「教育基本法」改正で家庭には何が求められるの? 文部科学省に聞く【3】

今なぜ「教育基本法」改正なの? 文部科学省に聞く【1】「教育基本法」改正で学校はどう変わるの? 文部科学省に聞く【2】に続き、文部科学省大臣官房審議官(大臣官房担当)の板東久美子さんに、家庭教育を中心に「教育基本法」のねらいを聞きました。

国が支援する責任を明確化

——「教育基本法」改正案では、現行法にない「家庭教育」(第10条)を盛り込んでいますが、国が家庭に口出しすることに疑問も根強くあります。

もともと家庭教育は自主的に行われるべきものであり、第10条2項でも「家庭教育の自主性を尊重しつつ」と書いています。ここでは家庭をコントロールしようとしているわけではなく、家庭教育の役割の重要性をうたい、国や地方自治体が家庭教育を支援していく必要性を強調したものなのです。

これまでに国としても、「家庭教育手帳」をはじめとした情報提供や、学習機会の確保に努めてきました。相談体制の充実も今後、必要になってくるでしょう。ただ、家庭教育の支援は行政だけが行うものではありません。福祉分野や各種団体など、さまざまな人たちのかかわり合いのなかで充実させていく必要があります。

家庭を支えるには、地域の役割が重要です。地域に支えられて、親は孤立感や不安を解消し、多くのことを学ぶ。また、子どもの居場所づくりのように、行政がコーディネーター役となって「地域の教育力」を向上させていくことも、間接的な家庭教育支援だと考えています。

改正案第13条には「学校、家庭、地域住民等の相互の連携」も規定しています。これら三者の連携はここ十数年、必要性が叫ばれてきたものですが、まだ地域差が激しいのが現状です。三者の連携を実質的に実現し、家庭教育を支援するためにも、「教育基本法」の改正と教育振興基本計画の策定が必要だと考えています。

——改正案には「幼児期の教育」(第11条)も新設しましたね。

最近の教育改革論議では義務教育の問題が焦点になってきましたが、就学後の教育の基本としても幼児期は極めて重要な時期です。新入生が学校になじめずに騒いだり動き回ったりしてしまう「小1プロブレム」も、幼児期の教育がかかわっているという指摘があります。幼稚園だけでなく保育所や家庭教育も含めて、学校に上がる前の教育を充実させていかなければなりません。そうした観点から、幼児期の教育を振興することの重要性を強調したのです。

社会全体で「教育力」の結集を

——最後に、読者である保護者のかたへメッセージをお願いします。

教育というものは、学校だけで行われるものではありません。家庭や保護者の役割がたいへん重要ですし、地域の役割も大きいものがあります。

「教育基本法」の改正は、家庭や地域も含めた社会全体の教育力を結集しようというものです。それを通して、これからの社会に生きる子どもたちに最大限の教育機会を与え、人間としての基盤づくりを手助けしてあげたい。そのためには学校、家庭、地域社会が連携し合いながらお互いの教育力を高めていくような、いい循環を作っていく必要があります。今回の改正は、そうした教育改革を進めるためのキックオフなのです。子どもの問題をとおして保護者や地域の人たちなどさまざまなプレーヤーが教育に参加していくための改正案だということに理解を深め、関心をもっていただきたいと願っています。


【インタビューを終えて】
もとより教育は、法律を変えればすぐによくなるものではありません。教育振興基本計画はその具体的な手立てとなるものですが、現在は歳出入一体改革のなかで「教育も聖域ではない」という声が一方であがっています。 「教育の憲法」の改正が検討されるなか、教育を大事にしていこうという機運をさらに盛り上げていくことが必要ではないでしょうか。


(参考)
「教育基本法」改正に関する基本資料

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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