読書をするよう言われているが、ただ読むだけでは不十分なのではないか?[中学受験合格言コラム]

読書をするよう言われているが、ただ読むだけでは不十分なのではないか?

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


※小泉さんへのご質問は、不定期にBenesse教育情報サイトメンバー向けのメールマガジン「教育情報サイト通信」で募集をいたします(随時の受付は行っておりません)。


質問者

小5男子(性格:神経質・理論的なタイプ)のお母さま


質問

物語文で人物の心情をとらえるのが苦手です。塾の先生からは読書をするよう言われていますが、ただ読むだけでは不十分なのではないかという気がしています。何かよい対策はないでしょうか。


小泉先生のアドバイス

読書とは別に、問題演習によってテストの点数を上げる。

「ただ読むだけでは不十分なのではないか」ということですが、本を読む時と問題文を読む時は何がどう違うのかをまず考えてみましょう。問題文は本のある部分を抜き出したものですから、文章の長さが違います。当然、本に書いてあることの多くが問題文には書いてありません。また、問題文は短いながらも、“クライマックス(盛り上がるところ)”が含まれていて、かつそのクライマックスが、問題文の最初からいきなり登場することが多いようです。盛り上がるところは登場人物の感情も豊かになり、気持ちの変化も頻繁で、問題が作りやすいということもあるでしょう。そしてなんといっても大きな違いは、問題文の場合はあとに問いが控えているということでしょうか。

さて、これだけの違いがあると、当然、読み方にも違いが出てきます。長さの違いもあり、読み方の精度が違ってくるのです。読書の時には、どうしても先の展開が気になります。「次はどうなるのか?」を想像しながら、わくわくしながら読むために1字1字をしっかり追うことがもどかしくなることもあると思います。子ども向けの物語でも、緻密(ちみつ)な計算をして、いろいろな伏線を張り巡らして書かれているものもあります。しかし、展開を中心に読む読者は、それらに気付かず読み飛ばしてしまう場合も少なくありません。それでも最後まで読んで、「ああ、おもしろかった!」と堪能できますからまったく問題ないのです。

けれども、問題文を読む時は違います。まず、1回読んで設定や展開を理解します。そして、問いに答える段階でもう一度関連した箇所を、今度はじっくり読み直します。文脈や心情表現に注意しながら、精読することになります。文章を2回読んで、しかも精読を行うということが、本を読む時と問題文を解く時の大きな違いでしょう。このような違いからしても、読書だけではテストの成績を上げられない場合があることが理解できると思います。

もちろん、読書だけで国語のテストの成績がいいお子さんもいます。そのような皆さんは、心情が細やかになる重要な場面などでは、文脈をしっかり追うなどの精読ができているのでしょう。ですから、読書をずいぶんしているのにテストの成績が芳しくないのであれば、精読ができていないと考えるべきだと思います。そして、そのようなお子さんは、対策として読書とは別に問題演習をされるとよいと思います。なぜなら、国語のテスト勉強のための読書を強要すると、精読を無理にさせることになり、読書がつまらなくなるからです。それでは、文章を読むこと自体に嫌気がさしかねません。そうではなくて、読書と問題演習を行うのとでは、その目的や方法を変えていくべきでしょう。

読書は語彙(ごい)を増やし、文字を読むことに慣れ、文章を読むスピードを上げることなどを目的にし、テストの点数は、さらに問題演習を行って上げていくと考えたほうがよいと思います。



プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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