小3の息子が宿題になかなか取りかかろうとしません[教えて!親野先生]
小学3年生の息子の宿題についてご相談します。以前は、帰宅して休憩をした後に「一緒にやろう」とやっていましたが、だんだん「やらされている」とふくれっつらをしてやるようになってきました。宿題は子どもの問題と思い直し、子どもに任せるようにしました。一つだけ約束した「ゲームは宿題が終わってから」は守っています。苦手な漢字は土日になっても取りかかろうとせず、私も「子どもの問題」だからと自分に言い聞かせるのですが、だんだんイライラがたまって、「やりなさーい」と大きな声で言ってしまい、落ち込みます。宿題に取りかかるのが遅い子ややらない子に対して、親はどのように対応したらいいでしょうか?(チェリーチーさん)
【親野先生のアドバイス】
チェリーチーさん、拝読いたしました。
「我が子がなかなか宿題をやろうとしない」という悩みですね。多くの親がこれについては悩んでいて、実際私も何回も相談を受けてきました。
「一つだけ約束した『ゲームは宿題が終わってから』は守っています」。この約束が守れているとは、すばらしいです。これは、最もよく破られる約束の一つですからね。
「宿題に取りかかるのが遅い子ややらない子に対して、親はどのように対応したらよいでしょうか?」
では、いろいろとあの手この手を考えてみましょう。
一つ目として、かかる時間をストップウオッチで計るという方法があります。毎日書き取り1ページという宿題があるとしたら、「用意ドン」で始めて、終わるまでの時間を計るのです。そして、それを点数化します。
何分台なら100点で、何分台なら95点などと決めておくのです。それだけだと、字が雑になることが考えられますから、それを防ぐ方法も同時に実施します。字の丁寧さを親が採点して100点満点で点数をつけます。自己採点と親の採点の両方をやるという方法もあります。これで、最高にがんばったときは300点ということになります。
これらを表に書いて記録しておくといいでしょう。何点以上のときには、花丸をつけたりシールをつけたりというようにするといいと思います。ただし、お金で釣るのはやめてください。タイマーや砂時計を使う方法もあります。
二つ目として、親子で勝負するという方法もあります。これは、子どもと同じことを親も一緒にやって、タイムやでき具合を競うというものです。または、別のものをやってもいいのです。たとえば、子どもが計算ドリルをやるのとお母さんが会計簿をつけるのを競うのです。中学年くらいまでなら、十分通用します。
三つ目として、親子で同じ時間に勉強するという方法もあります。子どもが漢字ドリルで勉強している間に、お母さんも大人用の漢字練習帳で練習します。 終わったら、お互いに覚えたかテストするために5問ずつだし合います。
子どもはお母さんが練習した難しい漢字のなかから問題をだすのです。子どもが「バラ」とか「シップウドトウ」などという問題をだしたら、お母さんは「薔薇」とか「疾風怒濤」と書きます。そして、お互いに採点し合います。
子どもは、自分に書けるはずのない難しい漢字の採点を喜んでやってくれます。このように、同じ時間に一緒に勉強するというのは、意外と子どもが喜びます。試してみるといいと思います。
毎日、日記の宿題があるなら、お母さんもその時間には日記を書くというのもいいでしょう。
四つ目として、いつも同じ勉強から始めるようにしておくという方法もあります。昨日は漢字から始めたけど今日は計算から始める、というように日々違うのはよくありません。毎日同じものから始めることで、リズムができて、自然に始められるようになります。しかも、できるだけ単純なことや楽しいことから始めるといいのです。
一番いいのは、タイムを計って「百ます計算」や「80問プリント」をやるというようなものです。単純でしかもゲーム性があって楽しいからです。記録をとっておいて、新記録を目指すようにすると、ますます楽しくなってきます。作文や算数の応用問題のようなものから始めると、はかどらないので嫌になりやすいのです。
五つ目として、帰ってからやるべきことを紙などに書いておくと効果があります。たとえば、次のようなものを書いて目立つところに貼っておきます。または、透明ケースに入れてテーブルや机の上に置いておくのもいいかもしれません。
◆お便りをだして渡す
↓
◆給食セットをだして流しにおく
↓
◆宿題の「百ます計算」をタイムを計ってやる
↓
◆漢字書き取りでお母さんと勝負する
↓
◆そのほかの宿題をやる
↓
◆明日の用意をする
六つ目として、子どもが帰ってきたら、まず何か一つほめてやると効果があります。内容は何でもいいのです。ほめられて気分がよくなると、宿題もスムーズに取りかかれます。
この反対に、帰ってきていきなり叱られたり、「宿題やりなさい」と言われたりすると、誰でもいい気はしないものです。それでは、もともと嫌な宿題に前向きに取り組むはずがありません。会社から帰ってきていきなり嫌なことを言われたら、大人でも嫌な気持ちになります。
子どもも同じです。一日学校で生活するのは、子どもにとってもけっこう疲れるものなのです。
七つ目として、宿題をがんばってやっているところを写真に撮って、大きく引き延ばして目につくところに貼っておくというのも効果があります。そういう写真をいつも目にしていると、自分に対するいいイメージがもてるようになります。
自分は宿題をがんばれる子なのだ、勉強をがんばれる子なのだといういいイメージがだんだん頭のなかにできあがっていくのです。いい点数をとったテストを持って一緒に写っている写真も効果があります。だんだん、「僕は勉強ができるんだ」という気持ちになってくるものです。
これらを参考にしながら、我が子や親の実状に合わせていろいろと具体的な方法を工夫してください。うまくいかないときは、その原因を探ってさらに改善していくのです。工夫を重ねて改善していけば、だんだんうまくいくようになります。大事なのは、親が口で言うだけではなく、子どもがうまく事を運べるようなシステムをつくってやることです。
うまくいかなくても、イライラを子どもにぶつけるのはやめてほしいと思います。うまくいかないのは、親がいいシステムをつくりだせないからです。子どものせいではありません。
いろいろやってもうまくいかないときは、目をつぶることも必要です。それは、私がいつも言っているとおりです。親の工夫といっても、限界ももちろんありますから。そういう場合は、自分からやらなくても、もうガミガミ言うのはやめることです。「はい、今からやりなさいよ」と言って、やらせればいいのです。「やりなさーい!」と叱ったり、「何でやらないの!」と問いつめたりしないことです。
そこには目をつぶってたんたんと事を運べばいいのです。その分、別のところで、つまり、その子の得意なところで、おおいにほめて伸ばしてやってください。その子のいいところをどんどん伸ばしてやって、その子が生き生きと生活できるようにしてやってください。そうしていれば、その子はおおいに輝き始めます。そのすばらしい輝きのなかで、その子の苦手なところは目立たなくなっていきます。
私ができる範囲で、せいいっぱい提案させていただきました。少しでもご参考になれば幸いです。チェリーチーさん親子に幸多かれとお祈り申し上げます。