親野先生に聞いた!これって中だるみ?学期の途中で生活リズムが乱れてきたら気をつけるべきこと
- 育児・子育て
5月も中盤を過ぎると、「最近、気力がわかないみたい」「生活リズムが乱れてきた」「約束がなかなか守れなくて……」など、子どもの気の緩みを気にする声が聞こえてきます。ときには「学校に行きたがらない」「いつもイライラしているみたい」といった心配も。学期の途中に子どもの変化を感じたり、リズムの乱れを感じた時に心がけたいことなどを教育評論家の親野智可等先生にうかがいました。
環境は「意思の力」より影響が大きい
5月は新学年の生活に慣れてくる一方で、気を張っていた4月を乗り越えた疲れも出てくるころです。「しっかりしなさい!」「もっとがんばらないと」などの言葉は、子どもを追い詰めることもあり注意が必要。こんなときこそ、無理をさせず生活や環境を整えてあげる、家庭のかかわりが大切です。
はじめに知っておきたいのは、子どもには大人のような「意思の力」は期待できないということです。大人は経験から「やらなければ大変なことになる」「今やったほうが後々助かる」などと考え、責任感で気力を奮い立たせたり乗り切れたりしますが、子どもは先を見据えて自分をコントロールすることが難しいのです。ですから、子どもの意思の力に期待するのではなく、環境を整えることで自然に取り組めるようになる状況をつくっていきましょう。
意識することのひとつは、睡眠や食事、排便などの生理的な活動の軸、つまり内側からの環境整備。もうひとつは、やるべきことの可視化や取りかかりのハードルを下げる工夫など、外側からの環境整備です。子どもが好きに過ごせる自由な時間も活力に影響するので、十分にとれるように生活全体の時間割も見直してみましょう。
体も心も脳も育てる内側からの環境づくり
健康的でリズムの整った生活は、気分や行動に直結します。睡眠、運動、食事、排便のリズムがきちんと整うようにサポートしましょう。「早く寝なさい」と言い続けるのは意思の力に頼る方法。それより、朝起きたら日光を浴びるようにすることのほうが効果的です。日光は体を覚醒させるセロトニンを発生させ、体内時計を調整します。セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、気分を安定させる働きもあります。起きたらベランダに出て伸びをする、少し散歩するなどしてみましょう。
食事の時間をなるべく固定することも大切です。食事は気持ちや行動を切り替える生活の軸。その時間が不規則だと、ほかの予定も流動的になってしまいます。食事と関係の深い排便習慣も重要です。先ほど紹介したセロトニンは、ほとんどが腸でつくられます。でも、便秘だとセロトニンをつくる働きが低下して、当然分泌量も減ってしまいます。便秘を予防するためには食事内容に気をつけて。また、日中の活動量を増やすことが、食欲、睡眠、排便すべてによい影響を与えます。
睡眠や食事をはじめとする生活習慣は、体や脳を育てる基盤。つまり勉強や運動能力の向上につながるもので、乱れれば成長の妨げにもなります。それを子どもに伝えて、自分のためだと意識できるように促すことも大切でしょう。「夜たっぷり眠るから、集中したり覚えたりできるんだよ」「しっかりした食事をすれば健康になるし、体や脳も成長するよ」など、子どもが「それなら気をつけよう」と思える言葉で、話してみてください。
行動のハードルを下げる外側からの環境づくり
生活リズムが乱れたり、切り替えがうまくいかないときは、基本的な生活の流れを見直してみましょう。そして帰宅後の家庭内での過ごし方を書き出して整理し、家庭内時間割を作ってみてください。視覚化すると、たとえばこの時間に宿題をしないと、寝るまでの時間が足りなくなるといったことがわかりやすくなるのです。また、目に入るたびに無意識に気持ちの準備ができていき、その時間に実行しやすくなります。
視覚化には、時計の絵を描いて「5時 勉強」と指定の時間の針と予定を書き込んだ模擬時計を、本物の時計の横に貼っておく方法もあります。また、「宿題しなさい」ではなく、「とりあえず宿題全部出してみよう」「とりあえず一問解いてみよう」と、小さなとりあえずを積み重ねていくうちにエンジンがかかることもあります。「やる気を出させる」のではなく「やる気がわいてくる」ようにサポートする工夫を考えましょう。
「外側の環境」には、家族の姿も含まれます。子どもが切り替えるタイミングに合わせて「さあ、はじめよう!」と食事を作り始めたり、一緒に机に向かって本を読んだりすると、子どもも背中を押されて行動しやすくなります。また、ゆっくり話を聞いたり、のびのび、リラックスできる時間をつくったりすることで、元気が出てくることも。子どもの様子をよく観察しながら、生活を見直していくといいでしょう。
まとめ & 実践 TIPS
5月の後半になると、慣れや疲れから生活リズムが乱れたり、気持ちの切り替えが難しくなることも。子どもには「意思の力でがんばる」ことを期待せず、自然にやる気になるような働きかけを考えるのがポイント。心と体への影響が大きい生活環境をしっかり整えて、元気に過ごせるようにサポートしましょう。
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