工場見学をどう学びに生かす? ~工場見学の魅力とは?~【後編】

前編では、工場見学の魅力と事前準備について山本俊一郎先生に教えてもらいました。今回は、工場見学に行った際の見学のポイントと、身近なところで楽しめる工場見学についてお聞きします。



こんなところに注目! 工場見学のコツ・観察ポイント

いよいよ工場見学本番。お子さまと一緒に見学に行く際は、ぜひ、以下の注目ポイントをアドバイスしてあげてください。
きちんと観察ができれば、気が付いたポイントをまとめるだけでも自由研究になります。

(1) 生産ラインはいくつあるのか?
生産ライン(※ひとつの商品を効率的に作るための、流れ作業による作業工程のこと)はいくつあるのか、また、見学に行った際に動いているラインの数はいくつあるのか観察してみましょう。

(2) 働いている人の服装はどんなものだろう?
食品工場の場合は衛生面に気を付ける工夫がされていますし、自動車工場などの場合は作業員の身の安全を守る工夫がされているはず。服装のどんな点にその工夫が見られるのか観察してみましょう。さらに、帽子の色や作業着の色がほかの従業員と違う人がいる場合は、その中にリーダーがいるかもしれません。服装によって役割の違いを見分けられるかチェックしてみましょう。

(3) ミスを防ぎ、安全を守るために「見える化」されている工夫はあるか?
工場では生産ラインで異常があった場合、ひと目でわかる工夫がしてあります。ライトが光るようになっているのか、音が鳴るようになっているのか……どんな工夫がされているのか、観察してみましょう。
さらに工場の中の掲示物にも注目! ミスを防ぐための注意事項を標語として貼り出したり、不良品の発生件数を表やグラフにして貼り出したりしていることも。どんなものが貼り出されているのかを見るのも楽しいかもしれません。

また、見学中に疑問に思ったことはメモを取っておいて、あとで案内係の人に質問してみましょう。
質問をするのは緊張してしまうかもしれませんが、真剣に見学していることが伝われば、係の人もうれしいものです。わからないことはぜひ聞いてみてください。



地元でもできる工場見学

有名な企業の大きい工場に見学に行くのも楽しみのひとつですが、わざわざ遠くまで出かけなくても、地元で工場見学できないか調べてみるのもおすすめです。
たとえば、伝統工芸品が作られる工房も、実はものづくりをする工場の一種。工房では、熟練の職人の言葉にできない雰囲気や卓越した技能をより近くで観察できます。また、消費者が直接目にする機会が少ない会社でも、特別な技術を持っていて、その産業の中では欠かせない工場だった……ということも。さらに、なぜその土地でその産業が盛んになったのか、歴史や地理的な理由をまじえて工場の案内係の人が紹介してくれることもあり、それが地元の魅力を発見していくことにもつながります。

ものづくりの現場を知り、身近に感じることは、自分たちが生活する社会への関心が高まるチャンス。楽しい工場見学を学びにも生かせるとよいですね。


プロフィール


山本俊一郎

大阪経済大学経済学部教授。専門は経済地理学。中小零細製造企業が集積する産業地域の持続的発展に関する研究を行う。著書に『工場見学のすすめ』(共著、法律文化社)、『大都市産地の地域優位性』(ナカニシヤ出版)など。

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