読書は量より「質」!家庭での「読解力」の伸ばし方

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文章を読んで、その内容・意味を理解する「読解力」。
すべての教科の土台になるこの力を、どうしたら高めていくことができるのでしょうか。「読む」ことを長年研究テーマにしている東京学芸大学 准教授の犬塚美輪先生にお話を伺いました。

この記事のポイント

「読解力」はなぜ今注目されているのか

犬塚先生:少し前までは、「読解力」と言えば、「日本語だから、読めば分かるもの」という反応が多かったのですが、最近は「読解力は、もう少し奥深い、教育の対象になるもの」という意識に世間が少しずつ変わってきていると感じます。
こうした変化は、OECD(経済協力開発機構)が3年に一度、「生徒の学習到達度調査」を世界各国で実施している調査(通称「PISA」)やリーディングスキルテキストの開発についての話や報道が影響して「読解力」が注目されるようになったことに関わっているようです。
読解力の有無や低下について、さまざまなところで議論されるようになりましたが、「読解力とは?」という質問をすると、人それぞれに解釈が違うことも分かってきました。

大事な3つの読解力とは

私自身は、読解力にはいくつかの種類があると考えており、大きくは3つ、大事な読解力があると思います。

第一の読解力—「学力としての読解力」

「教科書を読んで、何が書いてあるか理解できる」「教科書を読んで、内容についてまとめることができる」。
こういった「文章を読んで、その内容を頭で再現できる読解力」が、第一の読解力であり、「学力としての読解力」です。
日常的にも、書いてあることを読んで、それが何を表しているのか、どういった条件なのかなどを読み解く時などに使われる読解力です。

第二の読解力-「枠を広げるための読解力」

「大半の文章はよく分からなかったけれど、この一文だけは強烈に印象に残っている」—そういった読書体験は、誰にでもあると思います。
これが第二の読解力であり、「自分の枠を広げるための読解力」です。
第一の読解力のように、必ずしも正確に内容を頭で再現できなくても、それをきっかけにして、ものを見る構えができるような読解力です。

第三の読解力—「批判的な読解力」

広い意味で、メディアリテラシーにも関係してくる読解力です。
第一の読解力は基本的に書いてあることが正しくて、それを頭の中で正確に再現する読解力でした。それに対してこの第三の読解力は、文章の中だけを読んでいたら、整合性が取れているかもしれないけれど、書いてあることが本当かどうかを考えながら読む、「批判的読解力」です。
勘を働かせながら読み、時には「受け入れない」ことも必要な読解力になります。

この3つの読解力は、どれも大事です。

第一の読解力がないと、たとえば公的な補助金の申請を自分でしなくてはいけない時に、条件を正確に読み解けずに申請自体ができないということになるかもしれません。
「小説の一文に気持ちが救われた」という時は、第二の読解力が関わってきます。また、第三の読解力を持っていないと、情報があふれる昨今、デマやフェイクニュースにだまされてしまうかもしれません。

おうちのかたが、「うちの子は本をあまり読まないし、読解力がなくて……」という話をされる時に、どの読解力の話をしているのか。第一の読解力のように正確に、教科書が読めるようになることなのか、それとも第二の読解力のように、読んで感動したり、世界が広がったりすることを願う読解力なのか。
「読解力がない」と一言で言っても、その想像している「読解力」が求めるものには違いがあるのです。

家庭でできる「読解力」の伸ばし方

3つの読解力の話をしましたが、基盤として共通する部分もあります。
それは、同じように文字を読み取り、単語の意味を理解し、単語と単語を関係づけて、全体を読み解いていくという基本的なプロセスです。
また、全ての読解力に共通する《伸ばし方》もあります。それは、「読む」ことが面白い、楽しいと感じられる体験をすることだと思います。

先ほどPISAについて紹介しましたが、PISAの調査からは読書と読解力には関連性があることが示されています。
ここで言う「読書」とは、「読んだ本の量」ではなく、「読書への熱中度」であり、それが高い子どもほど、読解力テストの成績が良いということが分かっています。
「読書への熱中度」とは、「読書に対する態度」「読む本の種類」「楽しみのためにどのくらい本を読むか」を総合的に評価したものです。たくさん読めばいいというわけではなく、「読む時の態度」が重要ということになりますね。
ですから、読解力をつけるために、おうちのかたが、「たくさん読みなさい」と子どもに読書を強要することは、読解力にはプラスにはなりません。それよりも、読むことが楽しいという気持ちを育てるために、好きな本を好きな人と一緒に読んだり、楽しんだりする体験が大事なのです。

子どもがあまり本を読まないというご家庭は、余暇の過ごし方を見直してもいいかもしれません。テレビや動画は刺激が強く面白いですが、情報量も多く、ずっと見ていると疲れてしまうので、ある程度おうちのかたがコントロールする必要があるでしょう。
その時に、「動画はあと何本までだから、次はこの本読んでみる?」といった感じに、楽しい選択肢として「本を読む」ということを位置づけていくといいと思います。
親子で一緒に読んで、あとで感想を言い合うのも読むことを楽しむきっかけになるので、オススメです。

まとめ & 実践 TIPS

文章を読んで内容を理解するだけでなく、目的によって「読解力」には種類があることが分かりました。また、読書「量」よりも、どれだけ楽しく読めるかという読書の「質」が読解力には大事なようです。

プロフィール


犬塚美輪

東京学芸大学准教授。
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。
主な著書に『論理的読み書きの理論と実践 知識基盤社会を生きる力の育成に向けて』(北大路書房・共著)、『生きる力を身につける 14歳からの読解力教室』(笠間書院)などがある。

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