、にこにこするようにしてみました。そうすると、不思議ですね。子どもがどうかってことよりも、自分自身の力がちょっと抜けた感じがしました。『まあ、いっか。話してくれなくても』って、気楽な気持ちになってきたんですよ。そうすると、子どもが向こうから話してくれたりするんですよね」。
手を止めて子どもの目を見る
Tさんの話はまだ続きます。時々、大声で笑い合いながら、私たちは食い入るようにTさんのお話を聴きました。
「それで、気付いたことがあったんです! 『傾聴のスキル』の講座を受けた時に、私、子どもの目を見て話していなかったなって。ほら、やったじゃないですか、聴き手が目を合わせないで聴く演習。それで思い出したんです。だいたい、何かしながら声をかけているんですよね。ごはんを作りながらとか、洗濯物をたたみながらとか、『学校、どうだった?』とか『早くしなさい』とか言っているんですけれど、伝わらないですよね。それで、たまに、子どもが話しかけてくる時は、今やっていることの手を止めて、子どものほうを向いて、目を見て聴くようにしたんです。忙しいのにそんな暇ないっていうのはありますよ。でも、やっていると変わるんですよ。『質問のスキル』とかも教わったけれど、正直なところあんまり使ってないんです。私が意識したのは、朗らかな表情でいることと、子どもと話す時は、手を止めて目を見て聴くことだけ。それだけはできるようになりました。自分が変わったのはこれぐらいですけれど、前よりずっと子どもが話しかけてくれるようになりました! ホントに! 自分が変わると相手が変わるんだなって思いました」。
晴れやかな顔のTさんに、一同、大きな拍手を贈りました。時々、私たちは、基本中の基本のことを脇に置いて、「もっとよい質問はないだろうか?」などと考えたりしますが、まず、『この人に話を聴いてもらいたい』と思ってもらえる存在でいることが大前提です。そこを思い出させてくれたTさんの体験談でした。当たり前のことを侮ってはいけないと思います。
![]() | 『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』 <つげ書房新社/石川尚子(著)/1,620円=税込み> |
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