【体験談あり】子どもが不登校になる原因は? 保護者の対応方法をプロが解説

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保護者世代が子どもだった時代と比べて、不登校の児童・生徒数は増えており、どのご家庭でも「うちの子は無関係」とは言い切れなくなっています。
「登校してほしいけど、追いつめたくはない……」
「どうして学校に行けなくなったのか、原因だけでも知りたい」
こんなふうに感じている保護者のかたも少なくないのではないでしょうか。

中学校で11年教師を務め、現在はフリースクールの運営を行っている信田雄一郎さんにお話をお聞きしました。

この記事を読んでいるかたの中には、「うちの子が学校にいけなくなってしまった、どうしよう……」と悩まれているかたもいらっしゃるかもしれません。同じように、お子さまが不登校になって戸惑い、悩んだ保護者のかたからのエピソードとメッセージも掲載していますので、参考にしてみてくださいね。

この記事のポイント

不登校の原因はさまざま データからも見える理由ときっかけ

「不登校」と聞いてどんな状態をイメージするかは人によってちがいますが、文部科学省では「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくてもできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いた者」と定義しています。
そして文部科学省の調査によれば、2021年度における小・中学生の不登校は約24万5千人、高校生は約5万1千人に及んでいます。※1
不登校はどんな理由・きっかけから起こるのでしょうか? 学齢別に見ていきましょう。
多くのお子さまが挙げた不登校の原因を知るだけでも、「どう関わるか」のきっかけをつかみやすくなるかもしれません。

小学生の不登校の原因ときっかけ

文部科学省が全国の小・中学校や教育委員会を対象に行った調査では、小学生の不登校の要因として、全体の中で回答の割合が高かったのは「無気力・不安」「親子の関わり方」「生活リズムの乱れ、あそび、非行」の3つ※1です。

一方で、文部省が不登校を経験した小学生・中学生を対象に行った調査※2では、学校に行きにくいと感じたきっかけとして最も多かったのが「先生のこと(先生と合わなかった、先生が怖かった、体罰があったなど)」、次いで「友達のこと(いやがらせやいじめ)」「勉強がわからない」などでした。
2つの調査結果を見ると、教育現場と当事者の児童・生徒間で認識の差があることがわかります。

特に小学生の場合は、ちょっとしたきっかけで学校に行きにくくなるケースもあるようです。

中学生の不登校の原因ときっかけ

前述した小・中学校と教育委員会を対象にした文部科学省の調査では、中学生の不登校の原因では「無気力・不安」「いじめを除く友人関係をめぐる問題」「生活リズムの乱れ、あそび、非行」が上位となっています。
中学生の当事者に聞いた調査では、「身体の不調」「勉強がわからない」「先生のこと」が上位です。
私の経験では、「先生と合わない」「授業がつまらない」などの声もよく聞きました。
中学生になると、自分が置かれた現状を正確に認識できるようになる分、友人関係のトラブルや、進路への不安に悩むお子さまが増えてきます。
深刻な悩みをもつお子さまも多いですが、原因が具体的になり、自分で説明する力も付いてくることから、サポートがしやすい面もあります。

高校生の不登校の原因ときっかけ

同じく小・中学校と教育委員会を対象にした文部科学省の調査では、高校生の不登校の原因は、「無気力・不安」「生活リズムの乱れ・あそび・非行」と回答した人の割合が突出して高く、大人に近づくプロセスの中で心身が不安定になり、不登校につながっていることが見てとれます。
なお「入学・転編入学・進級時の不適応」を挙げた人も目立ち、進学した高校とのマッチングがうまくいかなかったことが推測できます。成績優秀で、進学校に入学した生徒が、周囲の生徒に後れを取り、自己肯定感が下がってしまうなどの理由による不登校の事例も増えているように思います。

知っておきたい! 不登校の児童・生徒のタイプ3つ

不登校にはさまざまなタイプがあると言われますが、「親子分離不安型」「発達障害・学習障害型」「人間不信型」の3タイプに大きく分けられると考えています。また、発達障害により人間関係がうまくいかず人間不信に陥ってしまう複合型の子も多いです。
代表的な不登校のタイプについて知っておくことで、お子さまが「学校へ行きたくない」と言いだしたときに、対応策を考えやすいはずです。

