家庭内で話さない子どもとどう関わる?[やる気を引き出すコーチング]

「うちの子、家でほとんどしゃべらないので、何を考えているのかよくわからないんです。進路の相談をしようと思っても、何も話さないので、結局、こちらが説教してしまって終わりという感じです。少し、うちの子の話を聴いてみていただけないでしょうか」。
コーチング講座の参加者の方からのご依頼で、先日も、高校3年生のA君と会うことになりました。

■まず、ペーシングから

実際に、A君と向かい合って話をしてみて、非常に驚きました。お母さんから聴いているA君のイメージとは「まったく違う!」のです。
最初は、少し恥ずかしそうにはしていましたが、ゆっくり質問をしていくと、しっかり答えます。こちらの目を見て話せますし、高校生にしては、言葉のキャッチボールもうまいと感じました。

「家では、顔を合わせると、親が『進路、進路』って進路の話ばかりしようとしてうっとうしいんです。もっと普通の日常の会話をしたいです。まず、会話があって、その中で、進路の話じゃないですか。進路や勉強のことだけ一方的に話そうとするのが嫌なんです」とA君は話していました。
なるほど!おっしゃる通りです。その後も、学校の話や興味があることなどを楽しく話す中で、こんな人生を送りたいという話を聴くことができました。

「すばらしいお子さんでした。やりたいことも将来へのお考えもお持ちでした」と、お母さんに報告すると、「え?うちの子、そんなにしゃべったんですか?」と目を丸くして驚かれました。「はい!とてもコミュニケーション力が高いと感じました」。「え〜?信じられないです」。

確かに、親子というのは、お互いに照れも甘えもありますから、本音を話しにくい関係であるとは思います。むしろ、まったく無関係の大人のほうが話しやすいということは往々にしてあります。それらを差し引いたとしても、「うちの子は話さない」と思っているのは、親御さんだけなのではないかと思うことがよくあります。

こちらが言いたいこと、聴きたいことにのみ焦点をあてるのではなく、子どもが話したいことにアンテナを立て、子どものペースに合わせて対話を重ねていくことがまず大切ではないでしょうか。話すスピードや姿勢、話す内容などを相手に合わせることをペーシングと言います。ペーシングができていないと、相手は心を開けず、どんな質問も跳ね返されてしまいます。

■「できる子」として向かい合う

さらに、「親とコーチでは何が違うのでしょうね?」と、お母さんは考えながら話される中で、ご自身で気づかれたことがあります。
「話さない子どもに問題があると思っていましたけど、問題があるのは私のほうでした。私がまったく子どものことを信じていなかったんですね。
『この子は話さない。話せない。こちらが何か言ってやらないと、自分では進路について考えられない』と思い込んで、子どもと向かい合っていたんですね。もっと、子どもを信じないとダメですね」。

親とコーチは何が違うのか?もちろん、コーチは身内ではないので、親御さんよりは客観的に相手を見ることができますが、常に、「この子は自分で考えられる。自分の言葉で自分の考えを話せる」というところに立って話を聴きます。コーチが持っていきたい方向にコントロールしようとしませんし、どんな気持ちなのかをただ受けとめるように聴きます。

自分の考えや気持ちがどんなものであっても、いったん受けとめ、尊重してもらえると思ったら、子どもは安心感の中で考え、話すことができます。「正そう」とする気持ちを脇に置き、「できる子」として向かい合ってみることがポイントです。子どもは、おもしろいほど、こちらのあり方に反応します。「できる子」として向かい合えば、そのような存在として現れるのです。

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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