ぐんと力を伸ばす夏休み [中学受験 5年生]

保護者の役割は、成長に応じてベストのタイミングで働きかけ、環境を整えていくこと。5年生の夏休みの学習指導について取り上げます。



■夏休みの中盤~後半は苦手克服を中心に

5年生の2学期以降、学習内容は急に難しくなります。特に積み上げ教科である算数は、7月までの学習内容が今後の基礎となります。夏休みの中盤~後半、特に夏期講習のないお盆休み中はお子さまの苦手な単元のみに絞り込み、しっかりと弱点克服に取り組んでください。

苦手克服というと算数ばかりに時間をかけがちですが、国・理・社の苦手克服にも取り組みましょう。理・社は全単元において8割程度得点できないと、難関校の合格は難しくなりますので、「てんびんはわからない」「地理は嫌い」といった「食わず嫌い」をなくしておく必要があります。苦手な時代を扱った歴史マンガや、解説のわかりやすい科学マンガを読ませるだけでも食わず嫌い解消に役立ちます。「好き」とはいわないまでも、嫌いな単元のない状態を目標としましょう。

夏休みの終盤は、予習を中心に。2学期のカリキュラムのうち、難しそうな単元の例題や基本問題だけ、先取りしてやっておくと自信がつきます。



■心も体も、ひと回大きくなる夏に!

5年生は、肉体的にも、精神的にも成長の著しい時期です。認知力が上がるので、理解の妨げとなっている苦手な単元や食わず嫌いをなくすと、ぐんと学力が伸びます。また、体が成長し、体力が付いてくると同時に、難しい勉強にも耐えられる集中力も付いてきます。また、精神的に大人になれば「保護者の言うことを素直に聞く」だけではなく、「納得すれば自主的に動く」ようになります。心と体は、ほぼ同時に育っていくのです。

ですから、学力の器をひと回り大きくするには、体をきちんと使うことも必要です。保護者のかたと一緒にストレッチやウォーキングをするだけで、ずいぶん違うのです。夏期講習や宿題で忙しい中、週末だけでも近場の海や山へ出かけ、思いきり遊ばせるのもメリハリが付いてよいですね。中学受験をめざす仲間の家族と一緒に、涼しい自然の中に出かけ、避暑を兼ねて一緒に勉強するといったことができれば理想的です。また、全寮制中高一貫校の宿泊型体験学習を利用するという手もあります。子どもどうしの横のつながりは、精神的な成長を促します。
また、前回ふれたように、サイエンスツアーやワークショップなど、子どもの尊敬する人や、
一流の人とふれ合えるイベントに参加することも、成長を促すよい刺激になります。



■5年生の夏は保護者の天王山

このように、心と体の成長と学力は切り離せない関係にありますので、子どもを押さえ付けて勉強に向かわせるのは、精神的な成長を妨げることになり、逆効果です。勉強の開始時間とやることをお子さまと一緒に決め、自主的に勉強に向かえるよう、タイムキーパーをしてあげてください。人の集中力は15分程度しか続かないといわれていますので、やることは小分けにして上手に休憩を取るのがポイントです。たとえば、夏期講習で3時間勉強してきた子どもに、さらにぶっ通しで3時間勉強させるのは無理でしょう。しかし、朝食前に30分、朝食後の9時から11時まで、夕食後の7時半から9時までというふうに小分けにすれば、さほど無理なくできます。

コーチ役は大変だと思いますが、実はお子さまの勉強の面倒をしっかり見られるのは、ほとんどの保護者のかたにとって、この夏が最後です。2学期以降は難易度が上がるので、保護者が指導力を発揮するのは難しくなるのです。ですから、保護者にとっての天王山は5年生の夏休みといえます。お子さまとのやりとりを楽しみ、心と体の器がぐんと成長するのを見守ってください。




プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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