成長が感じられません。何度言ってもできません[教えて!親野先生]

【質問】

 

5年生にもなるのに成長というものが感じられません。何度言っても決められたことができなくて、やるべきことをやらずイヤなことは後回しという性格で、私は毎日イライラ叱っています。いつになったらできるようになるのかと心配になります。夫は放って

成長が感じられません。何度言ってもできません[教えて!親野先生]

親野先生からのアドバイス

えほうまきさん、拝読いたしました。

子どもがいつまで経っても成長する姿を見せてくれないとき、親としてはもどかしい気持ちになりますよね。本当に、子どもというものはなかなか成長する姿を見せてくれないものです。親としては、永久にこのままではないのかと感じてしまうこともあるでしょう。
でも、ありがたいことに子どもには「自然成長」というものがあります。つまり、そのときはいくら言ってもできなかったことが、何年かしたらいつの間にかできるようになっていたということがよくあるのです。実際に私もそういう例をたくさん見ましたし、いろいろなお母さんたちからそういう話を聞きもしました。

小学生のときには散々口やかましく言っても○○ができなかったのに、いつの間にかできるようになっていた。
いつできるようになったかよく覚えていないけど、気付いたらいつの間にかできていた。
小学生のときのあれはなんだったんだろう。
あんなにうるさく言わなくても、もうちょっと待っていればよかったんだね。

私はこういう話をたくさん聞きました。
低学年ではあいさつどころか「はい」という返事もできなかった子が、5年生になったら児童会の役員に立候補したという例もあります。
私の教えたある小学2年生の男子は、4月には友達と普通に遊べなくて、特に面倒見の良い数人の女子にお世話してもらいながら休み時間を過ごすという状態でした。そのうちにだんだんいろいろな女子と遊べるようになり、3学期には男子の群れの中で普通に遊べるようになりました。
小学生のときはいくら言っても歯を磨いたり髪の毛をとかしたりなどしなかったのに、中学2年生になるころから自分でどんどんやるようになったという男子もいます。

もちろん、成長の理由をはっきり特定することはできません。子どもの心と身体の成長によって、それこそ自然にできるようになるものもあります(仮にこれをAタイプとします)。
あるいは、親があずかり知らぬところで子ども自身に何かのきっかけがあってできるようになるものもあります。たとえば、できる友達を見て「自分もああなりたい」と刺激されたり、あるいは逆に「ああはなりたくない」と感じたり、友達に何か言われて奮起したり、だれかに「すごい」と言われてやる気になったり、本やアニメを見て学んだり、こんなことではいけないと自分で思ったり、などなどきっかけは無数にあり得ます。
また、子どもの場合は、それまでできなかったことができるようになって自信がつき、ほかのこともついでにできるようになるということもよくあります(仮にこれらをBタイプとします)。
Aはまさに自然成長ですが、Bも広い意味での自然成長と考えてよいと思います。なぜなら、親が特にそのために何かしたわけではなく、親から見れば知らないうちにいつの間にか成長していたのですから。
子どもを育てているのは親だけではありません。子どもには、子ども同士の中で刺激を受けて成長する部分がものすごくたくさんあります。そして、先生などの親以外の大人によって育つ部分もたくさんあります。それ以外にも、子どもを取り巻くさまざまな環境のすべてが子どもを育てているのです。

このように、AもBも含めて、子どもの成長には親が知らない「自然成長」がたくさんあります。ですから、ぜひ、待てる親になってください。待てる能力を養うことも親にとって大切なことだと思います。
親からはちっとも成長していないように見えるときでも、内側ではやはり成長しているのです。ただ、それが表面に表れないので外からはずっと同じ状態に見えるだけです。今いるところでじっくり地面を踏み固めながら、次にグンと伸びるための準備をしているのです。踏み固めていない地面に建物を建てればどうなるでしょう?
または、昆虫のさなぎの状態と同じです。
さなぎの状態は外から見るとずっと同じですが、内側ではものすごい変化が起きています。そして、ある日突然さなぎから成虫に羽化します。
人間の成長にもこれと似たところがあります。そして、昆虫にはさなぎの状態が1回しかありませんが、人間には無数にあるのです。各種の能力においても性格や人間性においても、いろいろな面で停滞と成長を繰り返すのが人間です
身長もその一つです。
子どもの身長も少ししか伸びない時期とぐんぐん伸びる時期があります。伸びないときは次に伸びるときのために準備をしているのです。身長が伸びないからと言って、頭と足を引っ張って無理矢理伸ばすことはできません。そんなことをすれば弊害があるだけです。もちろん、そんなことは無理だとみんな知っていますから実行する親はいません。

