公立小中の教職員数、「授業革新」「チーム学校」で増加目指す‐渡辺敦司‐

国際的にも忙しいと言われる公立小中学校の教職員の数について、文部科学省は、子どもの数で決まる基準(教職員定数)を10年がかりで増やす計画を立て、2015(平成27)年度予算の概算要求に初年度の所要額を盛り込みました。「授業革新」「チーム学校」という発想で教員の「質」と「数」を一体で強化し、教育再生を図るといいます。ただ、教職員定数の改善計画は民主党政権でも試みられながら策定できなかった経緯もあり、今度こそ実現できるのか、年末に向けての予算折衝が注目されます。

公立学校の教職員数は、1学級に担任1人を基本に、1校に校長1人など細かい基準が設けられており、毎年5月1日付の児童生徒数と学級数によって教職員数を確定することになっています。小中学校の教職員の給与費は法律と予算によって国が3分の1を負担しているため、定数を改善するには要求が認められるかどうかがカギを握っています。

文科省の「新たな教職員定数改善計画(案)」(外部のPDFにリンク)によると、2024(平成36)年度までの10年間で、
(1)授業革新等による教育の質の向上=1万5,500人
(2)チーム学校の推進=6,950人
(3)個別の教育課題への対応=7,000人
(4)学校規模の適正化への支援=2,350人
の計3万1,800人を改善するとしています。ただ、少子化に伴って4万700人が自然に減ることが見込まれているため、実際の教職員数は差し引き8,900人の減少となり、文科省は財政的負担なく定数改善ができると主張しています。初年度分として2,760人(<1>580人<2>1,010人<3>700人<4>470人)の改善を「新しい日本のための優先課題推進枠」に位置付け、概算要求に盛り込みました。これとは別に、東日本大震災で被災した児童生徒のための学習支援として前年度と同じ1,000人の追加措置も復興特別会計で要求しています。
このうち(1)の「授業革新」は以前の記事でも少し紹介しましたが、受け身型の授業を改めて「アクティブ・ラーニング」(能動的学習)と呼ばれる課題解決型授業へと転換することによって、21世紀にふさわしい教育を実現しようというものです。また、(2)の「チーム学校」は教頭や主幹教諭などのほか、事務職員や養護教諭・栄養教諭、学校司書・ICT専門職員・地域連携担当職員などスタッフ職を増やすことにより、教員には授業革新に力を入れてもらうとともに、学校全体で教育力を高めることを目指しています。

ただ、教職員定数改善計画は第7次(2001~05<平成13~17>年度)の完成以来、策定されておらず、民主党政権下で一律30・35人学級の実現を目指した「新・改善計画」(11<同23>年度)や「新たな改善計画」(13<同25>年度)、自公政権下でも「教師力・学校力向上7か年戦略」(14<同26>年度)(いずれも外部のPDFにリンク)をそれぞれ要求しましたが、いずれも実現しませんでした。
「教職員配置の充実」は政府の教育再生実行会議第5次提言(外部のPDFにリンク)にも盛り込まれ、下村博文文部科学相は教職員やチーム学校の在り方を中教審に諮問しています。2020(平成32)年度以降には、新しい学習指導要領(外部のPDFにリンク)も全面実施に入りそうです。教育再生が経済再生と並ぶ内閣の最重要課題だという第2次安倍政権が、どういう判断を下すのでしょうか。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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