探究学習にも役立つ!?現代アートによる学びの可能性【直島アート便り】

昨今の学習指導要領の改訂に伴い、これからの教育では児童・生徒が自ら課題を発見し取り組んでいく探究学習の重要性が高まっていく時代になっています。
一方で、これまでの指導計画とは異なり、どのように児童・生徒の主体性を引き出していくのか、教育現場での指導方法の模索はまだこれからとも言えます。今回は、美術の科目にとどまらない、探究活動における現代アート活用の可能性についてお伝えします。

この記事のポイント

なぜ探究学習が求められるのか?

今はVUCAの時代とも言われますが、気候変動や新型ウイルスの蔓延など、予期せぬことが多く起こる中で、確固たる「正しいこと」や「明らかなこと」の言及が難しくなってきたのではないでしょうか。人々の生き方も多様性を増し、何がその人にとっての幸せなのかを、ひとつの物差しではかることは困難でしょう。

一方で、そのような変動の大きな日常生活に適応していくには、従来のものの考え方や手法に倣っているだけでは不十分になってきていると言えます。コロナ禍においてはオンラインを活用したニュースタンダードの普及や、地方で独自のビジネスを立ち上げるスタートアップなど、フィールド自体を新しいエリアに広げていく事例も目にするようになりました。

そのような時代を生き抜いていく上で重要になるのは、先人の成功の道をなぞるだけではなく、自分で自分のための道を切り開いていくことではないでしょうか。そのためには、「自分らしさ」に気づく内省力と自己肯定力、自分にとって最善の方法を模索し選択する思考力と判断力、自信を持って実行してみる実践力が求められますし、時代に合った新しい発想を生み出すためには、他者との協働・コミュニケーション、創造力やアイディアを生む力、提案力も必要です。
それらは、他者から与えられるものではなく、経験の中で得られる自信・手応えを自分の糧にし、自発的に取り組む姿勢=マインドとして身に付けていくものです。

現代アートの活用 ①楽しく・自分なりの「問い」を見つける

ここからは、そのようなこれからの時代を「生きる力」を身に付けるために、現代アートを活用する可能性について探ります。まずは探究学習には欠かせない「問い」を生む力です。

「身の回りで課題を見つけよう」や、「SDGsのテーマから気になるものを選ぼう」などの導入はよく見受けられますが、「本当に社会をよくするために何が課題なのか?」を自発的に見つけることは実はとても難しく、児童・生徒も授業として取り組む環境下では、多くの人が環境問題などの似たようなテーマ設定をしてしまうことが多いのではないでしょうか。

現代アートは、作家がその人なりの視点で社会を切り取り、課題を投げかけているものも少なくありません。もちろん、どのようなメッセージを受け取るかは、鑑賞者に委ねられています。それ故、人によって着目する部分が異なり、「学校で勉強したこと」に関連するテーマだけでなく、日常の場面や、個人的な記憶・原体験と思考が結びつき、自分の潜在的な問題関心や取り組むべきテーマに気づくことができます。

美術館という普段とは違う環境や、現代アートと対峙するというシチュエーションから始まることで、好奇心やワクワク感、不思議だなと思う感覚から入りこむことができ、楽しく積極性を持って取り組むことができるのもメリットの一つです。

≪瀬戸内「鍰造景」資料館≫(宮浦ギャラリー六区)にて、島の日常を見る新たな視点を発見する生徒。

現代アートの活用 ②新しい発想を生み出す

現代アートに触れることは、表現の手法に出合うこととも言えます。作品との出合いを通じて具体的な表現方法のバリエーションを知ることができるだけでなく、自分のものの見方を自分なりに表現するという姿勢自体や、「自由な発想」とは一体どのようなものなのか、イメージや振れ幅についてリアリティを持って理解することにも繋がるでしょう。

現代アートに多く触れ、創造力が身に着いたり、好奇心をもって社会と関わる姿勢が身についたりすると、課題認識からではなく「もっとこんな社会を作りたい!」というビジョンを描くことも可能になるかもしれません。そのような姿勢から生み出されるアイディアや提案は、児童・生徒一人ひとりの個性的な視点や熱意が反映され、大人も考えつかないような魅力的なものが多いのです。

