心と体の発育 (1)二次性徴は大人への第一歩
小学校高学年~中学生にかけて、子どもたちの体は大人の体へと変化しはじめます。体の変化とともに心も大きく揺れ動く時期、親はどのように接すればよいのでしょうか。長年、小学校の養護教諭をされていた宍戸洲美先生にアドバイスをいただきました。
「二次性徴」とは体に質的な変化が訪れる時期
性ホルモン分泌が始まり、大人の体へ変化していく子どもたち。女子は女性ホルモン、男子は男性ホルモンの働きにより、女性・男性それぞれの性差が表れてきます。こうした時期を「二次性徴」と呼びます。
体の変化が始まると、心の変化も起こります。性的関心が芽生えたり、体の変化に不安を感じたり……。子どもと大人の狭間で子どもたちの心は不安定になりがちです。二次性徴が始まったときが思春期の入り口。思春期はホルモンの分泌が安定する17~18歳ごろまで続きます。
【表1 二次性徴で現れる体の変化】
女子 | 男子 |
乳房が発育する 皮下脂肪がつきやすくなる わき毛、陰毛が生えてくる 初経 性器(子宮、膣<ちつ>)が発達する | のどぼとけが出てくる 声変わりする 筋肉が発達する ひげ、わき毛、陰毛が生えてくる 初回精通 性器(陰茎、陰嚢<いんのう>)の発達 身長の伸びは継続する |
女の子は9~10歳、男の子は11~12歳がターニングポイント
「近年は二次性徴の時期が早まっている」と聞くこともありますが、実際のデータを見ると、初経の時期・初回精通の時期はこの10年間ほとんど変化していません。中学生を対象にした調査(2005<平成17>年 東京都幼稚園・小・中・高・心障性教育研究会調査)では、女子は小学6年生までに半数が初経を経験し、男子は中学2年生で半数が精通を経験していると報告されています。
二次性徴が訪れる年齢は女子のほうが早く、男子は2年ほど遅れて現れます。大人の体に変化するターニングポイントは、女子が9~10歳、男子が11~12歳と言えるでしょう。ただし個人差は大きく、小学4年生で初経を迎える女子もいれば、中学3年生になってからの女子もいます。
体の変化を安心して受け入れるために必要なこと
心は体と同じ速度で成長するわけではありません。体は大人に近づいても、まだ「ママ、ママ」と甘えていたい子どもは多いでしょう。子どもは心と体の成長のアンバランスから不安になることもあります。一方、親は今までどおり子ども扱いしてよいのか戸惑うかもしれませんね。このように二次性徴は親も子も不安定になりやすい時期です。だからこそ、親は子どもの成長にうろたえず、どっしりと見守ってあげる心構えが必要です。
ところで、子どもが安心して自分の成長を受け入れるためには、家庭の雰囲気がカギになります。
○家族(両親)がお互いを思いやる気持ちを持っている
○リラックスしてなんでも語り合える
そのような家庭の雰囲気があれば性への偏見も生まれにくくなります。仲良く明るい家庭があれば、子どもは体の変化を自然な成長の過程として前向きにとらえることができるでしょう。