心の不安から病に!? 子どもの心身症

体の病気のうちストレスなど心理社会的なことが関与して起こるものを「心身症」と呼びます。その症状はさまざまで、心身症なのか単なる体調不良なのか見極めが難しいことも……。また、心身症だとわかっても、対処の仕方に戸惑う親も多いでしょう。今回は子どもの心身症について、小児科医の山根知英子先生に伺いました。



心身症は心に起因する体の病気

人間の体は不快な刺激(ストレス)を受けると、さまざまな反応が起こります。たとえば極度に緊張すると血圧が上がったり、心臓がバクバクしたり……。心と体は互いに深く影響し合っています。
このように心理社会的な問題(ストレス)が元になって、体に不調が現れることもあります。代表的な症状としては腹痛・下痢・頭痛・嘔吐(おうと)など。このような身体的疾患を「心身症」と言います。



心身症の原因となりがちなストレス

○家庭の問題
 ・親子関係
 ・両親の不仲
 ・きょうだい間の葛藤

○学校
 ・いじめ
 ・勉強、テスト
 ・先生、友人関係
 ・部活

また、「良い子」を演じてしまう過剰適応の子どもが突然挫折を経験することで、心身症を発症することもあります。



心身症と診断されるには……

心身症と診断するには、身体的疾患(原因が心理的なものではない病気)でないかどうかを見極めることが必要です。中には心身症と見間違いやすい身体的疾患もあります。親が独自に判断するのではなく、まずは小児科を受診して。必要に応じて検査も行い、不調の原因を調べましょう。心身症を疑われると、専門医(心身症外来、心療内科外来、発達外来など)を紹介されることがあります。子どもの心身症を専門的に診る医療機関はまだ少ないのが現状ですが、大学病院やこども病院などで開設しているケースが多いでしょう。



心身症と見間違いやすい身体的疾患の例
ちょうど子どもが大きなストレスを抱えている時期だと、ときどき手がふるえたり、すぐ興奮したり泣いたりするなどの行動が見られると、周囲は心理的問題だと捉えがちですが、実は脳腫瘍(しゅよう)が原因だったという例もあります。なお脳腫瘍の症状として、頭痛・嘔吐・精神症状や感情の異常をきたす場合があります。


心のケアと体の治療、両方が必要

心身症は心の問題(緊張や不安など)に起因するとはいえ、体に不調が現れているのですから、体の治療も必要です。医師の指示に従って適切な治療を行い、身体的苦痛を取り除いてあげましょう。治療をしても心の問題が解決しなければ症状を繰り返すケースも多いでしょう。しかし、親や医師が症状をしっかり受け止めてあげれば、体の治療を行っただけで心身症自体がよくなることもあります。



親は子どものつらさを受け止めて

心身症と診断されると「そんなのは気の持ちよう」「心が弱いからだ」「我慢がたりない」と受け取る親もいるかもしれません。でも、子どもはストレスを自分の中で処理しきれずに不調を訴えているのです。家庭では子どもがつらい気持ちを吐露できるような雰囲気をつくってあげることが大切です。すぐにストレスの原因を追究したり解決したりしようとせず、まずは子どものつらさを受け止めて。親はあせらず、子どもが心を開くまでゆっくり話を聞いてあげながら、気長に待ちましょう。



子どもの話をゆっくり聞いてあげよう
「学校で何かあったんでしょ」「友達にいじめられたの?」など、問い詰める言い方は逆効果。「何か困ったことがあるのかな?」「相談したいことがあったら言ってごらん」といった調子で、子どもが話したいときに話しやすい雰囲気づくりを試みましょう。


プロフィール



JR東京総合病院小児科部長、きよせの森総合病院小児科勤務を経て、現在は東京都江東区にある心療内科の病院・くじらホスピタル勤務。JR東京総合病院非常勤医師。専門は児童の心身症、思春期の問題。共著『ママが安心する子育て医学事典』(講談社)。

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