学校と公共施設の複合化を推進へ 少子化、統廃合で‐斎藤剛史‐

現在の公立小中学校などでは、校舎など施設の老朽化や少子化による統廃合などが大きな課題となっています。これに対して文部科学省は、公民館や福祉施設などの公共施設と公立学校施設とを複合化する方針を打ち出し、その推進方策や留意点などを論議するための検討部会を設置しました。もしかしたら、これからの公立小中学校の姿は大きく変わることになるかもしれません。

東日本大震災以降、公立小中学校は地域の防災拠点であるだけでなく、地域社会の中心的存在として注目を集めるようになりました。政府が2013(平成25)年6月に策定した第2期教育振興基本計画では、地域コミュニティー形成の拠点として学校施設を整備することが求められています。一方、公立小中学校の校舎などは築25年以上の建物が約7割を占めるなど老朽化が進行しているほか、少子化による児童生徒減少で年間400校程度が廃校となっているのが実情です。このため文科省は、公民館などの社会教育施設や福祉施設などと公立学校を複合化することで、学校施設の改築や改修を促進しながら、学校を地域コミュニティーの中心に位置付けることにしました。

学校施設の複合化にはもう一つ別の狙いもうかがえます。どうやら学校施設の複合化には、公立学校・社会教育施設・福祉施設などの公共施設の統廃合や経費軽減という目的もあるようです。それには、少子化による児童生徒減少がついに日本全体の人口減少につながり始めていることが背景にあります。地方部を中心にした人口減少により、将来、地域としての機能を維持できなくなるところが多数出現することが懸念され、社会教育施設や福祉施設など公共施設の需要が大きく変化することが予想されます。これを受けて総務省は2014(平成26)年4月、将来的な人口予測をもとにして、公共施設の維持管理などに関する費用を中長期的に把握するため「公共施設等総合管理計画」(外部のPDFにリンク)を策定するよう地方自治体に要請しました。人口減少を踏まえた公共施設の統廃合が地方自治体の大きな課題になりつつあるというわけです。

文科省の検討部会では、学校施設複合化の意義、子どもたちの学びの場と地域コミュニティーの拠点としての場を両立させるための管理運営などの留意事項、複合化の促進方策などを検討し、2015(平成27)年夏頃までに報告をまとめる予定です。また検討部会の会合では、高齢者在宅サービスセンター、村民体育館、児童館などとの複合化の実例などが紹介され、今後、全国的な複合化に関する事例調査なども行う予定です。このほか、使われていない余裕教室で高齢者のデイサービスを実施、家庭科室で市民向け料理教室を開催などのほか、学校図書館を地域図書館として開放したり、保健室を住民の診療所として活用したりするなどの案も話し合われました。
学校施設の複合化が普及すれば、単に学校とほかの公共施設が併設されるというだけでなく、学校の在り方そのものが大きく変わることにもなりそうです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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