「しつけ」のつもりが「過干渉」に!?[教えて!親野先生]

今週の相談

 

しつけのことで悩んでいます。私は茶わんやはしの持ち方、姿勢、言葉遣いなど日常生活の細かい事を、注意しない日はないのではないか?というぐらい口やかましく注意してしまいます。子どもだから多少のことは、という気持ちも多少はあるのですが、子どもが友達のお家にお邪魔した時などに失礼のないよう、また、社会に出たときに恥ずかしい思いをしないように最低限のしつけをしているつもりです。ですが、私の姉妹2人に「そんなことでいちいち……」と言われます。私が言わなくてもいずれ自分で判断してゆくのを待つのか、基本だと思うしつけを続けてゆくべきかで悩み、しつけと過干渉の境界の難しさを痛感しています。親野先生、しつけと過干渉の境界の目安となるような考え方などお教えいただければうれしいです。よろしくお願い致します。(00000137さん)

 

【親野先生のアドバイス】

00000137さん、拝読いたしました。

昔から今に至るまで、「失礼のないよう」「恥ずかしい思いをしないよう」というモットーで子育てをする親はたくさんいます。似ているものとして、「人に迷惑をかけないよう」「後ろ指を指されないよう」などがあります。
きちんとした性格の、誠実でまじめな親ほどこの傾向が強いようです。自分の生活や仕事においても、よく責任を果たし自分を律する人が多いようです。

でも、私はこれがあまり行きすぎないよう気を付けたほうがいいと思います。行きすぎイコール過干渉です。このようなモットーで子育てをすると、マイナス思考の子育てになってしまいます。そして、マイナス思考の子育てをする人は、どうしてもそれが行きすぎることが多いのです。私は、それを一番心配します。

「正しく持たなければいけない」「姿勢よくしなければいけない」「行儀よくしなければいけない」「静かにしなければいけない」「○○してはいけない」「○○しなければいけない」という言葉が多くなってしまうのです。
そもそも、「失礼がない」「恥ずかしい思いをしない」「人に迷惑をかけない」「後ろ指を指されない」というモットーからしても、「○○ない」という否定語が付いています。

そして、いろいろなことで子どもをきちんとさせようとすると、どうしてもこのような言葉が多くなります。というのも、子どもは、そうそうきちんとなどできないからです。もちろん、きちんとできる子もいますが、できない子のほうが多いのです。そして、きちんとできない子をできるようにさせるのは並大抵のことではありません。


できない子をできるようにさせようとすると、どうしても叱ることが多くなります。子どもは叱られることが多くなると、自分に対して良いイメージを持つことができなくなります。そして、だんだん親の愛情に対する疑いも芽生えてきてしまいます。

「自分はダメな子だ」「何度言われてもできないだらしのない子だ」「お母さんは、もしかしたらぼくのことがあまり好きではないのかもしれない」「良い子でないぼくは、嫌われているのかもしれない」などと感じるようになるのです。叱られることが多いと、どうしてもこうなってしまうのです。いくら親が口で「あなたのことを思って言っているのよ」と言い聞かせても、感情の部分はどうしようもありません。

でも、そもそも、子どものころからそういうことがきちんとできるということが、それほど大切なことでしょうか? 子どものころそういうことができない子が、大人になって大成することも多いのです。意外と子どものころきちんとしていた子が、大人になってこぢんまりしているということも多いのです。およそどんな世界でも、才能豊かな人や天才と言われる人は、意外と子どものころきちんとしていないものです。それどころか、大人になってもきちんとしていない人も多いのです。

私は、子育てでは、二つのことが大切だと思います。
まず一つ目として、子どもが「親に愛されている」「受け入れられている」と実感できるようにしてやることが最優先だと思います。そのようにして、子どもの気持ちが満たされていれば大概のことは大丈夫です。

そして、いい親子関係を作っていくことです。

叱りすぎていると、いい親子関係を保てなくなります。いい親子関係ができていないと、思春期以降は親が何を言っても子どもは聞かなくなります。思春期以前は親が言うことに従っていても、思春期以降まったく聞かなくなってしまうということはよくあることです。それどころか、まったく反対のことをわざとするようになるのです。そうなってしまうと、いくら小さいときに茶わんやはしの持ち方や姿勢や言葉遣いをしつけたとしても何の意味もありません。

いい親子関係ができていれば、たとえ小さいときに茶わんやはしの持ち方や姿勢や言葉遣いが多少いい加減だったとしても大したことはありません。大人になっていざ会社に初出勤というときに、親が「そのおはしの持ち方ではおかしいから、今日から気を付けなよ」と言ってやればいいのです。いい親子関係なら、そのとき子どもは素直に聞いてくれます。そして、大人になったときにその気になれば、そういうものはすぐにでもできるのです。

もう一つは、子どものいいところをほめて伸ばしてやることです。
なかなかきちんとできない子でも、ブロック遊びが大好きかもしれません。そうしたら、それを大いにほめて、ほめてほめてほめまくって伸ばしてやってください。

そして、こう言ってやってください。
「あなたには、いいところがいっぱいあるよ。○○と○○と○○と……」「あなたのいいところ、自分の好きなことをどんどん伸ばしていくといいよ」「そうすると自信をもって楽しく生きていけるよ」「あなたが自分のいいところを伸ばしていくと、いつか周りの人の役にも立てるようになるんだよ」

このようなプラス思考で育てていくと、子どもは明るい気持ちでのびのびと生きていくことができます。そして、その能力を十分に発揮できるようになるのです。そのように育てられた子は、親の愛情をたっぷり感じているので自分の気持ちが満たされています。ですから、人にも優しくなれるのです。そういう人は、人に対して失礼なこともしませんし、人に迷惑をかけることもしません。「失礼なことをしないように」「恥ずかしい思いをしないように」「人に迷惑をかけないように」と言わなくても、自然にそうなるのです。

ご相談のかたは、姉妹2人に「そんなことでいちいち……」と言われているということです。ですから、私は正直少し心配です。でも、それを自分で自覚して相談していらっしゃるのも、また事実です。これから、少し気持ちを大きくもってみるといいのではないでしょうか?

もしどうしても言いたいときは、プラスイメージの言い方をするといいと思います。「おはしの持ち方が上手になってきたね」「前よりうまくなったよ」「いい姿勢が増えたね」「その言葉はいい言葉だね」などなどです。できていないのを見て叱りたくなったときに、ひとまずぐっと我慢するのです。しばらく待って、ほんの少しでもできているところを捕らえてほめるのです。
または、まったくできていなくても、あたかもできているかのように言う方法も有効です。これは、親としてぜひ身に付けてほしいスキルです。

マイナスイメージの言い方は一切しないと決意するといいと思います。私は、若いころそういう決意をして、それからずっと気を付けています。気を付けていると、かなりできるようになるものです。

私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。少しでもご参考になれば幸いです。00000137さん親子に幸多かれとお祈り申し上げます。

プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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