子どもが人に迷惑をかけているとき[教えて!親野先生]

【質問】

 

親野先生が「親たちは叱りすぎ。叱りすぎると子どもは自信をなくす。叱らないで育てよう」と書いていらっしゃるのを読んで、おっしゃる通りで当てはまることが多いと思いました。でも、子どもが人に迷惑をかけているときはどうしたらよいのでしょうか? そういうときも叱らないほうが良いのでしょうか? (ひかりママ さん:小学2年生女子)


子どもが人に迷惑をかけているとき[教えて!親野先生]

親野先生からのアドバイス

ひかりママさん、拝読いたしました。

そういうとき放っておくのはいけませんね。
先日、私は総合病院の待合室で子どもが走り回っているのにほったらかしのお母さんを見ました。子どもの様子に気付かないはずはないのに、スマートフォンの画面に向かって何やら夢中でした。
病院には病人やけが人がたくさん来ます。お年寄りや妊婦さんも来ますし、小さい子を連れたお母さんも来ます。松葉杖をついている人や、酸素吸入や点滴をしながら歩いている人もいます。
子どもが走り回っていて、そういう人たちにぶつかったらどうなるでしょう? たいへん危険なことはわかりきっています。

確かに、私は「親たちは叱りすぎ。叱りすぎると子どもは自信をなくし、親子関係も冷えてしまう。叱らないで育てよう」と言っています。
でも、それはこのような危険な状態でも何も言わず放置しておきましょうということではまったくありません。周りの人に多大な迷惑をかける状態でも放置しておきましょう、と言っているわけではありません。

私が言っているのは、次のようなことです。

たとえば、子どもが顔を洗っていない、歯を磨き忘れた、片付けをしていない、勉強していない、○○していない、などという普段の生活レベルの問題において、「また○○していない。なんで○○しないの! ○○しなきゃダメでしょ」などの言い方は百害あって一利なしということです。
このような問題がある場合は、子どもが自然にできるように合理的な方法を工夫したり、本人がやる気になるような言葉を工夫したりすることが大切です。

そういうことをしないでおいて、否定的な言い方ばかりしていると、子どもは頭ではわかっても心の窓が閉じてしまって素直に聞く気になれません。
そして、それが積もり積もってくるとだんだん親の愛情を疑うようになります。
同時に、否定的に言われることで自分に自信が持てなくなり、「ぼくってダメな人間だな」と感じるようになります。
つまり、自己肯定感が持てなくなるのです。

以上のことを私は言いたいわけであり、周りの人に迷惑をかけそうなときや何らかの危険な状態があるときにも放置しておきましょうと言いたいわけではありません。

さて、これを確認したうえで私はもう一つ言いたいことがあります。
それは、親が普段から感情的かつ否定的な言い方をしていると、肝心なときに言葉の力を発揮できないということです。
普段から「片付けなきゃダメでしょ」「歯を磨かなきゃダメでしょ」という言い方をしている親は、肝心なときにも「病院では静かにしなきゃダメでしょ」「お店で走っちゃダメでしょ」という言い方をします。

普段から「片付けなきゃダメでしょ」「歯を磨かなきゃダメでしょ」などの言い方で言われている子が、肝心なときに「病院では静かにしなきゃダメでしょ」「お店で走っちゃダメでしょ」という言い方で言われたらどう感じるでしょうか?
子どもたちは「またいつものが始まった」くらいにしか感じません。
普段の「片付けなきゃダメでしょ」が「走っちゃダメでしょ」になっただけですから、いつも叱られているのと違うレベルのことなのだということがわからないのです。
ですから、肝心なときにまったく効き目がありません。
つまり、親の言葉がすり減っていて言葉の力が発揮できないのです。

中にはそうではない親たちもいます。
彼らは、普段から子どもの心に届く言葉をつかうように工夫しています。
「片付けなきゃダメでしょ」というような安易な言葉を乱発するようなことはありません。子どもが片付けやすいような工夫をするのはもちろんのこと、肯定的で穏やかな言い方をしています。
そういう人は、病院で人に迷惑をかけないようにさせるなどの肝心なときにも、子どもの心に届くように言葉を工夫します。
まずは子どもと同じ高さの目線になるように座り、それから目を見ながら話しかけます。
「ここは病気の人や体の調子の悪い人が大勢いるから、静かにしていようね」。
子どもはいつもと違う様子を感じ取り、「これは守らなければ」という気持ちになります。
あるいは、危険を回避するなどの緊急時に親が「○○しちゃダメ」と強く言った場合も、子どもは普段と明らかに違う様子を感じ取るので効き目があります。

私はいろいろな親子を見てきて気付きました。
言葉がすり減ってしまって、発する言葉に力がない親がいます。
その反対に言葉に力がある親もいます。

前者は、一生懸命いろいろなことを言っているのに、子どもの心に肝心なことが何一つ入っていきません。
そういう場合、だいたいにおいて「○○しないと□□だぞ」と罰で子どもをおどして動かすことになります。
その反対に、後者は無理に命令したりおどしたりしなくても子どもが素直に聞いてくれます。

職場でもそうですよね。
AさんとBさんという2人の課長がまったく同じことを言ったとします。
そのとき、Aさんの言うことはみんなよく聞くけれどBさんの言うことは誰も聞かないということが起こります。
親子でも大人同士でも同じです。日頃の言葉が人間同士の信頼関係を決定付け、それによって言葉の力も決まるのです。

皆さんはいかがでしょうか?
あなたの言葉には力がありますか?
それともすり減っていますか?

私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
皆さんに幸多かれとお祈り申し上げます。

「共感力」で決まる!(単行本)親野智可等(著) 講談社 ISBN-10: 4062152797【お知らせ】
こちらの親野先生のコーナーから単行本第三弾が誕生!

大人気のこちらのコーナー、[教えて! 親野先生]が、本になりました。『「共感力」で決まる!』です。子育てが激変する親子関係の新ルールが相談例をもとにわかりやすく提案されています。

プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

おすすめトピックス

子育て・教育Q&A