親子分離不安型

保護者から離れることに強い不安や恐怖を感じ、登校をしぶるタイプ。その根底には、「もっと自分のことを見てほしい、興味を持ってほしい」という気持ちがあります。
小学校低学年のお子さまによくみられますが、近年は中・高学年でもこのタイプが増えています。
このタイプにおいては、お子さまの話をしっかり聞いてあげることが対応策の第一歩といえるでしょう。

発達障害・学習障害型

発達障害や学習障害の傾向がある、近年「グレーゾーン」といわれるタイプのお子さまの不登校もあります。同級生にできることができなくて自信をなくしたり、相手の気持ちを考えて話すことができなくて友人関係が悪化したりするといった経験が重なり、不登校に至ることが多いようです。
発達障害・学習障害による失敗やトラブルをきっかけとした不登校は、お子さまの意思とは関係なく起こるものです。
学校の先生からの指摘などでお子さまの特性が気になる場合は、小児神経科や児童精神科など専門機関に相談してみるのも一つの手です。
学習に関しては、学習についていけず苦労するケースもあれば、逆に俗に「ギフテッド」と呼ばれるような学力レベルが高い子や、精神年齢が高い子が「学校がつまらない」「話が合う友達がいない」という理由で学校に行きにくいと感じるケースも一定数あります。

人間不信型

「担任の先生と合わない」「友達との仲が悪化」「いじめを受けている」といった人間関係のトラブルをきっかけに学校から離れるお子さまは、小学校から高校まで幅広い世代にみられます。
人間関係のトラブルによって心身が不安定になり、登校しようとすると発熱や腹痛が起こるお子さまもいます。
トラブルの状況や、お子さまが感じているストレス度合いによって対処法は大きく変わります。
原因を特定することは大切ですが、「何があったのか言いなさい」などとお子さまを追いつめても事態は解決しません。話をしてくれるまで少し待つことが求められます。

不登校になった原因やきっかけは? 経験者に聞いた

お子さまが不登校になったとき、保護者としては「勉強の遅れは大丈夫?」「配偶者とどう協力すればいい?」「仕事はどうなる?」など今までにない体験に不安を感じるでしょう。
そこでここからは、実際にお子さまの不登校を経験した保護者のかた2名の体験談をご紹介します。子どもとどう接したらよい? 学校とどんなふうに協力体制をつくる? 進路への影響は? 保護者として一番つらかったことは? リアルなエピソードや経験者ならではの声を、いざというときの参考になさってください。

事例1 Aさん(中3・男子) 突然不登校になり、学校へ行こうとするとじんましんが出る

息子の不登校が始まったのは、中1の秋でした。
前日までは普通に学校に行っていたのに、ある朝突然、「学校へ行けない」と泣き出したのです。
思い返してみれば小学生時代から学校はあまり好きではなかったけれど、私にとっては青天の霹靂(へきれき)でした。
原因を聞いてみても、「特に原因はない」と言うばかり。
息子自身、がんばって登校しようとしていましたが、出かけようとすると涙があふれ、じんましんが出ることも。
苦しんでいる姿を見ると、「学校へ行きなさい」とはとても言えませんでした。
なんとか原因を突き止めようと中学の先生に聞いてみても、「なぜ急に不登校になったのか」は特定できずじまいでした。
転機になったのは、学校でスクールカウンセラーのかたを紹介していただき、夫婦で週1回ずつ面談を受けるようになったことです。
不登校に関する知識や、子どもへの接し方を教えていただく中で、「息子は、人と接するためのパワーが空っぽになってしまったんだな。親は、そのパワーが蓄積されるのを待つしかない」と気づくことができたのです。
覚悟を決めてからは、息子のようすにも変化が現れ始めました。
通学していた中学への再登校はできないものの、自分から通信制高校の情報を集めるようになり、将来の大学進学も視野に入れて勉強に取り組んでいます。

お子さまが不登校になると、保護者のかたはとても悩まれるでしょう。
でも、子どもの人生はその子自身のものだし、人生の数年間学校へ行けなくても、それほど大きな問題ではないと、今の私は思っています。
どうかご自身を責めないで、お子さまを信じて、見守ってあげてください。

