心身症 思春期に多い症状と対策

体が急速に成長する思春期は、心も不安定になりがち。小学校高学年から中学生にかけて起こりやすい心身症の症状と対策について小児科医の山根知英子先生に伺いました。



家庭内のホッとできる雰囲気が大切

小学校高学年ごろから、子どもの世界も人間関係(友達関係)が複雑になってきます。また子どもから大人へと体の変化が始まり、ホルモンバランスも変わる時期。不安だったり、イライラしたり、子どもの内面は嵐のような荒れ模様です。中には心身症を発症する子どももいるでしょう。
しかし、こうした時期にいろいろ問題を抱えても、帰宅すればホッとできる家庭があることで、思春期の嵐もきっと乗り越えられます。
子どもが最近、何か問題を抱えているなと感じたとき、親は一緒になってうろたえるのでなく、ご家族で協力して「何か困っていることがあれば相談に乗るよ」と伝え、温かく見守ってあげてください。また、体の不調が現れたときは「ストレスのせいよ」ですまさず、きちんと小児科を受診しましょう。


思春期以降は同性の大人が相談相手に
体のことなど同性でないと話しづらいことも出てくる時期。男児の場合は母親だけががんばっても子どもをサポートすることは難しくなります。父親または部活の先生、所属するスポーツクラブのコーチなど、身近な大人の男性が良き相談相手になってあげられるとよいですね。

体格とのアンバランスも影響する「起立性調節障害」

高学年ごろから増える心身症に「起立性調節障害」があります。症状は、自立神経のアンバランスにより、朝目覚めても交感神経の活性化が悪く血圧が上がらず、脳の血流が維持できないため、立ちくらみが起きるというもの。体全体の血流が悪いので疲れやすいのも特徴です。また、思考力の低下や集中力の欠如も見られます。
原因の一つに精神的ストレスがあります。ストレスによって自律神経の働きが乱れ、日中活動しているときに働くはずの交感神経がうまく働かなくなるのです。




起立性調節障害の治療法
自律神経の働きを正常にするためには、早寝早起きといった規則正しい生活を送ることが必要です。また、1日に摂取する塩分や水分は医師の指示に従って。昇圧剤などの薬を処方されることもあります。また、加圧式腹部バンドや圧迫ソックスなどが症状の軽減に役立ちます。そして、精神的ストレスを軽くするための心のケアが必要です。

緊張で下痢・便秘・腹痛に。「過敏性腸症候群」

ストレスを受けると、下痢や便秘、腹痛などおなかの症状が見られる病気を「過敏性腸症候群」と言います。心が繊細で自律神経系が不安定なために大腸の機能が乱れやすいのです。おなかの症状を抑える薬を処方してもらうとともに、ストレスを軽減できるよう心のケアが必要です。また規則正しい生活リズムをつくることも治療に役立ちます。


女子に多い摂食障害

摂食障害には「神経性無食欲症」(いわゆる拒食症)と「神経性過食症」の2種類があります。思春期前後に多く見られるのは、神経性無食欲症です。体重を減らすため食欲があるにもかかわらず食べることを我慢して(時には、ストレスで食べられなくなったのをきっかけに発症することも)、体重が激減するにもかかわらず、太る不安から食べることを拒否します。そのため、栄養失調になり、全身に影響が及び、生理も止まってしまいます。低血糖、心機能への影響、脳の委縮などが生じ、生命を脅かすこともあります。
病気になるきっかけは軽い気持ちで始めたダイエットのことが多いのですが、精神的ストレスも大きく影響しています。


症状の奥にある子どもの気持ちを見てあげて
神経性無食欲症になる子どもは、それまで親の期待通りに過ごしてきた過剰適応の子が多いようです。思春期に直面するさまざまなストレスに耐えられなくなり、成長することを放棄しようとするのです。また親の心配や関心を引きたくて、拒食・過食・嘔吐という行為に出ることも……。家族は症状の奥にある子どもの気持ちに目を向けることが必要です。
一方で病気が進行すると生命を脅かしかねないので、早い時期に小児科や専門医(小児の心身症外来、心療内科、精神科)を受診しましょう。

プロフィール



JR東京総合病院小児科部長、きよせの森総合病院小児科勤務を経て、現在は東京都江東区にある心療内科の病院・くじらホスピタル勤務。JR東京総合病院非常勤医師。専門は児童の心身症、思春期の問題。共著『ママが安心する子育て医学事典』(講談社)。

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