算数の文章問題に慣れさせるのに読書は有効でしょうか[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


【質問】

計算はできますが、文章力がないため文章問題に悪戦苦闘しています。じっくり考えれば解けるのですが、途中で考えることが嫌になるようです。読書することにより、文章に慣れてくれればと思っています。

相談者:小6女子(大ざっぱなタイプ)のお母さま



【回答】

3行問題で苦手を克服


■読書で文章に慣れるだけでは文章問題は上達しない

読書で文章に慣れるだけでは、算数の文章問題は上達しません。なぜなら、役に立つ部分もありますが、算数には特有の表現や考え方などが多いからです。それでは、算数の文章題が苦手な子どもたちが、どこでつまずくのかをレベルごとに考えていきましょう。

まず、最初のレベルのつまずきとしては、たとえば「A君とB君はそれぞれ毎分60 m、80 mの速さで(←AくんとBくんのどっちが毎分60m?)」「湖の周りをある地点から(←ある地点とはどこ?)」「ポストの前を(←ポストの前とは?投函口が向いているほうか?)」というようなところです。一見、何の問題もない簡単な表現ですが、文章題が苦手な子どもたちはこのような表現で立ち止まって考え込んでしまいます。
もちろん、「このような場合は、Aくんが毎分60 mでBくんが毎分80 mだよ」などと説明してあげれば、すぐに理解できると思います。しかし、少なくとも「こんなところで」と思えるところでつまずいてしまうことがあることを認識しておくべきでしょう。案外、この辺りでつまずいている子どもは少なくないのです。


■文章問題を理解するには、その単元特有の表現を習得する必要もある

次に、その単元特有の表現でのつまずきです。たとえば、通過算を解く時には「(A列車がB列車に)追い付く」「追い越す」「すれ違う」というのが正確にどのようなことを示しているかを理解しなければなりません。また、損益算では「原価」「定価」「利益」などが理解できていなければ、正しい数式を導くことはできないでしょう。
こうした各単元の特有の言葉は、小学生が日常的に使うわけではありませんし、一般的な読書でもなかなか得られない表現です。やはり、単元ごとに出てくる表現が何を意味するか、一つひとつ理解する必要があります。

ところで中学受験では、国算理社の4教科で受験する場合でも、算数を勉強する時間が他に比べて圧倒的に多いのが現状です。こうした状況は、算数で学ぶべき単元や単元ごとの表現など、覚えるべき内容が多いことにその原因のひとつがあると思います。しかも、そうした知識は、前述のように学校の授業や日常生活ではなかなかふれることが少ないのでさらに厄介なのです。


問題文に表れない「条件」「公式」「考え方」なども必要

次のつまずきは、問題文に表れない「条件」「公式」「考え方」などを知らない、あるいは思い付かないということです。全体の解法の流れを大ざっぱにとらえた場合、国語は「分解して問題を解いていく」という意味合いが強いのに対して、算数は「組み立てて解いていく」という感じが強いと思います。もちろん算数の場合でも、問題文を読んで、何が「条件」で、何が「求めるもの」なのかを見つけることは必要です。
こうした作業は「分解」といえますが、そんなに難しいものではありません。難しくなるのはそれからで、こうした「条件」の他に、問題文に隠れている条件を見つけたり、問題文の外にある必要事項(単元特有の公式、定理など)を問題文から読み取って思いついたりする必要があります。さらに、こうした条件など組み合わせて数式を導くには、各単元特有の「考え方(解き方)」を思い出す必要もあります。たとえば植木算では、「木の本数=間の数+1(両はしにも植える場合)」といった知識を使わなければ、スムーズに数式は立てられないでしょう。


■算数の実力は問題量に比例する

このように、算数の文章題を読んで、理解し、さらにはそこから数式を立てて答えを導くまでには、多くの困難が待ち受けています。ですから、残念ながら算数の文章題が苦手だからといっても、読書をするだけでは文章題を得意にすることはできないでしょう。

それでは、どうしたらこうした文章題の苦手を克服できるのでしょうか? そのためには何といっても、「3行問題」とか「1行問題」などと呼ばれている、各単元の要素のみで解ける、単純な問題を多くこなすことです。こうした問題の文章は短いですが、各単元の解き方や特有の表現が詰まっています。解き方もシンプルな場合が多いでしょうから、参考書の解説をしっかり読めば初めて学習する単元でも理解できると思います。もちろん、先生に教えてもらえるようであればさらに理解は早いでしょう。

こうした問題を数多く解くことにより、問題文につまずくことなく読み、理解し、必要な定理・公式・考え方を思い出し、数式にまとめて答えを導き出すことができるようになります。算数の実力は、問題量に比例するといわれています。基本問題をスラスラ解けるようになったら、次は練習問題に挑戦しましょう。最後には、入試問題を解ける力が培われていくと思います。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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