公共施設の再編に賛成……でも「学校は残して」

約60年ぶりに文部科学省が学校適正配置の手引きを改定したことを受けて、学校統廃合問題が社会の注目を集めていることは、これまでもお伝えしてきました。しかし、施設の老朽化、人口減少による利用者減などで統廃合が課題となっているのは学校に限りません。そんな公共施設について、一般の人々の約9割が統廃合に肯定的であるという結果が、政府系金融機関である日本政策投資銀行の調査(外部のPDFにリンク)で明らかになりました。

学校以外にも図書館や福祉関係施設など公共施設は、その多くが高度経済成長期につくられたため老朽化が進んでいるほか、人口減少による利用者減なども深刻です。このため総務省は昨年4月、学校を含む公共施設の維持管理などの経費負担や住民ニーズの見通しなどをまとめた「公共施設等総合管理計画」を策定するよう地方自治体に要請しています。今や地方自治体にとって、公共施設全体の再編・統廃合は避けてとおれない課題となっているのです。

同銀行が昨年10月、インターネットを通じて3,110人から回答を得た調査によると、自治体の財政難などで公共施設の建て替えなどが難しいという問題を「知っている」(「よく知っている」+「少しは知っている」)のは54.2%で半数以上に上っています。そして公共施設の再編・統廃合について、「積極的に取り組むべきである」は32.4%、「今の状況を考えると取り組むことはやむを得ない」が55.9%で、合計88.3%の人々が公共施設の再編・統廃合に肯定的な見方を示しました。また、再編・統廃合で不便になることについても、「許容できる」が13.0%、「ある程度までは許容できる」が76.4%で、同じく約9割が我慢できると回答しています。

ただし「今後も残すべき公共施設」としては、トップが「学校」72.7%、次いで「市役所(区役所)」63.7%、「保育園」58.8%、「図書館」50.7%などが挙げられています。逆に割合が低かったのは「郷土歴史館」14.1%、「集会所」18.7%、役所の「支所」18.9%、「市民センター」20.8%などでした。公共施設の再編・統廃合に肯定的な意見が多いとはいえ、やはり学校はできるだけ残しておきたい別格の存在と言えそうです。

一方、公共施設の再編・統廃合に対する反対住民への対応としては、「理解を得られるまで丁寧に説明を行った上で、再編成を進めるべきである」が50.3%で、「公共性・必要性が高ければ、ある程度の反対を押し切ってでも、再編を進めるべきである」の34.8%を上回っています。公共施設の再編成・統廃合に理解を示しながらも、行政による強引な再編は好ましくないと思っている人が多いことがうかがえます。いずれにしろ地域の住民として、学校だけでなく公共施設全体の再編・統廃合は、今後の大きな問題であることを知っておく必要があるでしょう。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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