直島コメづくりプロジェクトでの体験。コメづくりを通じて風景やコミュニティの再生を目指すアートプロジェクト。

現代アートの活用 ③対話力を育てる

現代アートは鑑賞者によって解釈が異なることから、対話型鑑賞という手法を用いて自分の主観を言語化し、他者の意見も聞きながら鑑賞すると、思考力やコミュニケーション力が育まれると言われています。正解のない現代アートの解釈は、人の意見に興味を持ち、受け入れ、自分の主観にも気づき、お互いの個性やものの考え方を尊重しあう経験に繋がります。

作品鑑賞を通じて、1人の視点や考えを追求するだけではなく、仲間から生み出される様々なアイディアに共感し融合させていくことの面白さに気づくことで、対話力や協調性が育まれることが期待できます。そのような姿勢づくりを探究活動の中にも取り入れていくことで、個人の考えたことに他者の視点を反映させてブラッシュアップしたり、1人では描けない少し大きな提案を仲間と一緒に作ることができるでしょう。

現代アートの活用 ④仕掛けとしての提案に結ぶ

自分なりの「問い」の解決策や、描いた「ビジョン」の実現に向け、どんなアクションプランに取り組みたいか、具体的な提案を作る・実践するところまでが探究学習です。そして、その提案を考える場面でも、現代アートは一翼を担うことができます。なぜなら、現代アートが社会の中でどう機能しているか?ということが、アクションプラン自体のヒントになるからです。

現代アートは、問いに対する答えを直接的に表現しているのではなく、鑑賞者が問いに気づき、自分なりの答えを考えるきっかけとして作用していると言えます。つまり、現代アートは、鑑賞者の意識や行動を能動的に変えるための仕掛けでもあるのです。

児童・生徒が現代アートの役割について考える機会をつくることで、同じような仕掛けとしての施策に興味を持つ人もいます。社会に対して伝えたい結論を直接訴えかけるより、現代アートのように人が考えるきっかけをつくるという施策の方が、能動的に関わる人を増やし、間接的ではあっても多くの人々を動かす効果を生むことに繋がるかもしれません。また、現代アートは科学や哲学など、他の分野とのコラボレーションができるのも特徴の一つであり、仕掛けとしての手法も様々に考えることができます。

現代社会では、「正しい」提言をつくることが難しくなっている状況下において、一方的な発信を目的としたアクションプランではなく、一人ひとりにいかに問題意識を投げかけ、他者と協働して複数の考えを引き出しながらムーブメントをつくっていくような施策が求められていくのではないでしょうか。

ベネッセアートサイト直島での学びのすすめ

ベネッセアートサイト直島は、瀬戸内の美しい自然や個性豊かな文化のある島々を舞台に、現代アートとの出合をきっかけにして、近代化社会の課題に気づき、これからの社会のあり方や一人ひとりにとっての「よく生きる」とは何かを考える場を目指しています。

学校向けの教育プログラムや社会人向けの研修 BASN Learning & Practiceでは、探究学習や理念研修など、各団体の目的に応じて、対話・思考・プレゼンテーションができるプログラムの設計・実施を行っています。
参加者からは、「諦めかけていた夢にもう一度チャレンジしようと思えた。」、「人の意見を聞いて自分の考えが変わる経験は新鮮だったし、アートには人によって違う意見を受け入れられる力があることに気づいた。」、「普段では出せないミラクルな思いつきが幾度となく降りて来た。」、「仲間の新たな一面に気づくことができ、自分のチームの強みも認識できた。」などの声が寄せられています。

日常とは少し離れた環境で、現代アートの鑑賞を通じて今自分が取り組むべきテーマを見つめ、他者との対話によって考えを広げながら、自分なりの答えをつくる体験をしてみてはいかがでしょうか。
お問い合わせ 学校・法人様向けプログラム | ベネッセアートサイト直島 (benesse-artsite.jp)

犬島精錬所美術館 近代化産業遺産にて鍰煉瓦の重さや蓄熱性を確認する生徒

プロフィール

ベネッセアートサイト直島

「ベネッセアートサイト直島」は、直島、豊島、犬島などを舞台に、株式会社ベネッセホールディングスと公益財団法人 福武財団が展開しているアート活動の総称です。訪れてくださる方が、各島でのアート作品との出合い、日本の原風景ともいえる瀬戸内の風景や地域の人々との触れ合いを通して、ベネッセグループの企業理念である「ベネッセ=よく生きる」とは何かについて考えてくださることを願っています。
https://benesse-artsite.jp/

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