「無免許」で逮捕・捜査も……教員免許なぜ厳格? ‐渡辺敦司‐

教員免許状を持っていない人が学校で教えていたことをめぐって、刑事事件に発展したことが相次いでニュースになりました。そうでなくても担当する授業に対応した免許を持っていなかったり、教員免許更新制の手続きを怠って失効したりしたまま教壇に立っていたことが発覚したというケースはしばしば見受けられます。学校の先生には免許が必要というのはよく知られていますが、そもそも、なぜこんなに厳格なのでしょうか。

「無免許」で逮捕・捜査も……教員免許なぜ厳格? ‐渡辺敦司‐


まず、事件について振り返っておきましょう。一つ目は8月1日に逮捕された群馬県の公立小学校臨時教諭の男性のケースです。2012(平成24)年10月に山口県内の道路交通法違反罪(無免許運転)に伴って教員免許が失効したにもかかわらず、それを隠して13(同25)年4月に埼玉県秩父市教育委員会に採用され、保護者の問い合わせですぐに発覚して失職。しかしこの男性はやはり失効を隠して、5月に群馬県の採用で公立小学校の臨時教諭となっていました。しかも、過去にも福岡県の公立中学校勤務時代に児童買春・児童ポルノ禁止法違反罪で免許が失効したにもかかわらず山口県で無免許のまま私立高校の非常勤講師をして罰金の略式命令を受けた(その後、免許は山口県教委から再交付)など《常習犯》だったことが発覚し、埼玉県秩父署が異例の逮捕に踏み切ったものです。
もう一つは長野県の私立小中一貫校で2005(平成17)年度の開校以来、中学校の免許しか持たない教員が小学校のクラスを担当したり、小学校の免許しか持たない教員が中学校を担当したりしていたほか、免許を持たない外国人が単独で教えていたなど無免許授業が常態化していたことがわかり、8月21日に長野県警が家宅捜索するまでに発展しました。
いずれも悪質と判断されるレアケースというべきものですが、そうでなくても2013(平成25)年1月には埼玉県の私立高校に派遣された講師の無免許が発覚して卒業間近の3年生が補習授業に追われたり、6月には三重県立の複数の高校で2011(平成23)年度以来の無免許授業が発覚したりするなど、枚挙にいとまがありません。

免許所有を問われない塾にだって立派な先生がいるのに……と思うかたもいるかもしれませんが、学校の先生の仕事(外部のPDFにリンク)は教科の授業を教科書通りに教えるだけでなく、クラスの経営や児童・生徒の指導など、多岐にわたっています。子どもの発達に対する知識も不可欠です。それらをひっくるめて交付されるのが、教員免許状なのです。実際、教職課程では教科の知識だけでなく生徒指導や教育相談、道徳指導などの単位取得が必修化されています。2009(平成21)年度に更新制が導入されたのも、そんな免許に対する信頼を維持するためです。
もちろん免許を持っているだけで「良い先生」であることが保証されるわけではありません。公立学校の教員は法律で「絶えず研究と修養に努めなければならない」(教育公務員特例法)とされるなど、教職は常に職能を向上させる専門職でなければならないとされています。免許は「学び続ける先生」のための最低条件なのです。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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