子どもの自立 中高時代の過ごさせ方(3)[中学受験]

先日、ある座談会で私立の女子中高の校長先生方とお話する機会があった。そのときの会話のなかで、「良い男女交際ができるようになる土台には、同性間での友情関係がある」という学説があることを聞いた。
その学説の当否もあるが、確かにそうした同性間での信頼関係を構築できる人物ならば異性間の信頼関係や愛情関係もうまくいくのかもしれない。

自立といってもこのような手順があって、まずは同年齢集団の中で経験を積んでいくことが中高時代の実は大きな意義だろうと思われる。
それはやはり共同生活の協働作業や行事のなかで培われるはずで、たとえば慶応の同年輩が言うには、日吉寮(慶応義塾大学寮「日吉寄宿舎」)の出身者には成功者が多いとのことだ。
また、筆者が卒業した早稲田の杜の北側には、あの村上春樹も一時を過ごしたという学生寮「和敬塾」があるが、ここなども多士済々の卒寮生がいることで知られている。

その意味でいかに同年齢集団の中で多くの行事や体験を多く積めるか、といった点は学校を見る視点として大切なのではないか。

実は、これは進学実績にも大いに影響している。
上は難関校から下は低偏差値校まで、どの学校もモチベーションというかモラール(やる気)というか、あるいは学術用語で進学アスピレーション(進学への強い願望)というか、ともかく人生への積極的な態度や意欲の醸成に苦労していて、今の生徒たちは少々背中を押さないことにはさまざまな体験にチャレンジしようとしないと言われて久しい。

かつては友情関係やそのなかでのさまざまな体験は、生徒の自主性に任せていた灘や東大寺学園など西日本の難関校も、今は「学校行事で感動を味わわなければいけない」などと真顔で言い出しているのはそうした生徒側の変化がある。昔ならそんなことは一切言わなかった。

実際に西大和学園では、たとえば校庭にしつらえた能舞台などで観劇会などをやると、やはりその素晴らしさに感化されて文化祭や古典の取り組みにまったく違った意欲を見せるという。
つまり学校も相当手をかけるようになってきているのだ。

ただ、親として考えておきたいのは、中高時代の経験のなかでも、小さな失敗や挫折をどこかで経験させて強くしておくことが自立のためにはとても重要だ、ということである。

学習院中等科の名物校長と呼ばれた従野明宏・元中等科長の十八番のセリフが、冬の雪の重さを春になるとピンと跳ね返して力強く成長していく若葉のたとえ話だったが、たまには*「艱難(かんなん)汝を玉にす」というなつかしい言葉を想い出してみたい。

*「艱難(かんなん)汝を玉にす」人間は苦労・困難を乗り越えることによって、立派な人物になる(大辞泉)


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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