中1夏休みの家庭学習、どうサポートする?【後編】上手な保護者の関わり方 Q&A
【前編】に続き、大手通信教育会社で20年以上、中学生の担当として通信添削を行っている高野千明さんに、思春期ならではの家庭学習のサポート法について伺います。今回は、夏休みの学習について、Q&A方式で答えていただきました。
宿題をやらない子どもへの上手なサポート法は?
Q1 宿題にまったく取りかからないのですが、手伝うべき?
もう親が手取り足取りという年ではないと思うのですが、完全に放っておいてよいのかどうか、気になります。
A1 「今、何に取り組んでいるか」に関心を持ってあげることが大事
中学生の夏休みは、部活が忙しい一方で、宿題も教科ごとにたくさん出ていて、こなすだけでも大変な場合が多いですよね。しかも、宿題には一人で取り組まなければならず、教え合ったり、「難しいよね」などとグチを言い合ったりする友達も身近にいない。「一人でなんとかしたい」けれど、実際はなかなかできない子どもも多いと思います。
保護者のかたは、どんな宿題がどのくらい出ているか、その内容や量をさりげなく把握してあげてはいかがでしょうか。ワークやプリントをのぞいて「宿題、どのくらい出てるの。こんなにやるんだ」「ずいぶん難しいことやってるのね」と、ちょっと話題にしてみる。自由研究のテーマなども、さりげなく話題にしてあげるとよいと思います。「こんなのはどう?」「それはつまんないよ」程度のやりとりで十分です。保護者のかたが、自分のしていることに関心を持って聞いてくれるとうれしいし、孤独感もかなり薄れるのではないでしょうか。
ただし、「早くやりなさい」は禁物です(笑)。そこはぐっと我慢していただいて、子どもが「今、何に取り組んでいるか」に関心を持ってあげる。
また、子どもが勉強する時間は、保護者のかたも本を読むなど、率先して、落ち着いて何かに取り組むようにすると、子どもも勉強しやすい環境づくりができると思います。保護者が応援してくれているのを感じとると、子どものやる気も出てくるものです。
苦手な数学を夏休み中にどうすれば?
Q2 1学期の定期テストの成績がよくなく、特に数学が苦手です。夏休み中にすべきことは?
勉強してほしいのですが、本人は毎日部活や遊びに忙しくて、勉強のことはすっかり忘れているようです……。
A2 1学期のつまずきを、お休み中に解消しておくことが理想的
実は中学生の夏休みは、学習においても非常に重要な時期です。特に、多くの中1生は、4月はやる気に満ちています。が、1学期の定期テストで思うように点が取れず、「あれあれ……」と思っても放っておく→夏休みに勉強しない→2学期は急に勉強が難しくなる。でも、学習習慣を立て直すのが大変で、2学期の定期テストで失敗し、自信を失う……というパターンが多いのです。
ですから、たとえ1日15分、30分でも、家庭学習の習慣は守ってほしいですね。忙しい毎日の中で、少しでも勉強に取り組んでいる姿を見たら、すかさずほめてあげてください。
また、「数学が苦手」とのことですが、たとえば「符号をまちがえやすい」など、ある単元のたった一つのステップでつまずいているだけで「その教科は全部苦手!」「難しい!」と拒否反応を起こしてしまう子どもも多いんですね。それはとてももったいないことです。1学期のつまずきを、お休み中に解消しておくことが理想的です。
もし、保護者のかたが勉強を見てあげていらっしゃるなら、「できていないこと」を指摘するのではなく、できているところはほめてあげて、「ここだけできれば大丈夫だよ」というふうに、どこが課題かを指摘してあげてください。課題を発見するのは、一人では難しいことですが、大人の適切なサポートで、ぐんと伸びていくこともあるのです。
勉強をしない子どもへの注意の仕方は?
Q3 部活でくたくたらしく、家では寝ているかゲームばかり。勉強は?と聞くと返事をせず、ものすごく不機嫌に。
どう声をかければいいか悩みます。夏休みは一緒にいる時間が長いので、正直、息が詰まります……。
A3 あえて勉強のことは言わず、お子さんの「今」に関心を持ってあげる
大人でも、パートナーや上司に「あの仕事、まだやってないの?」などと言われるとカチンとくるもの。やったあとで「ありがとう」と言われるのとでは全然気分が違いますよね。それをわかっていても、お子さんが勉強しているか気になって、つい言ってしまうのは、保護者のかたの責任感の現れだと思います。本当に、難しいですよね。
中学生になると、子どもたちは自分の世界を広げ、保護者には見えなくなる部分も多くなります。部活に打ち込むあまり、家では話をするエネルギーがないのかもしれないし、勉強はやらなきゃと思っているけれど、疲れていてできないので、余計に不機嫌になるのかもしれませんね。
その一方で、部活動など、好きなことにかける子どものエネルギーってすごいなと思います。たとえレギュラーになれなくても、うまくなりたい一心で何百本もシュート練習を繰り返したり、スケッチブック何冊分も好きな絵を描いたり。大人になると、効率やコストを考えずに動くことは難しいけれど、何の見返りも求めず、ただただ楽しいから何かに打ち込むというのは、今しかできない幸せな経験ではないでしょうか。
ですから、今はあえて勉強のことは言わず、その子が何かがんばっている姿が見えたら、そのことにふれてあげるだけでいいと思います。「今日はうれしそう、部活で何かいいことあったの」とか、「今日は部屋、片付いているじゃない」「宿題、たくさんあるの? 大変だね」とか。部活にしろ、勉強にしろ、結果よりも、お子さんの「今」に関心を持ってあげることが大切ではないでしょうか。