親である私を飛びこえて子どもを叱る同居の祖母【前編】[教えて!親野先生]

または、意見のやり取りはなくて、伝え合っただけで終わるかもしれません。
それでも、伝え合っただけでもかなり意味はあります。
その後のお互いの行動が少しは違ってくるはずです。

このようなことに気を付けていれば、相手を尊重しながら、心を開いて穏やかな話し合いができます。
うまくやれれば、かなりの前進が見られるはずです。

このような時間を持たずに、お互いが不満やストレスを腹に抱え込んだままずっと過ぎてしまう家庭も多いようです。
でも、それはお互いのために、そして何より子どものためになりません。

おじいちゃん・おばあちゃんの方は、お母さん(嫁や娘)がどれだけ嫌だと思っていたか何年もわからずにいたということもあるのです。
つまり、おじいちゃん・おばあちゃんが気が付いていないだけということも多いのです。

少しは気が付いていても、どれだけ嫌かはわからないということもあります。

こういうことは、お互いにあり得るのです。
つまり、お母さん(嫁や娘)のほうが、おじいちゃん・おばあちゃんがどれだけ嫌だと思っていたか何年もわからずにいたということもあるのです。

ですから、このような機会を上手に持つことはとても大切なことです。
その時は気疲れしたり緊張したりするかもしれませんが、そのあとはお互いに歩み寄ることができます。
違いのあるもの同士が一緒に生活していくうえでは、お互いが歩み寄ることが絶対に必要です。
というのも、人間同士の関係である以上、どちらか一方が完全に正しくて他方が完全に間違っているということはほとんどないからです。

もちろんお互いに違いというものはあるのですが、多くの場合、その溝を実際のものより大きくしているのはコミュニケーションの不足なのです。
これは、人間のどんな集団や組織においても同じです。
実に、人間関係のすべての問題は、コミュニケーションの不足から生じてくるのです。

そして、相手の嫌な面が気になる時は、こう考えるといいと思います。
「相手には、やむを得ない歴史と事情があるのだ」と。
私はそう考えるようにしています。

たとえば、今回のご相談にあるような「いつもがみがみ怒ってしまう人」には、そうならざるを得なかった歴史と事情があるのです。
それは、必ずあるのです。
その人が今まで生きてきたなかで、いろいろとつらいことがあったり、自分を守る必要があったりしたのです。
それは、多少不遜(ふそん)な言い方ではありますが、かわいそうなことなのです。

そして、その歴史や事情をこちらが理解することは、なかなかできません。
それは、本人ですら意識していないことが多いのです。
でも、そうならざるを得なかったやむを得ない歴史と事情は、必ずあるのです。
それを頭に入れておいてください。
そうすれば、歴史や事情はわからなくても、「きっと仕方がなかったんだろう」と考えることができます。

そうすれば、相手を許そうという気持ちになることができます。
というより、そうするほかないのです。

そして、これは相手を自分より低く見るということではありません。
なぜなら、「人にはそうならざるを得なかったやむを得ない歴史と事情がある。それは仕方がなかったんだ」とわかった時、同時に「自分にも同じように仕方がない面がたくさんある」ということもわかるからです。
お互い哀れな人間同士ということがわかるわけです。

だいたい人が相手に腹を立てるのは、自分の事情はよくわかっていて、それが最優先になっているからです。
「相手にも事情があるのだろう」ということだけでも頭に入れておけば、かなり違ってくると思います。

それと、何とかわからせて相手を変えてやろうという姿勢はやめたほうがいいということも言えると思います。
というのも、そうやって相手を変えようとしてもそうそう簡単にはいかないからです。

ましてや、相手は自分よりもはるかに年長の人ですから、なおさらです。
相手を変えようという気持ちが強いと、それは相手にわかります。
そうすると向こうは必ず反発してきます。
そして、よけいまずいことになります。

ですから、何とかわからせて相手を変えてやろうという姿勢ではなく、わかり合いたい、そして歩み寄りたいという姿勢が大切なのです。




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プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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