思春期の心と親の見守り方(1)

「思春期の嵐」と呼ばれるように、中学生・高校生の子どもの心は大きく揺れ動きます。今までにない子どもの態度や行動に、親が戸惑うこともあるでしょう。親はどのように対応すればよいのか、心理学博士の小野寺敦子先生に伺いました。



思春期の心と親の見守り方(1)


思春期の心の揺れ

思春期の子どもが直面する心の葛藤。その葛藤には次の3つのテーマが挙げられます。

(1)親から自立したい気持ち
精神的に親から自立したいという欲求が子どもに芽生え始めます。そのため、今まで学校のことをよく話してくれていた子が突然無口になって自分の部屋にこもる、反抗的な態度をとる、といった変化が現れることも。親は不安になるでしょうが、こうした子どもの変化は思春期に多いこと。親に対して反抗的な態度をとり、親を批判するようになる、これが思春期の親子関係の大きな特徴です。

(2)身体の発育に対する戸惑い
子どもから大人へと身体が急激に変化し、成熟する時期です。女子は初潮を迎え、体のラインは丸みを帯びてきます。男子は筋肉が発達し、ひげなどの発毛や声変わり、精通が見られます。まだ精神的に幼い部分が多いほど、自分の身体に起きた変化に対する戸惑いは多いでしょう。特に男子はこうした不安を「親に話しづらい」と思う傾向が強く、自分の中にこもりやすくなります。

(3)「自分とはどういう人間か」の自分探し
アイデンティティー確立に向けての入り口が思春期。「自分はどういう人間なのか」「自分は将来どんなことをやりたいのか」「自分の生きている意味は何だろう」といった問題を考え始めます。そして、親とよりも友達との関係を優先させるようになります。そのため、外では友達と元気に遊ぶのに、家に帰るとだんまり無口になる子どもの姿もよく見受けられます。


心理学では「青年期前期」が思春期にあたります
心理学では思春期という言葉をあまり使いません。子どもが大人に向かって成熟していく過程を「青年期」と呼びます。そして高校生ごろまでを青年期前期、それ以降を青年期後期と分けています。
ところで、日本ではこれまで12~13歳ごろから22~23歳ぐらいまでの約10年間を青年期と呼んでいました。ところが最近、青年期に入る年齢は1~2歳早くなり、終わる時期は25~26歳と遅くなってきたと言われています。精神的自立の遅れに加え、経済的自立が難しい社会状況が、青年期を長引かせているようです。


親は子どもへの対応を変える時期

子どもが家庭で無口になったり、反抗的になったりすると、「学校で何かあったの?」「いじめにあっているんじゃないの?」といろいろ聞きたくなるかもしれませんね。しかし、ひとまず不安は胸の内にしまっておいて、しばらく子どもの様子を見守りましょう。親からの自立の過程において、今までのように親にべったり依存するのではなく、どのように接していけばよいのか、子ども自身も模索中なのです。親との距離を置くことによって、子ども自身も孤独になり不安を感じることがありますが、そのぶん、友達との関係を深めていきます。
子どもが親離れを始めたら、親も以前とは違う対応をする必要があります。子どもが確実に成長していると信じて口出し・手出しを控え、子どもの意思を尊重しましょう。子どもも親が対応を変えることで、「自分を認めて理解してくれているんだなー」と感じることができます。
ただし、子どもが間違った方向に進みそうな場合は、軌道修正のアドバイスが必要です。その際、親自身が今一度、「親として譲れない部分」を再確認し、改めて門限、学校へ行くときの服装など、社会のルール、家庭のルールとして「これだけはダメ」ということを子どもに伝えましょう。


近年は第二反抗期を通過しないで大人になる!?
思春期の特徴とも言える「第二反抗期」。ところが最近は目立たなくなってきました。「厳しい親よりも優しい親が増え、反抗する必要がない」という理由もあるでしょうが、「親と子どもの価値観が近くなった」という社会的傾向も影響しているようです。


我が家の絆を見直そう!

親との距離が生まれる時期。だからこそ「居心地の良い家庭」を目指しましょう。家庭の居心地が悪いと、子どもは家を出て友達の家に入り浸るということもありえます。特に重要なのは生きることの基本となる食事。食事は毎日のことだからこそ重要です。できるだけ食事は家族一緒にとりましょう。また、「月に一度は家族で外食」など、家族の絆を深める楽しい習慣を持つのもおすすめです。


プロフィール


小野寺敦子

目白大学人間学部教授。心理学博士。専門は発達心理学、人格心理学。親についての問題やポジティブ心理学などを研究。著書に『手にとるように発達心理学がわかる本』『メゲない人のポジティブ心理学』など。2児の母。

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