3年間の高校生活に満足している子どもは、目標を達成した経験を持つ

 今年も卒業の季節がやって来ました。全国の高校3年生(以下、高3生)の子どもたちは、高校卒業にあたり、高校3年間の生活をどのように振り返っているのでしょうか。
 ここでは、東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所が共同で実施してきた「子どもの生活と学びに関する親子調査」(毎年7~9月実施)、および「高校生活と進路に関する調査」(高校卒業時の3月実施)に、高1生から高3生の卒業時まで継続して回答してくれた高校生を対象に、高校生活の満足度と、満足している子どもたちは高校3年間をどのように過ごしたのかについて、その特徴をみてみます。

1.高校3年間の生活に「満足している」高3生は8.5割

 図1は、高3生の子どもたちに高校生活を振り返ってもらい、高校3年間の生活に「満足している」かどうかを回答してもらったものです。これをみると、「満足している」(「とてもあてはまる」+「まああてはまる」、以下同様)は8.5割で、多くの高3生が「満足」だと感じているようです。一方で、「満足していない」高3生も1.5割います。

2.高校生活に「満足している」子どもは、授業や友だち付き合いに積極的

 では、高校生活に「満足している」高3生にはどのような特徴があるのでしょうか。
 まず、高校生活での活動の積極性との関連をみると(図2)、「学校の授業」のほか、「学校行事」や「友だち付き合い(遊ぶ、話をするなど)」に積極的だった子どもほど、高校生活に「満足している」比率が高いという結果でした(「積極的だった群」は約9割、「積極的でなかった群」は約6~7割)。
 また、「勉強の好き嫌い」との関連をみると(図3)、高1生から高3生にかけて、勉強が「ずっと『嫌い』」の子ども(「満足している」77.4%)に比べて、勉強が「『嫌い』から『好き』に変化」した子ども(86.9%)や「ずっと『好き』」だった子ども(91.2%)のほうが、より高校生活に「満足している」という結果でした。
 高校生にとって、授業に積極的に取り組めるかどうかや、勉強を「好き」になれるかどうか(好奇心や関心を持てるかどうか)と合わせて、友だち付き合いや学校行事などの学校生活に積極的に取り組めるかどうかは、高校生活を充実させるうえで重要な要素だと言えるでしょう。

※「あてはまらない」は「あまりあてはまらない」と「まったくあてはまらない」の合計。無回答・不明は除外している(以下同様)。
※「積極的だった群」は、高校生活でどれくらい積極的に取り組んだかを尋ねた質問に、「とても積極的」「まあ積極的」と回答した子ども、「積極的ではなかった群」は「あまり積極的でない」「まったく積極的でない」と回答した子ども。

※勉強の好き嫌いは、「勉強がどれくらい好き」かを尋ねた質問に、「とても好き」「まあ好き」と回答した子どもを「好き」、「あまり好きではない」「まったく好きではない」を「嫌い」として、2015~2017年(高1生~高3生)の3時点(2年間)の変化をみたもの。「好き」から「嫌い」に変化した子ども、「好き」→「嫌い」→「好き」など変化が不安定な子どもは省略した。

3.高校生活に「満足している」子どもは、目標達成の経験や夢中になった経験を持つ

 次に、高校生活における経験との関連をみると(図4)、「夢中になって時間がたつのを忘れる」「無理だと思うようなことに挑戦する」という経験がある子どもほど、高校生活に「満足している」の比率が高い傾向がありました(「とてもあてはまる」は「経験あり群」が4~5割台、「経験なし群」は2~3割台)。
 また、目標を達成した経験との関連をみると(図5)、「自分で何か目標を設定して達成した」「仲間と協力して目標を達成した」という経験がある子ども(「あてはまる群」)は、そうでない子ども(「あてはまらない群」)に比べて、高校生活に「満足している」比率が高く、大きな差がみられました(「あてはまる群」は9割強、「あてはまらない群」は6割台)。
 高校生活を充実させるうえで、目標を達成する経験は重要であり、その際、自分で設定した目標だけでなく、友だち(仲間)と一緒に目標を決めて達成することも大きな意味を持つと言えるでしょう。

※高1生の夏から高2生の夏までの1年くらいの間に経験したかどうかを尋ねた。

※「あてはまる群」は、高校生活の3年間を振り返って、どれくらいあてはまるかを尋ねた質問に、「とてもあてはまる」「まああてはまる」と回答した子ども、「あてはまらない群」は「あまりあてはまらない」「まったくあてはまらない」と回答した子ども。

 高校時代は子どもを大きく成長させます。高校時代を人生でもっとも充実していた時期だと感じられる保護者の方々も多いのではないでしょうか。学習面で多くのことを学ぶだけではなく、仲間や他者とともにさまざまな経験や挑戦をし、目標を達成した高校3年間は、かけがえのない一生の宝物になるはずです。
 子どもたちには、是非、高校生活に十分満足して卒業し、次の学校に進学したり、社会に踏み出したりしてほしいものです。

<調査データ>
・東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所共同研究「子どもの生活と学びに関する親子調査2015」、同「親子調査2016」、同「親子調査2017」(2015~2017年7~9月実施)
https://berd.benesse.jp/shotouchutou/research/detail1.php?id=5279
・同「高校生活と進路に関する調査2018」(2018年3~4月実施)

プロフィール


橋本尚美

ベネッセ教育総合研究所 研究員
初等中等領域の子ども、保護者、教員を対象とした意識や実態の調査研究を担当している。現在は2015年から毎年実施している小学1年生~高校3年生対象の「親子パネル調査」(東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所共同研究「子どもの生活と学び」研究プロジェクト)の主担当。
これまで担当した主な調査は、「学校教育に対する保護者の意識調査(朝日新聞共同調査)」 (2012年)、「第5回学習指導基本調査」(2010年)、「放課後の生活時間調査」(2008年)、「中学校選択に関する調査」(2007年)など。子どもの文化世界や学びの実態、子どもの成長環境としての社会・学校などに関心を持っている。

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