事例2 Bさん(小5・女子) 感受性が鋭く、学校で過ごすのがつらい

娘の登校しぶりは、小1の6月から始まりました。
2年生までは私たちが付き添ってなんとか登校していたのですが、3年生から「学校へ行きたくない」とはっきりと訴えるようになり、4年生になると登校前に泣いて暴れるほどに。
先生や友達とのトラブルはみられなかったものの、娘にはHSC(Highly Sensitive Child:人一倍感受性が鋭く、音や匂いなどに敏感な子ども)の傾向があり、学校の環境に身を置くのがつらかったのかもしれません。
「先生がほかの子を叱っているのを見ると怖い」「騒がしいところにいるのがつらい」「給食がおいしくない」などとよく訴えていました。
「みんなは当たり前に学校に行っているのに、どうしてうちの子だけできないんだろう?」と悲しくなり、娘が泣くたびに私も涙を流しました。
ママ友はいても心から信頼はできないし、学校に付き添うときは仕事も半休をとらなければならず、社会から隔絶された気持ちになりました。
現在は、担任の先生と話し合いをして「好きな授業や行事だけ参加、学校の課題は自宅で取り組む」といったスタイルで学んでいます。
先生には、授業中や行事でグループをつくるときは仲のよい友達と組ませてもらえるようお願いして、少しでも娘が学校に行きやすいよう、きっかけをつくろうとしています。

私自身は、「学校に行かなくてもいい」とはいまだに思えません。
だから、担任の先生に希望を伝えたり、不登校支援員の先生や保健室の先生、スクールカウンセラーなどたくさんのかたの協力を仰いだりして、再登校への道を模索しています。
お子さまが不登校になったときには、一人で抱え込まず周りにどんどん相談することをお勧めします。
いろいろな知恵をもらえるだけでなく、気持ちも少し楽になるのではないでしょうか。

不登校の時の生活は? 健康管理や学習習慣などの注意点

お子さまが不登校になった場合、保護者のかたとしては「ずっと家にいて健康を害することはないか」「授業についていけなくなるのでは?」などさまざまな不安があるでしょう。
学校の先生や保護者のかたに話を聞くと、不登校を続けているお子さまも、一定の生活リズムを守ってきちんと食事をとっていれば、体調を崩すことはほとんどないそうです。
心配なのが、運動不足による体力低下です。
体力が落ちると、何かやりたいことに出合ってもやる気力が無く、復帰への道のりが遠ざかってしまう可能性も。お子さまが自宅で長く過ごしているなら、散歩に連れ出すなどして少しでも身体を動かす機会をつくってあげましょう。1日5分でもよいです。それすらも負担になるような状態だったら、まずは休ませてあげてください。

学習の遅れなどは確かに気になるところですが、基本的にはお子さまが自分からやる気になるのを待つのが一番です。その際に効果的なのは、将来に目を向けさせることです。
お子さまが「こんな仕事をやりたい」などと言い出したときに、「だったらどんな勉強が必要か一緒に調べてみよう」などと持ちかけて、少しずつ意識付けをしていきましょう。
ただ、基礎学力が不足していると、あとで学習の遅れを取り戻すのに非常に時間がかかってしまい、目指す職業への道のりが困難になる可能性もあります。

お子さま自身がつらいときに、将来のことを話すと負担になる可能性があるため、お子さまの精神状態が回復してきたら、「将来やりたいことをやるために、少しでも勉強はしておいたほうがいいよ」と伝えてみましょう。

まとめ & 実践 TIPS

お子さまが急に不登校になると、保護者のかたは「どうしてこうなってしまったんだろう?」と焦りを感じるでしょう。
しかし、一般的な不登校の原因を押さえておくだけでも、今後の手がかりが見えやすくなります。

そして何より、教師、心理カウンセラー、精神科医、学校の相談員や養護教諭など、専門家を頼ってください
私が不登校のお子さまの保護者のかたと関わってきた中で感じるのは、一人で苦しんでいるお母さんがとても多いことです。「このままでは壊れてしまうのでは」と思うようなお母さんにたくさん出会ってきました。
専門家の意見を聞きながら、ぜひ家族や周囲の人にも相談して、できるだけ一人で抱え込まないでほしいと思います。

※1 出典:令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について -文部科学省

※2 出典:不登校児童生徒の実態把握に関する 調査報告書-文部科学省


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プロフィール



11年にわたり中学校で教員を務めたのち、現在は愛知県豊田市でフリースクール「Tao Haus」を運営。
Tao Hausホームページ
https://note.com/nobuta314/n/ne7c0c16aa4b8

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