中1夏休みの家庭学習、どうサポートする?【前編】思春期ならではの接し方

まもなく夏休み。中学1年生にとっては中学校に入って初めての長期休暇です。急に大人びて、保護者と距離を置きたがるけれど、まだまだ子どもらしい面もある。夏休みの学習も、本人の自主性に任せたいけれど、黙って見ているのも不安……そう感じていらっしゃる保護者のかたも多いようです。
今回は、大手通信教育会社で20年間以上、中学生の担当として通信添削を行っている高野千明さんに、思春期ならではの接し方、夏休みの家庭学習のサポート法について伺いました。



中1夏休みの家庭学習、どうサポートする?【前編】思春期ならではの接し方


「自分でやりたい」けれど「見ていてほしい」

毎年、中学1年生と接していて強く感じるのは「自立心」です。
「自分一人でやりたい」けれど、実際にはできないことも多い。本当は大人に頼りたくても、心配をかけたくないし、プライドもあるので、素直に気持ちを表現できない。保護者に「知られたくない」ことが増えてくる一方で「わかっていてほしい」という気持ちも強いと思います。自立心は尊重するけれど、ほったらかしでもいけない。そのバランスが難しい時期ですよね。
たとえば夏休みの宿題も、わからないところを教えるなど、保護者のサポートが必要なところはあると思います。しかし、最終的には「この宿題は自分で仕上げたんだ」とご本人が思えるようにしてあげることがいちばん大切です。思春期の子どもたちは、今まさに自立の仕方を学びつつあるのだと思います。

自立が、「自分で一歩前に踏み出すこと」だとすれば、私たちの仕事は、その「後押し」です。自立には、その子らしい長所を見つけて励ましたり、次の課題を見つけてあげたりといったお手伝いが必要だと思いますが、まずは子どもたちが自分の足で第一歩を踏み出してくれなければ、後押しはできません。特に忙しい夏休みでは、自分で時間を見つけて課題を提出してくれた、というその初めの一歩そのものをほめるところから、私たちの仕事は始まります。通信添削の赤ペン指導では1年間同じ子どもを見ていくのですが、夏休みなど、学年途中での成長に驚かされることも多いですね。



ほめるのは難しい? --わずかな筆跡や白紙の答案から読みとれること

ぶっきらぼうで無反応に見えても、思春期の子どもたちの多くのは、大人以上に人の気持ちを敏感に感じとるようです。無理にほめたり、おだてたりしても見透かされてしまう。ただ、子どもを注意深く観察して、「すごいな」「がんばっているな」と感じたことをさりげなく言葉に出すだけで、気持ちは伝わるのではないでしょうか。
赤ペン指導の場合、子どもを知る手がかりは答案だけなのですが、答案を観察するとその子の特性や長所が何かしら見えてきます。丁寧な文字から、きちんと取り組もうという姿勢が伝わってきたり、字もぐちゃぐちゃで正解ではないけれど、式の立て方に数学的センスが見えたりすることもあります。私たちはそれらを見ながら答案から感じたことを、素直にコメントするようにしています。

解答がほとんど書かれておらず、感想欄に「難しかった」「むかつく」とだけ書いてある答案もありますが、むしろ気持ちを吐き出してくれたのはうれしくなります。まったくの白紙の答案もありますが、やる気がないからとも限らず、一生懸命考えたけれど歯が立たなかったか、「まだ習っていないので、赤ペン先生の解説を読んでから勉強したい」のかもしれません。白紙の場合も、ポイントをなるべくていねいに解説して答案を返しています。そうやってやりとりを重ねるうちに、次第に少しずつ解答を書いてきてくれるようになることがあります。ほんのわずかでも、子どもの変化が見えるのは嬉しいことですよね。



反応がなくても、届いている?

思春期の子どもたちは、気持ちを素直に表現することが苦手です。小学生のように、赤ペン先生へのおたよりをたくさん書いてくる子は少なく、感想欄は空欄が多いので、自分のコメントがどれだけ子どもたちに届いているか、わかりにくい面もあります。
それでも以前、最終回である2月号の答案にひと言「ありがとう」と書かれていたことがありました。また、直接はなんのコメントもなかったけれど「赤ペン先生のおたよりを毎月楽しみにしていた」と、アンケートで答えてくれた会員もいました。たとえ白紙の答案でも、こちらに何かを期待して出してくれているのだと思うと、うれしくなります。何かこの子の心に残るものを返してあげたい。答案の上ではその子のいちばんの理解者でありたいと考えています。



中学1年生の添削課題。「式の立て方や筆跡からも、その子らしさが見えてきます。できている点をほめ、課題を明確に示していきます」。



点数そのものに意味はない。どれだけ成長できたかが本当の価値

私たちは、20点の子をいきなり100点にしてあげることはできません。しかし、その子の今のよさを認め、次の課題を示してあげることで、子どもたちは自分から伸びていきます。学び続けることで、20点が30点へ、30点が40点へ、80点、90点へとつながっていく。「20点しか取れなかった」からといって勉強を諦めてしまったら、そこで終わり。点数や順位は成長の「目安」でしかありません。一番になれない子は勉強しなくていいかというと、そうではないと思います。
入試になると競争を意識せざるを得なくなりますが、中1・中2時代こそ、自分から学んで「できなかったことができるようになる」楽しさを知ってほしい。保護者のかたにもぜひ、点数や順位などの結果だけでなく、お子さんの成長そのものを見てあげていただきたいと思います。



勉強も部活もお出かけも --ちょっぴり大人になる夏休み

今の中学生と、保護者のかたの中学生時代とは、違うところも、共通点もありますよね。スマートフォンやパソコンの普及で、交友関係がわかりにくい点が大きな違い。一方で、夏休みといえば部活に明け暮れ、宿題もあって忙しい一方で、お友達とレジャー施設やショッピングに出かけたりお祭りに行ったりなど、行動範囲が広がり、楽しみも増える、といった点は保護者世代と同じだと思います。思春期の子どもたちと接するに当たっては、大人としての視点を持つと同時に、「自分の思春期を思い出してみる」ことも必要かもしれません。
学習上は、中1の夏休みは、学習習慣次第で2学期に差が付く大事な時期です。中1の2学期から勉強が急に難しくなるためです。1日30分でもかまいませんので、学習習慣を崩さないことが大切です。「やろうとしている姿勢をさりげなくほめる」というやり方で、サポートしてあげてはいかがでしょうか。

次回は、Q&A方式で、具体的な夏休みの家庭学習サポート法について、伺います。




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