子育て情報が多すぎて振り回される[教えて!親野先生]
教育評論家の親野智可等先生が、保護者からの質問にお答えします。
【質問】
初めての子育てで手探り状態の中、ネット、雑誌、本などの情報を参考にしています。でも、情報が多すぎたり相反する情報もあったりで、迷ってしまいます。結局は自分で決めるしかないとは思うのですが、何か判断基準のようなものはありますか?
パウダー さん(年長女子)
【親野先生のアドバイス】
拝読しました。
本当に、現代は子育てに限らず情報が多いですね。
特にスマホが普及してからは爆発的に増えたと思います。
私は情報が多いことは基本的にはよいことだし、ありがたいことだと思います。
情報が少なかったころを思い浮かべてみれば、そのありがたみがわかります。
例えば、100年前だったら、子育て情報のソースとしてどんなものがあったでしょうか?
自分の親と舅・姑の影響が圧倒的に大きく、続いて井戸端会議で得た情報だったと思います。
その多くは単なる思い込みと迷信、あるいは因習に満ちた習慣などだったはずです。
専門家の豊かな経験をまとめた本とか、児童心理学者が何年もかけて調査して、何百・何千人ものデータをもとにして明らかにした知見とか、そういったものはなかったわけです。
子育てに限らず、現代はこういった情報が簡単に得られるわけですから、ある意味ありがたい時代です。
ただし、情報が多くなればなるほど玉石混淆になることも避けられません。
子育て情報にしても、素晴らしい知見に満ちたものもあれば、あり得ないほどレベルの低いものもあります。
ですから、見極める目も必要です。
現代人はテレビによく出る有名人の言うことを、盲目的に信じてしまう傾向がありますが、これは要注意です。
「有名だから正しい」というわけではない、ということを肝に銘じる必要があります。
また、現代人は極論を好む傾向もあるようですが、これも要注意です。
どんな分野でも、極論を明確かつ断定的に語る人は魅力的であり、見ていてスカッとします。
でも、それは受け狙いで言っていることが多く、実は本人もそう思っていないということも多いのではないでしょうか?
ですから、バランスや中庸を失った極論には気をつけた方がいいです。
次に、臨床例が少なすぎる情報も要注意です。
例えば、個人の子育て経験を本にして、その内容が極論かつ過激だったりすると、メディアが飛びついて話題になります。
それで、大いに売れるということが時々起こります。
でも、そこにあるのは「ある家庭のほんの数人の子ども」の臨床例に過ぎません。
その家庭ではうまくいったかも知れませんが、それを読んで真似してもうまくいくとは限りません。
親の個性も子どもの個性もまったく違うのですから、当然と言えば当然です。
もちろん、中には素晴らしいものもあります。
著者が自分の経験だけを元に盲目的に書いたものではなく、児童心理学や教育心理学の知見を取り入れて、自分の経験を客観的かつ批判的に振り返りつつ書いたものの中にはよいものがあります。
次に、常に自分自身とわが子の個性、資質、向き不向きなどを意識していることも大切です。
特に、わが子を日頃からよく観察することは最も重要です。
よく観察していれば、例えば子どもがテレビのダンスシーンを見ながら身体をよく動かしていることに気づくかもしれません。
すると、習い事としてリトミックやダンスが向いているかもしれないと気づくことになります。
でも、それに気づかないままでいると、ネットやテレビで「子どもの習い事で将棋が大流行」という情報が流れてきたとき、すぐそれに飛びついてしまうかもしれません。
そして、向き不向きも考えずに子どもにやらせて、そのあげくに親子ともども苦しくなるということになってしまいます。
以上のことに気をつけながら、情報を見極める目を持つようにしましょう。
その上で、積極的に情報を取りに行くようにすれば、大いに役立てることができると思います。
ご相談者のパウダーさんは「手探り状態」で「迷ってしまいます」とのことですが、迷う人はかえって健全なのだと思います。
自分の考えに凝り固まって迷わない人こそ、危険なのではないでしょうか?
私ができる範囲で、精一杯提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
みなさんに幸多かれとお祈り申し上げます。