2007年「教育」も幕開け! 教育基本法改正で変わる?日本の教育

1947(昭和22)年の制定以来、一度も改正されることのなかった教育基本法(教基法)の改正案が昨年12月15日の参院本会議で可決、成立し、同22日に施行されました。しかし、教基法は文字通り「教育」に関する「基本」を定めるものであり、伊吹文明文部科学大臣も認めるように「法案を通しても仏様を作っただけ」(昨年9月の大臣就任会見)であることも確かです。どのような「魂」を入れていくかが、今年の教育改革の課題になると言えるでしょう。

改正教基法は、その前文に「公共の精神」「豊かな人間性と創造性」などを新たに加えるとともに、教育の目標として「幅広い知識・教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培い、健やかな身体を養う」「伝統と文化をはぐくんできた我が国と郷土を愛し、他国を尊重する」などの5点を明確にしました。また、生涯学習、家庭教育、幼児期の教育、大学、私立学校などについても別に条文を設け、これらを充実させる姿勢を示しています。「学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力」(13条)という条文があるのも、注目されるところです。

教基法はその制定趣旨から、さまざまな教育関係の法律よりも上にあるものと理解されています。従って教基法が改正されれば、それに沿った関係法令の改正が必然的に求められることになります。文部科学省も今後、学校教育法をはじめ30本近い法律改正を検討し、今年の通常国会から順次提出していきたい考えです。「魂」がどのような姿になるのかは、それぞれの改正作業のなかで見えてくることになります。

そうした法改正をさらに具体化させるのが、「教育振興基本計画」(17条)の制定です。これは、おおむね5年間を見とおした教育施策の総合計画を定めるもので、文部科学省は中央教育審議会に諮問して今夏にも答申を得たうえで、予算措置も含めて2008(平成20)年度からスタートさせたい考えです。また、国の計画を受けて、都道府県などでも独自の計画策定が検討されることになります。

さらに「魂」がどう「行動」に現われてくるのかが最も顕著になるのが、学習指導要領の改訂でしょう。ただし文部科学省は当初、今年3月までに新しい指導要領を告示したいと考えて作業を進めていましたが、改正教基法やそれに伴う関連法改正も反映させなければならなくなりました。当初予定では早ければ2010(平成22)年度にも新指導要領に基づいた授業が小学校などで本格的に始まるとみられていましたが、スケジュールが遅れることは必至です。

このように、基本法が改正されれば教育改革が一段落する、というものではありません。文部科学省の担当者自身も「Benesse教育情報サイト」のインタビュー「今なぜ「教育基本法」改正なの? 文部科学省に聞く【1】」で、教基法改正は社会全体で教育を行おうという機運を高めるための「スタートライン」だと指摘しています。現在、第1次報告に向けて審議を本格化させている政府の教育再生会議の状況も含めて、今後の動向に注目していきたいと思います。

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

子育て・教育Q&A