ところが、各種の能力、性格、人間性などの内面的なことにおいてはけっこうやっている親がいます。内側のことははっきり目に見えないので、なんとなくそれが可能なように思ってしまうのでしょう。
でも、内側のことも無理に伸ばすことはできなくて、伸びる時期と伸びない時期があるのです。親から見ればしょうもない状態だとしても、その子は今そういう状態でいることが必要だからその状態に止まっているのです。内側で十分準備をし地面を踏み固めているのです。無理に頭と足を引っ張ってじゃまするようなことは、しないようにしてほしいと思います。
たとえば、できないからと言って否定的な言い方で叱りつけたり、やたらに口うるさく小言を言ったりするのは、子どもの成長のじゃまをしているのです。でも、もちろん自然成長があるから放っておけばよいということでもありません。ここは勘違いしないでください。忘れ物が多くても自然成長を期待して放っておく、というのは間違いです。そのような放任も成長のためにはなりません。両極端はともにいけません。
無理に身長を伸ばすことはできないからといって、何もしないで子どもを放っておく親はいません。親はみんな子どものために適切な栄養や快適な環境を与え続けます。同じように、能力・性格・人間性など内面の成長のためにもより良い栄養や環境を与えつづけてほしいと思います。
具体的には、子どもができないことが少しでもやりやすくなるように合理的な方法を工夫してあげることが大切です。忘れ物が多いならそれを減らす方法を工夫してあげてください。なかなか宿題に取りかからないなら、取りかかりのハードルを下げる工夫をしてあげてください。

もう一つは、子どもがやる気になるような言葉の工夫をすることも大切です。否定的な言い方をやめて、肯定的な言い方を増やしたり上手にほめてあげたりすることです。
肯定的な言い方ができないときは、せめて単純な言い方にしてください。「さあ片づけしよう」「はい、5分以内に宿題に取りかかるよ。用意ドン」などです。

常に次の3つの違いを意識していてください。
・「いつまで寝てるの。自分で起きなきゃダメでしょ。だらしがない」(否定的な言い方)
・「おはよう。さあ、起きよう。今日も良い天気だよ。気持ち良いよ」(肯定的な言い方)
・「おはよう。さあ起きるよ」(単純な言い方)

「何度言ってもできない」とのご相談ですが、子どもとの生活ではどうせ同じことを何度でも言うことになるのです。どうせ言うなら、お互いに気持ちの良い言い方にしましょう。つまり、肯定的な言い方か単純な言い方のどちらかに徹しましょう。
単純な言い方のときも明るいトーンで言ってください。そうすれば、肯定的な言い方をしたのと同じです。このような、良い言い方で同じことを何千回でも何万回でも言ってあげてください。良い言い方なら、言われるたびに子どもは親の愛情を実感することでしょう。
ただ放っておく放任主義では子どもを伸ばすことはできません。
子どもには、親による具体的な手助けと肯定的で温かい言葉が必要なのです。放任主義だと子どもは親の愛情不足を感じ、愛に飢えるようになります。それは身体面で栄養状態が不足しているのと同じです。

このように、内面にとってのより良い栄養や環境づくりを心がけながら待つということが大切です。
そうしているうちに地面を踏み固めて準備ができて、子どもはグンと伸びるのです。あるいは、本人のやる気スイッチがパチーンと入って大変身するのです。

私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
皆さんに幸多かれとお祈り申し上げます。

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プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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