【銀座の老舗理容室店長に聞く5】店長業の醍醐味——長く1つの場所で働くことで、近所の頼れる兄貴的存在に!

最近は大学を卒業したあとも「手に職をつけたい」ということで理容や美容の専門学校に通い、会社員でも専門学校に通って職人の道に進む人が増えているようです。理容師や美容師は技術ももちろん必要ですが、人と話すコミュニケーション能力を必要とされる専門職。そこで、銀座で100年続く老舗理容室の店長、佐々木岳史さんに理容室・美容室の仕事についてお話を伺いました。


「理容師」だけでなく「店長」という立場の苦労

——店長業についてお伺いしたいのですが、その醍醐味や苦労などについてお話していただけますか?

 

別の店で働いているときは、技術がうまくなりたいということだけが自分の目標のすべてでした。でも、今は店長という立場で経営面も考えないといけませんから、売上を見ながらコスト管理などもしなくてはいけません。薬液などを仕入れるコストも、他のお店で働いているときは気にしていませんでした。練習の時はお店から提供してもらう形になっていましたので。とにかく経営面で苦労するということが一番ですね。

 

 

長く1つの場所で働き続けるということ

——100年も続く理容室で代々働くというと、地元に密着しているお店という印象を抱きます。その街の変化もずっと見続けることになるかと思いますが、それと店長業にリンクしていることってありますか?

 

私の店は、今の銀座に移ってから今年でちょうど100年です。会話でも「あそこに新しいビルを建てていますね」、みたいなのはありますよ。刻々と変わる街並みについて話をして、昔話に花を咲かせることが楽しくて来店される方もいらっしゃいます。私の店は男性客が多いのですが、皆さん、落ち着いた空間を求めることを重視しているようです。癒しを求める人が多いのでリラックスできる空間作りを、お店のポリシーとして心がけています。やはり、店長という重責の1つに、そういった理念を守るということもあるかと思います。ですので、昔話をすることで、安らいだ気持ちになってもらうということも、大事にしたいですね。

 

長く1つの場所で働くことについてですが、代々家族ぐるみのお付き合いができるのは魅力的だと思っています。銀座という場所で、住宅街ではありませんが、やはり昔から住んでいて、私のお店に代々来てくれるお客さまも多いです。お客さまが自分のお子さまを連れてくることはよくあります。私の親が髪をカットしていたお客さまがいて、その方のお子さまの七五三用の髪のセットを私がするなんていうこともありました。

 

 

子どもたちの成長を肌で感じる、頼れる兄貴的存在に

——家族ぐるみでお付き合いできるということは、頼れる兄貴のように佐々木店長のことを思っているお客さまもいそうですね。

 

店長になって9年が経ちました。ここで働きはじめた当時に高校生だった子どもが社会人になっていたり、そのあと転職して新しい道を歩んでいたりする人もいます。付き合いが長くなるので、お客さまの成長も見守れるのはうれしいですね。中学生や高校生が「学校でこんなこと困っています」みたいな相談もたまにありますよ。

 

最近の子はみんな頭がいいですね。「将来こうしたい」という目標があったり、世間のニュースに対して自分なりの意見を持っていたり。昔の出来事もインターネットを見て知っているみたいですごく詳しいので、まるで同級生と会話しているような感覚になります。世間では「ゆとり」とか言われているかもしれないですけど、今の中学生や高校生は知識も豊富ですし、受け答えもしっかりしていて、私の印象だとすごく大人だと思います。

 

いろいろな世代の人とかかわっていけることは、私にとっても刺激的です。長く1つの場所で働き続けることで、これからも家族ぐるみのお付き合いを何世代にもわたって続けていきたいですね。

 

 


取材:Hair Salon Sasaki

http://www.hairsalon-sasaki.jp/

 

関連記事:「美容師、理容師ってどんな職業? どうすればなれる?」

http://benesse.jp/juken/201502/20150225-7.html

子育て・教育Q&A