立体的な図形の理解に時間がかかります[中学受験合格言コラム]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。

※小泉さんへのご質問は、不定期にBenesse教育情報サイトメンバー向けのメールマガジン「教育情報サイト通信」で募集をいたします(随時の受付は行っておりません)。


【質問】

立体的な図形の理解に時間がかかります。さいころや箱などを実際に見ながらだと、イメージがわくようです。簡単な計算はほぼ間違いなく解くことができます。

相談者:小3女子(神経質・強気なタイプ)のお母さま



【小泉先生のアドバイス】


平面⇔立体の作業の中から身に付ける


●なぜイメージがわかないのか
さいころや箱などを実際に見ながらならイメージがわくのに、平面の図からは立体をイメージできない。こうした悩みは、男の子よりも女の子に多いように思います。立体図形を出題する女子校が上位校に多いのも、立体図形を苦手とする子どもが多いからかもしれません。ただし、こういった空間把握能力に男女差はないという研究もあるようです。

さて、立体図形に強くなる、すなわち空間認識能力を高めるには、立体図形に慣れ親しむことが大切です。特に、お子さまはまだ3年生ですから、入試本番までまだ十分に時間があります。ペーパー上での図形の勉強だけではなく、日常的な遊びも含めて、立体を身近に感じる作業をされるとよいでしょう。

たとえば、飲み終えた牛乳パックを展開してみましょう(ナイフやハサミの取り扱いに注意しましょう)。これは、立体を平面にする作業ですね。飲み口の部分の折り方が、面白いかもしれません。あるいは、立方体のお豆腐をいろいろなところから切ってみましょう。切り口がどんな形になるか、まずは想像して実際に確かめてみます。これは、立体の断面を考察する作業です。こうした展開図や断面図は、実際の入試にもよく出てきます。実際に体験してみることで、立体図形に対する理解が深まることと思います。なお、切り刻んだお豆腐は、もちろんみそ汁の具などにして、召しあがってください。

●立体図形の絵を描く
立体図形の絵を描いてみるのもよいでしょう。これは、三次元のものを二次元にする作業です。お手本は、問題集などにある絵や図を参考にするとよいでしょう。絵画を描くのではないので、実線、波線を使い分けて見えない線も図に描きましょう。最初のうちは不格好な図になってしまうかもしれませんが、何回か描いていくうちに、平面に描いた図が立体に見えてくると思います。たとえば立方体を描く場合、正面を向いている正方形以外は、長さを短くしないと立方体らしく見えません。この辺りに最初はとまどうかもしれませんが、要領がわかれば上手に描けるようになってきます。

立方体や直方体がバランスよく描けるようになったら、正四面体や正八面体、あるいは円すいなどを描いてみましょう。正しい図を描くには、頭の中のイメージがしっかりしていないと描けるものではありません。描けなければ、先ほど述べたように問題集の図を参考にして描き慣れてゆけばよいでしょう。

●絵を立体化してみる
平面を立体化してみるのもよいでしょう。動物の写真集か何かから、たとえば馬の絵を選んで、紙粘土などでできるだけ忠実に立体的に再現してみます。1枚の写真だけではわかりづらければ、いろいろな方向からの写真があればさらによいでしょう。馬の粘土像を作るわけですが、これは平面を立体化する作業になります。最初はなかなかそれらしい像は作れないと思いますが、これも慣れてくると小学生でもかなり上手になると思います。

動物などが難しいのであれば、アニメやマンガなどのキャラクターなどでもよいでしょう。特に、低学年に親しまれているキャラクターは単純な形のものが多いので、一生懸命作れば、それらしい人形になります。紙粘土なら色も塗れると思いますので、オリジナルのフィギュアができあがります。これなどはかなり楽しい勉強になると思いますが、いかがでしょうか。

●作業の中で身に付く空間認識能力
以上、立体を展開したり、立体の絵を描いてみたり、さらには平面を立体化してみました。この二次元⇔三次元の作業を繰り返すことで、少しずつ空間を認識する能力が高まってくると思います。実際、このような能力は遊びや作業を通して身に付いていくものです。そして、手を十分に動かして絵を描いたり、物を作ったりすることで、想像力や発想力などの考える力も同時に身に付いていきます。なかなか獲得できない能力ですから、今のうちにこうした体験をさせてあげるとよいでしょう。もちろん、ペーパー上の立体図形の認識も上手にできるようになると思います。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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