子育ての悩みナンバーワン「整理・整頓」が将来役に立つ力を育てる ベネッセ教育総合研究所が子どもの生活・学びの困りごとに応えるシリーズ(11)
新型コロナウイルス感染症の影響による“非日常”が続き、子どもの生活リズムが乱れたり、学習が進まなかったり…。不安を覚えることが少なくないと思います。そこで、ベネッセ教育総合研究所/チャイルド・リサーチ・ネット(CRNの木村治生主席研究員が、主に小・中学生の子どもを持つ保護者のかたに向けて、10回にわたって子どもたちの生活と学びについてお話しします。
●整理・整頓は子育ての悩みナンバーワン
休校や分散登校などによって子どもが家にいる時間が増え、遊びっぱなしで片づけない様子に、イライラしているかたも多いのではないでしょうか。そこで今回は、掃除や整理・整頓の習慣などについて、お話ししたいと思います。
まず、ご紹介したいデータがあります。2018年に行ったアンケートの結果です。保護者のかたに子育ての悩み・気がかりについて聞いたところ、ほぼすべての学年で「整理・整頓」がナンバーワンになりました。それ以外の生活習慣や学習や進路については学年によって差があるものの、「整理・整頓」はどの学年でも数値が高く、半数以上の保護者のかたが悩んでいます。
では、整理・整頓の習慣を育む上で、保護者のかたはどう関わればいいのでしょうか。まずは、子どもができていないことをすぐに叱らないでください。もともと、子どもというものは移り気です。関心がすぐに変わり、今までやっていたことを放置しがちです。その様子を見ると声を荒げたくなるものですが、「子どもは整理・整頓が苦手なもの」と心得て、ぐっとこらえることが大切です。
●整理・整頓の大切さを伝える
習慣化で大事なのは、子どもに整理・整頓の重要性を伝えるということです。そのいちばんの理由は、健康や衛生上の理由です。整理・整頓には、アレルギーなどの病気を防ぐ目的もあります。居住環境を清潔に保ち、気持ちよくすごせるようにしておくことは、精神衛生上もプラスです。
また、無駄なものがなくて気が散らない、必要なものがすぐに取り出せるといった環境は、勉強に集中するためには不可欠です。さらに、整理・整頓や掃除は、家族全員のためにもなることも伝えたいものです。子どもが散らかしたものを片づけなくて済めば、保護者のかたの負担も軽くなります。整理・整頓や掃除ができたときは、家族も助かることを伝えて、ほめてあげてください。ゴミ出しでも風呂掃除でも、遊んだあとの片づけでも、それをやることには意味があります。子どもがその必要性を理解し、やった成果がわかることが、次のやる気につながります。
●整理・整頓は生きる力になる
最後に、お子さまにぜひ伝えていただきたいのは、整理・整頓が、将来役に立つ力を育てるということです。整理・整頓をするには、何をどのような順番で片づけるのが効果的か、どう配置すると便利なのか、といった段取りを考えないといけません。また、「まだ使うかな?」といったことをイメージしたり、何を捨てるかを判断したりしなければなりません。こうした身近な生活課題の解決は、思考力や判断力を養う“アクティブラーニング”の機会でもあるのです。
比較的時間に余裕がある今は、整理・整頓のチャンスといえます。保護者のかたもいっしょに、荷物の整理や部屋の模様替えなどに取り組むのもいいかもしれません。ただし、今はゴミの量が増えていて、処理能力を超えている自治体もあるようです。多量のごみを出す際には、自治体のホームページなどで注意点をきちんと確認してみてくださいね。
上記記事はベネッセ教育総合研究所が運営するチャイルド・リサーチ・ネット(CRN)に掲載した動画をもとに作成したものです。
チャイルド・リサーチ・ネット(CRN)は「子どもは未来である」という理念を掲げ学際的、国際的な活動を推進する、インターネット上の「子ども学」研究所です。ベネッセ教育総合研究所の支援のもと運営されています。